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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
17 なぎ倒せ、エミー!花と夜明けと死神編!
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399 (花屋)『夜明けの日』前日の追憶2

 ミハビュシラの丘、と呼ばれる小高い丘が、アーシュゴー国王都の郊外に存在している。

 王城を含めた王都の全ての街並みを一望できる、見晴らしの良い丘だ。

 このミハビュシラの丘は、その眺望のすばらしさから、かつては王都の民の憩いの場として愛されていた。


 ......ただし、かつては、の話である。

 今ではすっかり草が生い茂り、辛うじて獣道が残るのみ。




 だが、しかし。

 この日、この丘の上に広がる草原では、二人の男女が落ち合っていた。


 女は、長い赤茶色の髪を後ろで縛った、地味な装いの美女だ。

 彼女は“花屋”と呼ばれる情報屋であり、現在の王、暴君ナイデロに抵抗する地下組織の一員だ。


 一方その相方は、細身だが鍛え抜かれた肉体を持つ、傷だらけの男だ。

 この男の呼び名は、“死神”......花屋たちに雇われた暗殺者である。


 彼は暗殺者というその職業にふさわしく、あまりにも剣呑な雰囲気を常時まとっており、さらにはこの世界では忌み嫌われる黒髪黒目である。

 故に、雇用主である地下組織の構成員ですら、多くの者は死神を恐れ、接触したがらない。

 しかし何故だか花屋だけは死神とも普通に会話できたので、彼との情報のやりとりは専ら花屋の仕事になっていたのだ。




「ねえ」


 さて。

 草原にたたずむ石柱のそばに腰をおろした花屋は、立ちあがり王城を睨みつけている死神に向けて、声をかけた。

 もう既に、メッセージは伝え終えている。

 『“夜明けの日”の始まりを決めるのは、死神である』と。

 だからこれは、私的な会話だ。


「この仕事が、終わったらさ......私たち、もう一度ここで、落ち合わないかい?」


「............」


 死神は、返事をしない。

 振り返りすらしない。

 ただじっと、じっと......王城を睨みつけている。


「ほら......そのさ、最後の打ち合わせとか、必要だろう?だから......」


「既にオレは、前金で十分な額の金を、受け取っている」


 もごもごと言葉を選びながら話す花屋に対して、死神はぴしゃりと言い放った。


「だから、仕事が終われば、オレはもう行く。お前と会うこともない」


「はあ?ははは、あのなあ......」


 つっけんどんな態度をとる死神に対して、花屋はへらへらと笑いながら、それでも食い下がった。


「そうは言っても、色々あるだろう?打ち上げとか」


「必要ない」




「「............」」




 会話が続かない。

 花屋は密かにため息をついたが、それは秋の風の音にかき消された。

 しばらく、沈黙が続く。




「......オレなんぞと、必要以上に、関わるな」


 そしてその沈黙を破ったのは、意外なことに死神であった。


「黒髪黒目と、なれあうな。これは、不幸の色だ」


 冷たく、彼はそう言いきった。




「違うッ!」


 花屋は、思わず叫んだ。

 さすがに驚いたのか、死神はちらりと花屋に目をやった。


「それは......それは、不幸の色なんかじゃない......英雄の色だッ!!」


「何を言って......」


「これからッ!私がッ!そういうことにしてやるってッ!言っているんだッ!」


 ここで、自分が絶叫していることに気づいたのか、花屋は頬を赤く染めてうつむいた。

 しかし、すぐに顔をあげて死神をまっすぐにみつめながら。


「私が、あんたの......居場所を作ってやるって......言ってんだよ......」


 そう、言葉を絞り出した。




「............」


 死神は、無言だった。

 相変わらず冷たい、恐ろしい目つきだった。


 しかし、彼はゆっくりと花屋に近づくと。

 彼女の頭を強い力で、わしゃわしゃとなでた。


「............!?」


 そんなことをされたのは、初めてだった。

 花屋は顔をさらに赤くしながら、突然のことに気が動転し、なされるがままになっていた。

 死神の力は強いし、恥ずかしいしで、上から押さえつけられた自分の頭を、あげることができなかった。

 故に、その時死神がどんな顔をしていたのか。

 彼女に確かめる術は、なかった。


 だけど。




「......ありがとう、嬉しい」




 ぽつりとつぶやかれたその言葉は、それまでに聞いた彼の声の中で、一番温かみにあふれていたことは、確かだった。


 そして。




「だが......だからこそ」




 そして、次の彼の言葉は。




「忘れてくれ......オレのことなど」




 それまでに聞いた彼の声の中で、一番悲しみにあふれていたことも、確かだった。




「わ......忘れる、もんかッ!」


 気を取り直して顔をあげ、そう叫んだ時......既に死神は花屋に背を向け、丘をくだり始めていた。


「絶対に......ぜ、絶対に、忘れないから......!」


 視界がにじむ。

 花屋の瞳から涙があふれる。


「だから、あなたも......私のこと......!」


 その思いは次第に嗚咽にまみれ、最後には言葉の体を、なさなくなった。




 死神がその気配を消し、森の中へと姿を隠したのを見送ってから。

 花屋はその場でうずくまり、泣きじゃくった。


 そして、手を組んで、必死に。


 これから戦いにおもむく死神の......無事を、祈った。

 以上をもちまして第17章及び第1部を終了いたします。

 皆様、お疲れさまでした。

 本当は後1話あった方がきりが良かったので、多分後で閑話が追加されると思いますが、それはオマケです。

 メインのお話としては、これでおしまいです。


 長さだけは一丁前な素人小説である本作を見つけ出し、さらにはここまで読み進めていただきまして、本当にありがとうございました。

 ここまで私が本作を書き進めることができたのも、ひとえに皆様の応援があったからです。

 なんか月並みな言葉ですが、これが、マジでマジなんだな。

 本当に本当に本当に本当に、本当にありがとうございます。

 これからも、『オマケの転生者』は続いていきますので、おつきあいいただければ幸いです。

 よろしくお願いします!


 さて次章ですが、第2部が始まる......その前に、何と言うんでしょうか、間章的な第18章を投稿します。

 エミーが新たな冒険の舞台へと移動する......その前に行われると小さな冒険と、色々な方々のちょっとしたお話が描かれる予定です。

 楽しんでもらえると、嬉しいな!


 それでは、またね!

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― 新着の感想 ―
私も、本当にありがとうございます、むらべ先生! こんなに素晴らしい物語を読ませていただき、ありがとうございます! 第二部、第三部、今後の続編も、とても楽しみにしています!
おそらく神が齎したであろう黒髪黒目への嫌悪感情を、好きな男の側に居たい一心のみでここまで覆して見せたおばあちゃんに脱帽。 愛ですな。
[良い点] カマッセ「神(むらべむらさき先生)よ!そろそろ、エミーのライバル(自称)を再登場させるタイミングじゃないだろうか!?」
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