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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
17 なぎ倒せ、エミー!花と夜明けと死神編!
398/745

398 (呪い子)その花の名前は

「む......?」


 ぱちりと、まぶたを開く。

 意識を覚醒させる。

 すると視界に飛びこんでくるのは、薄水色の秋の空。

 肌をなでるは、涼し気な風。

 あと、その風に吹かれて揺れる、その辺の草。


<......あ、おはようございます、エミー。目が覚めましたか?>


「おはよう......?」


 挨拶をしてくれたオマケ様に、ぼんやりした頭のまま挨拶を返す。

 上半身を起こす。


 えっと......あれ?

 なんで私、寝ていたの?


 ちらり、ちらりと周りを見回すと、地面に転がるは真っ赤な刀身。

 そうだ、私は。

 これを拾って......。


<ちょうどそれを拾った時に、倒れたんですよ。疲労がたまり、肉体が限界だったのでしょう。無茶のしすぎですよ、まったく......>


 オマケ様がぶちぶちと、お小言を言う

 あ、あはは......いつも無茶して、ごめんなさい。


<............エミー、どうでしょう、具合は悪くありませんか?>


 そう言われて、私はぴょんと、立ちあがる。

 肩を回し、腰を回し、足もぷらぷらさせてみる。

 うん、悪くない。

 単純に、疲れすぎて気絶したって、だけみたいだね。

 むしろ少し寝たからか、調子も良いかも。

 心なしか、空腹も若干和らいで......。




 ぐううううう......。




 ......は、いないですね。

 お腹減ってます。


「............」


 とりあえず私は、足元に転がっている赤い刀身を拾いあげて、それをばりばりと食べた。

 あと、その辺の草もむしゃむしゃ。

 そうやって、なんとか空腹を、少しでもごまかす努力をしてから。


 とりあえず私は、ついに目的を果たすことにした。


 つまりは。


 草原の中心にそびえたつ、石柱のもとへと歩み始めた。




◇ ◇ ◇




 風が吹く。

 秋になり、茶色く乾き始めた草が揺れる。

 そんな中で。


 私は石柱の横に、並び立った。


「............」


 そこからならば、王都の大体全てを見渡せる。

 王城も、灰色の美しい街並みも。

 ......美しいってか、色々あったせいで、街並みはちょっと崩れちゃってるけど。

 とにかく、素晴らしい眺望だ。


「............」


 私はごそごそと、カバンをまさぐった。

 その中から出てきたのは、青い花。

 ばあちゃんに置いてくるように頼まれた、青い花だ。

 私が暴れまわったせいで、その......大分くたびれてはいるけど。

 辛うじて、原型は留めている。


 口に放りこみたい衝動をぐっとこらえながら、私はその花を石柱の横に置いた。

 これで、ばあちゃんからのお願い事は完了だ。


 ほっと一息ついて。

 私はその場に、どさりと腰をおろした。


 ......そうなると、草の背が高くて邪魔なので。

 【魔力斬糸】で一薙ぎし、草刈り。

 見晴らしを良くしてから。


 ぼーっと。


 私は王都の街並みを、眺めていた。

 ばあちゃんが好きだった町の、風景を。

 もうこれで、見納めだしね。




 ......だけど。

 そんな穏やかな時間も、長くは続けられない。

 何故なら。




 ぐううううう......。




 相変わらず、お腹が空いて、いるからだ。

 私は、これから。

 また、いっぱいいっぱい、食べなきゃいけない。


 殺して、殺して、目につくもの全部殺して。

 それを延々と、腹の中に詰めこむ。

 そんな毎日が、また始まるのだ。


 当然、もう人里には近寄れない。

 多分もう、今の私には、人間はただのお肉にしか見えないと思う。

 そんなバケモノが人間の世界に、入りこんだら。

 悲劇しか、生まれないから。


 だから......本当はばあちゃんのご遺体も、弔ってあげたいんだけど、それは、できない。

 もう、私があのお店に、帰ることはできない。

 多分、ばあちゃんのこと、私。

 食べちゃう。


 それは、嫌だから。


 ......うん、きっと、大丈夫。

 ばあちゃんのお店、花屋としてのお客さんは少なかったけど。

 なんだかんだで、人は良く来ていたから。


 きっとすぐに、ばあちゃんのことも、見つけてもらえるだろう。


 うん。


 ......ばあちゃん、ごめんなさい。




「ふう......」


 私は息を一つ吐いて、静かに立ちあがった。


 さて、どこかに、行こう。

 人のいない、どこかに、行かなくちゃ。




「............」


 だけど、その前に。

 ふと、考える。


 石柱の横に置いた、青い花を見つめる。


 それにしても、この花。

 ばあちゃんが置いてくるように言った、この青い花は。


 結局、一体、なんて花なんだろう?




<あ、そう言えば、伝えていませんでしたね>


 そんな私の疑問にオマケ様が、のんびりとした声で、答えてくれた。


<これはですね、前もお伝えした通りカタログ植物でして......>


 ああ、そんなこと、言ってたね。

 名前も花言葉も、私の前世のそれと、同じなんだっけ?


<そうです。咲く時期については、あの花畑は季節感がでたらめでしたので、気にしないことにして、ええと、こほん......とにかく、この花の、名前はですね>


 オマケ様はあれこれ言った後、いつものように優しい声で、静かに私に教えてくれた。




<ワスレナグサ......勿忘草、と言います>

 長らく続きました第17章ですが、次話で最後です。

 何故なら......話数的に、きりが良いからだな!

 本当は、もう少し閑話があったんだけど、後に回します。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  あれだけ裏のありそうな前話からのほほんとしたポーカーフェイスに凄みを感じるオマケさまと魔剣すらルマンド感覚でサクサクモグる腹ペコエミーさん(^皿^;)安定のふたりぼっちに読者もニヤリ♪ …
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