390 堕とせ古代の空中要塞!13
ボッ......ゴオオオオオオーーーンッ!!!
王都上空に浮かびあがった空中要塞『ソウルコンクラー』の、突然の大爆発。
それを郊外、あるいは避難所として開放されていた王城庭園にて。
王都の人々は固唾をのんで、見守っていた。
ボンッ!
ボオンッ!!
ボ、ゴゴッ、ボゴオンッ!!!
その後も断続的に機体各所で爆発を起こし、黒い煙をあげ始めた、この古代の遺物の様子を見て。
「やった......?」
「こ、壊れたのか?」
「オレたち、助かったんだ!!」
人々から徐々に、歓声があがり始めた!
「おい、だけどちょっと待て!」
しかし、人々にとって。
特に、王城庭園へと避難していた王都民にとっての不幸は。
まだ、完全に過ぎ去ってはいなかった。
「空に浮かんでいる、あれ......こっちに向かって、堕ちて来てないか!?」
......そう。
空中要塞『ソウルコンクラー』の動力源は破壊され、その制御も不能になった。
それは、即ち。
あの巨大な質量持つ、鋼鉄と土くれの塊が。
地上に落下してくるということ。
「きゃあああああーーーッ!?」
「た、助けッ......」
「落ち着いてッ!皆さん、落ち着いてくださーーーいッ!!」
しかもその落下先は。
あまりにも不運なことに、その軌道を読むに、明らかにこの、避難所となっている王城庭園である!
冷静になるように必死になって呼びかける兵士たちの奮闘むなしく、避難所にはパニックが広がっていく......!
だが、しかし!!
「あッ!?」
複数人が、それに気づいた。
そしてぱらぱらと、空中要塞に向かって指をさして。
叫んだ!
「止まってる!!」
その言葉の通り。
まっすぐ王城庭園に向かって、黒い煙をあげながら墜落を続けていた空中要塞『ソウルコンクラー』の動きが、突然止まったのだ。
そして、全くの逆方向。
王都東の......もともとこの空中要塞が埋まっていた場所、つまりミハビュシラの丘跡地に向かって。
動き始めたのだ!
よく見れば。
空中要塞から地上へと垂れる、魔導ケーブルのうちの一本が。
ぴん、と。
凧に繋がる糸のように、ぴんと伸びている。
何者かがそれを掴んで、東に向かって!
引っ張っているのだ!
その、魔導ケーブルの様子など、王城庭園の避難民たちは、誰一人として気づかなかった。
ましてや、それを誰かが引っ張っているなどという、割と荒唐無稽な現実を理解している人など、誰もいなかった。
しかし。
「死神だ......!」
それを初めに口にしたのは、誰であったか。
酒場で働く女性店員であったか。
口髭を生やした商人であったか。
それとも、ガラの悪い冒険者であったか。
わからない。
わからないが、それはおそらく、ほとんど同時に、そして全員から、発せられた言葉であったのだろう。
「きっとあのお嬢ちゃんが!止めてくれたんだ!」
そして、そこかしこで、口々に。
そんな声が、聞こえ始めた!
この日。
エミー・ルーンという少女の、英雄の如き戦いぶりを目の当たりにした、王都民は多い。
彼女に助けられた人々は、非常にたくさんいるのだ。
また、その事実は。
口から口へと、直接その戦いを見ていない者にも伝えられ......。
多くの人々が、知るところとなっていた。
だから、根拠などなくとも。
彼ら、彼女らは、確信したのだ。
あれを、やってくれているのは。
あんなことを、できるのは!
新たなる英雄!
新たなる、死神!
あの、黒髪黒目の、少女なのだと!
「頑張れ......」
「ありがとう!」
「頑張って、死神ちゃん!」
「うおおーーーッ!」
「いけ......いけぇーーーッ!」
「頑張れ、お嬢ちゃん!」
東へ、東へと引っ張られていく、黒煙噴きあげる空中要塞を見あげながら!
王都の人々は皆、英雄の奮闘を......そしてその無事を、祈った!
◇ ◇ ◇
「らあああああーーーーーーッ!!!」
そして、彼らの確信は、正しかった!
まるで担ぐように太い魔導ケーブルを掴み、空中要塞『ソウルコンクラー』を引っ張りながら大通りを駆け抜けているのは、確かに黒髪黒目の少女、エミーであった!
「あああ、ぐうううううーーーッ!!!」
歯を食いしばり、冷や汗を流しながら、エミー・ルーンは走る!
何せ、彼女が引っ張っているのは、まだ多少は浮力が残っているとはいえ、巨大な空中要塞だ。
あまりにも、重い。
傍目から見れば、その様は子どもの凧揚げにも見えなくはないが、これはそんなかわいらしいものではない。
命を燃やして行う、綱引きだ!
ぐぐぐ、ぐぎゅぎゅ、ぎゅるるるるるるッ!!
エミーの腹が鳴る。
彼女はもう、先ほどからずっと、限界ぎりぎりの状態で活動している。
少しでも気を抜けば、そのまま意識を失いかねない。
そんな、危険な状態だ。
しかし不思議と、何故だか力が、湧いてくるのだ。
何がその力を、生み出しているのか?
それは、人々の想い。
エミーへの感謝の心、無事を願う祈りの心。
誰かのことを、想う。
応援する。
感謝する。
それは、この世界においては。
確かに、相手に届く。
ごくごく、微々たる量ではあるが。
......魔力として。
故に神々は、人々から信仰を集めようとするわけだが、それはさておき。
今、この時。
王都の人々の心は。
英雄を応援する気持ちは。
確かにエミーの足を、前へと進ませる原動力と、なっていたのだ!
「ら、あ、あ......!!!」
そして、ついに!
彼女は、ミハシュビラの丘跡地にぽっかりと口を開けた、大穴にまでたどり着き!
「あああああああーーーーーーッ!!!」
背負い投げの要領で魔導ケーブルを振り回し、『ソウルコンクラー』を大穴に向けて、叩きつけた!!
ズドオオオオオーーーンッ!!!
そんな轟音が響きわたると、同時に。
早朝のアーシュゴー国王都は、大きな影に包まれた。
何故なら、王都東側に。
概ね、これまで通りの位置に。
ミハビュシラの丘が、戻ってきたからだ。
そしてその、ミハビュシラの丘の後ろから。
白く輝く暖かな太陽が、再び顔をのぞかせる。
本日、二度目の夜明けである。
今、この時。
ようやく真に、長かった夜が終わり。
『夜明けの日』が、始まったのだ。
以上をもちまして、第17章第4ステージを終了いたします。
1話分閑話を挟んでから、エピローグを開始いたします。
これまでのステージに比べたら、短めに終わるのではないかなと思います。
それにしても、この第4ステージ。
『朝日が昇るのと同時に、終わらせたい!』という作者の想いがあったのですが、気づけば『ソウルコンクラー』との戦闘中に、日の出が始まってしまいました。
どうしようかなと思っていたら、エミーちゃんがかなりの力技で、二度目の日の出を作り出してくれました。
さすがは主人公!
頼りになるなぁ!
さてさて。
第1部が終わるまで、あとちょっとです。
引き続き、おつきあいいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願い申しあげます!




