389 堕とせ古代の空中要塞!12
ボッ......ゴオオオオオオーーーンッ!!!
エミーの投げ放った神珠は空中要塞『ソウルコンクラー』の動力源を貫き、それを一撃で破壊した。
その結果、この空中要塞の稼働を支える膨大な魔力エネルギーが、暴走。
大爆発が引き起こされた!
「ぬ、ぐおおッ!?」
<イ、ヒヒーーーッ!?>
その衝撃は、もちろんこの空中要塞の制御室も、激しく揺らす!
ボンッ!
ボオンッ!!
ボ、ゴゴッ、ボゴオンッ!!!
そしてその後も断続的に、機体の各所で誘爆が発生!
ぐらぐらと揺れ続ける制御室内。
メグザムは玉座にしがみつき、必死で揺れに抗う。
もはや、立ってはいられない!
ヴィーム、ヴィーム、ヴィーム!!
制御室内を照らす魔灯が赤く変色し、危機的な警戒音が鳴り響く!
<ヒ、ヒイイーーーッ!?動力源が、完全に破壊されたぁッ!?止まらねぇ、エネルギー暴走が、止まらねえええええーーーッ!!>
エンジィの悲鳴と同時に、ディスプレイ上に表示される、『ソウルコンクラー』の全体図!
そこに表示された、この機体の稼働を支える主要機関の名前が、次々と灰色に変色していく!
ついには、ディスプレイ自体にもノイズが走り、プツンと映像が消え去り......。
ボゴオオオオンッ!!
次の瞬間に制御室内で発生した爆発によって、粉々に砕け散った!
「があああああーーーッ!?」
飛び散るディスプレイの破片!
魂を食らい肉体が強化されているメグザムも、その破片を浴びては無傷ではいられない。
彼はとっさに腕を顔の前に構え、致命的な頭部の損傷を防いだが、もはやその体はぼろぼろだ。
破片が突き刺さり、腕からは痛々しく血が流れている......!
「おいいいいいーーーッ!!エンジィィィーーーッ!!テメエッ、どうすんだッ、これええええーーーッ!?」
ボオンッ!!
ボゴオンッ!!
制御室内でも、何度も発生する爆発!
バチバチとはじける、火花!
そんな騒音にも負けじと、メグザムは声を張りあげる。
<どうするも、こうするも......くそおおおおーーーッ!!こうなりゃ、イヒヒッ!最後の手段よおおおおおーーーッ!!イヒヒヒヒーーーッ!!>
そのメグザムの声を受けて、エンジィはやけくそ気味に笑いながら、そう叫んだ。
すると、ふっと。
『ソウルコンクラー』全体に散らばっていたエンジィの気配が......メグザムの目の前、針刺し状の構造物に突き刺さっている、魔剣『ソウルデバウラー』へと、集約された。
つまり彼は、空中要塞への憑依をとりやめ、元の依り代である魔剣へと、戻ってきたのだ。
「最後の手段だと!?何をする気だ!?」
<イヒヒッ!簡単なことだあああああ......!>
すると次の瞬間......『ソウルデバウラー』の刺さった針刺しがガコンと音を立てて動き出し、天井に開いた穴に向けて、徐々にせりあがり始め!
この、自ら“世界の災厄”を名乗る、大悪霊は!
<オレ様は、逃げさせてもらうぜえええええーーーッ!!>
恥も外聞もなく、そう言い放った!!
「は......はあああああーーーーーーッ!?」
<オレ様はッ!オレ様の、頭脳はッ!こんなところで失われて良いもんじゃ、ねぇんだよおおッ!!イヒヒ、オレ様は魔剣だからなぁ!高いところから落ちても、多分無事だぁ!爆発に巻きこまれて土に埋もれなければ、また......またオレ様は、やりなおせるぅッ!!>
「ま、待て待て待てッ!それなら、オレはッ!?オレはどうなるッ!?」
呆然とした顔でせりあがる針刺しに這いよったメグザム。
その、“相棒”を。
エンジィは。
<知るかぁッ!!バアアアアアーーーーーーッカァ!!>
......冷たく、突き放した!
<いくら強化されてても、テメエは生身の人間だッ!もう、どうしようもねぇッ!爆発に巻きこまれて死ぬか、地上に落下して潰れて死ぬか、好きな方を選べぇッ!!イヒヒヒヒーーーッ!!>
徐々に上昇していく針刺しの上で、メグザムを嘲り笑う、エンジィ!
<そもそもテメエ、すぐに怒鳴るし見た目も汚ぇし、そろそろ寛大なオレ様もうんざりしてきていたところなんだぁ!ようやく別れられると思うと、せいせいすらぁッ!!>
「なんだと......なんだとッ、テメエエエエーーーッ!!」
<イヒヒッ!次はオレ様も使い手は選んで、猫ちゃんかぶってよおおッ!しばらくは美少女剣士の愛剣ポジションにでも収まって、のんびりと現代世界を楽しませてもらうぜぇッ!>
もちろん、それでは、エンジィの『超越者を目指す』という目標は、遠のく。
しかし、それも致し方なし。
『ソウルコンクラー』を失ってしまう以上、彼の計画はご破算だ。
また、新たな計画の練り直しなのだ。
しかし、焦る必要はない。
何せ、エンジィ・アルビットは大悪霊。
寿命とかいうくだらない縛りから、解き放たれた存在。
時間はいくらでも、あるのだ。
故に、エンジィは、この期に及んで。
もちろん、悔しさは、あるのだが。
危機感が、足りていなかった。
だから。
追い詰められた、目の前の大男が。
どのような、行動を、起こすのか。
それについて、全く。
全くもって、考えが及んでいなかった。
「ふざけんな、テメエエエエーーーッ!!!」
メグザムは、激昂した。
そして、『ソウルコンクラー』と己の思考をつなぐ、もはやただのお飾りとなり果てた帽子を脱ぎ、地面に叩きつけてから。
猛烈な勢いで、天井へとせりあがっていく針刺しへと駆け寄り、強化された跳躍力で、跳びつき。
......魔剣『ソウルデバウラー』の柄を、握りしめた!
「うおおおおおーーーッ!!!」
<あッ!?おい、バカッ!?やめろッ、離せえええええーーーッ!!>
そして『ソウルデバウラー』を針刺しから引き抜こうと、その怪力を全力で発揮する!
上下左右、無茶な方向に、無理やり『ソウルデバウラー』を揺する!
<やめろおおおーーーッ!!もうテメエは、お呼びじゃねぇんだよぉッ!!もう、オレ様は、テメエのことなんざ、選んでねぇッ!!離せッ!!離せええーーーッ!!>
抜かれては、たまらない!
『ソウルデバウラー』は魔力を使って必死に針刺しにしがみつき、抵抗する!
ガチャガチャガチャッ!
しかしお構いなしに、乱暴に『ソウルデバウラー』を揺するメグザム!
『ソウルデバウラー』の力で魂を食らい、強化されたその全力でもって、だ!
つまり、その結果として『ソウルデバウラー』には、エンジィが想定していた以上の負荷がかかり!
そして!
ミシッ。
<あッ>
嫌な音が鳴った。
その、次の瞬間。
ボキッ!
存外軽い音を鳴らしながら。
......『ソウルデバウラー』は、折れた。
<イヒギヤアアアアアアアーーーーーーッ!?>
そんな、断末魔の叫び声を最後に。
エンジィの声は、ぱったりと聞こえなくなった。
メグザムは折れた『ソウルデバウラー』の柄の部分を握りしめながら、上昇する針刺しから落下。
制御室内の床に、尻もちをついた。
針刺しに刺さったままの、折れた『ソウルデバウラー』の残りの刀身は、もはやうんともすんとも言わぬまませりあがり続け、天井の穴の中に消え、見えなくなった。
「くそ......くっそ!!」
メグザムは、尻をさすりながら立ちあがる。
ボオン!!
ボン、ボオン!!
未だ、『ソウルコンクラー』の爆発は、続いている。
赤色の魔灯に照らされながら、制御室が震える。
「おいッ......おいいいいいーーーッ!!エンジィ、エンジィッ!!聞こえねぇのかあああああーーーッ!!」
メグザムは、その手に握りしめた『ソウルデバウラー』の柄に、怒鳴りつける。
返事はない。
「誰か......誰かッ!!助けてくれええええーーーッ!!」
そして血走った目で制御室内を見回しながら、助けを乞う。
返事はない。
「タッパアアアアーーーーーーッ!!」
返事はない。
「アンダアアアアーーーーーーッ!!」
返事はない。
「ちくしょう......ちくしょおおおおーーーーーーッ!!!」
最後にメグザムがそう叫んだ、その時。
彼の頭上の天井で、爆発が起こった。
メグザムは叫びながら、降り注ぐ瓦礫によって押し潰され。
死んだ。
【タッパとアンダー】
かつて、彼の手下であった男たちの、名前。




