388 堕とせ古代の空中要塞!11
「<イヒヒヒヒヒヒーーーッ!!>」
王都上空にて漂う空中要塞『ソウルコンクラー』、その制御室内にて。
「それじゃあよ、オレたちの輝かしき勝利!そして、永遠の成長が約束された、未来に......」
「<かんぱーーーいッ!!>」
......メグザムとエンジィは、酒盛りを始めていた。
もっとも、現在のエンジィには肉体がないので、制御室内の針刺しのような機構に刺しこまれている魔剣『ソウルデバウラー』に酒をかけてもらうことで、酒盛りの雰囲気を味わっている。
「......かーーーーーッ!!一仕事終えた後の酒ってぇのは、たまらなくしみるぜ!最ッ高だああーーーッ!!」
メグザムは盗品である最高級の酒を一気に喉の奥に流しこむと、手に持っていた空のグラスを放り投げてから、脱力して玉座にその身を委ねた。
視界の先、壁面の超大型ディスプレイに映し出されているのは、美しい朝日がアーシュゴー国王都を照らしている光景だ。
あの朝日は、祝福だ。
自分を照らすスポットライトだ。
これまでずっと、犯罪者として日陰を生きてきた、メグザム。
しかしこれからは、違う。
彼が世界の主役になるのだ。
そんなことを思いながら、少しだけ酔いがまわった頭でディスプレイ端に映し出されている二つの画面を眺める。
一つは、【吸魂結界】有効範囲の表示画面。
すでにこの結界は、アーシュゴー国王都を覆いつくしている。
今、この王都で死んだ人間は、すべからくメグザムとエンジィの贄である。
そしてもう一つの画面に映し出されているのは、上へと伸び続ける赤い棒。
即ち......【赤色魔導光線砲】発射準備の、進捗状況。
クールタイムが明けたこの超兵器、発射に向けた準備の進捗は、46%。
「どこに撃てば......良いかなぁ......」
エンジィは魂を食らう快楽を思い出し、にやにやといやらしく笑いながら、ぶるりとその身を震わせた。
しかし。
<ならよぉ!さっきのあのガキに、撃ちこもうぜぇッ!あいつ、バケモノじみて強いからなぁ!あれをたった一人殺すだけで、この都の人間を皆殺しにするよりも、遥かに力を蓄えることができるぜぇッ!!>
その、呑気なエンジィの発言を聞き。
メグザムの酔いは、一気に覚めた。
「おい、ちょっと待て」
メグザムは酒で赤くなった顔を青くしながら、鋭い口調でエンジィを詰問した。
「あのガキ......生きてんのか?」
<多分なぁ!【吸魂結界】は機能しているのに、あれの魂を吸えた感覚が、全くねぇ!なら、多分、生きてんだろうなぁ!イヒヒ!>
「『イヒヒ』じゃねぇッ!!笑ってる場合かッ!?」
メグザムは足をだんだんと踏み鳴らし、激昂した!
彼は、エミーを恐れている。
なんなら彼にとって、世界で一番恐ろしい存在が、エミー・ルーンだ。
それが、まだ生きているだと!?
再び襲いかかってきたら、どうしよう!?
酒盛りなんか、している場合じゃ、ねぇだろうがッ!?
<イヒヒ、相棒は心配性だなぁ!落ち着け、落ち着け!>
しかし一方でエンジィは余裕綽々である。
慌てふためくメグザムをからかうように笑いながら、説明を始めた。
<良いかぁ?まず、オレたちは今、すげぇ高度をあげている。魔導ケーブルによる魔力調達を、中断してまでなぁッ!さっきのガキは翼を出せるようだが、空を飛ぶのは不得手のようだったぁ!ならば、あれが今のオレ様たちのところまで、たどり着く手段はねぇッ!>
「............」
無言で髭をじゃりじゃりと触りながら、メグザムはエンジィの話を聞く。
大人しいその様に満足しながら、エンジィは言葉を続けた。
<そしてさっきも言った通り、『ソウルコンクラー』に備え付けられた砲弾の数は有限だぁ!ならば、無駄撃ちは避けてぇ。射程だって、短ぇしなぁ!なら、あれを確実に殺すために、使うべきは?>
「......【赤色なんちゃら】ってわけか」
<その通りいいーーーッ!!イヒヒ、超天才のオレ様が、あんな危ねぇバケモノ、無策で放っておくわけがねぇだろおおーーーッ!?ちゃああーーーんと、考えてるってぇのおおーーーッ!!」
「............ふううーーー......」
エンジィの話を聞いて、メグザムは長く長く、息を吐きだした。
そして再び、玉座にもたれかかる。
グラスは先ほど投げ捨てた時に割ってしまったので、瓶に直接口をつけ、酒をぐびぐびと飲んだ。
「......で?なら、あのガキは、今どこにいる?」
<イヒヒ、きっとどこかで、のびてるんだろうぜぇ!今のうちにロックオン、しちまうかぁ!?えっとなぁ......>
カチリ、カチリ、カチリ。
エンジィの操作で、ディスプレイの映像が切り替わる。
そのうちの一つ、王都の中心を走る大通りを捉えたカメラ。
それから送られた映像がディスプレイに表示された時......メグザムとエンジィは、お目当ての少女のことを、発見した。
ズーム、ズーム、ズーム。
何度も映像を、拡大してみると。
そこにいたのは、確かに黒髪黒目の呪い子、エミー・ルーン。
彼女は他に誰もいない大通りの上で仁王立ちして、じっと『ソウルコンクラー』を睨みつけていた。
「<............あれだけやられて、まだ立てんのかよ......>」
その事実に、メグザムとエンジィは恐怖を感じてドン引きしたが、先ほどエンジィが推測したとおり、あのバケモノはもはや、こちらを害する手立てはないはずだ。
気持ちを落ち着かせて......粛々と、【赤色魔導光線砲】の照準を、エミーにあわせる。
発射に向けた準備の進捗は、87%。
もうすぐ。
もうすぐだ。
もうすぐで、赤い光線が地上を焼き払い。
あのバケモノは、消滅する。
そのはずだ。
なのに、何故か流れる冷や汗を、メグザムは軽くぬぐい。
ごくりと唾を飲みこんだ。
......その時だった。
ディスプレイに映し出されたエミー・ルーンが。
何やら、動き出したのは。
両足を、肩幅よりも広いくらいに広げ。
白い何かを握った右手を、後ろに引き。
もう片方の左手を、まるで照準をあわせるかのように、『ソウルコンクラー』へと向けている。
それは、まごうことなき。
【投石】の......準備姿勢。
「ま......待てッ!!」
その姿を見て、嫌な予感がしたメグザムは思わず立ちあがり、ディスプレイに向けて手を伸ばし、叫んだ!
しかしその声、地上に届く、はずもなく。
エミーはおもむろに、軽く左足をあげた。
ゆっくりと、まるで力をためるかのように、ゆっくりとした動きであるが。
間違いなくあの少女は、『ソウルコンクラー』に向けて、【投石】を放とうとしており。
もはや、それが放たれるまで、あと数秒。
「待て待て待て......待て待て待て待てええええーーーーーーッ!!!」
たかが、【投石】!
メグザムはそう、笑い飛ばすことが、できなかった!
彼は必死の形相で、【赤色魔導光線砲】の発射ボタンを、連打、連打、連打!
ペペペポペポペポミュンッ!
しかしその結果無情にも響くのは、そんな気の抜けた、かわいらしい、操作失敗の効果音!
現在の、【赤色魔導光線砲】!
発射に向けた準備の進捗は、97%!!
「うわあ、あああ、あああああああーーーーーーッ!!!」
恐怖に怯えるメグザムが絶叫している、その最中!
地上のエミーは、その右手に握った、白い何かを。
......神珠を!
全力で......『ソウルコンクラー』動力源に向けて......。
【投石】した!!
ビュウンッ!!!
風よりも速く!
音すら、置き去りにして!
まっすぐ、まっすぐ、直進を続ける神珠は!
ついには、赤々と輝く、超巨大な光球!
即ち、『ソウルコンクラー』の、動力源へと、着弾し!
......容易くそれを、貫いた!!
その結果、生じたこととは、何か?
それは、空中要塞『ソウルコンクラー』の。
......大爆発である!!!
【投石】
第2章から登場。
幼少期のエミーが異世界で生き延びるため、最初期に習得した技術。




