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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
17 なぎ倒せ、エミー!花と夜明けと死神編!
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387 堕とせ古代の空中要塞!10

「らあああああーーーーーーッ!!!」


 絞る。

 振り絞る。

 必死に!


 慣れない【黒翼】、はためかせ。

 読めない風など、無視をして。

 鎧の背中の辺りに作ったノズルから強引に魔力を噴出させて、滑空する!


<......!!右にずれて、エミー!!>


 オマケ様の言葉に従って、体を傾ける。

 少しだけ、右へと揺れる。


 ド、ド、ドオン!!


 少し遅れて聞こえる砲撃音。

 ちょっと前に私のいた場所に撃ちこまれ、そのまま地上へと落ちていく砲弾。


 その砲弾のために、空気が動いて。

 進路がぶれる。


 ブシュッ!

 ブシュウッ!!


 振り絞る。

 振り絞る。

 魔力を、振り絞る!

 ジェット噴射で、無理やりに、軌道修正!


<今度は左です、エミー!!>


 ド、ドオン!!


 砲撃は、止まらない。

 またしても、間一髪避ける。


 ブシュウッ!!


 背中から、どす黒い魔力をまき散らす。




 ぐぎゅぎゅぎゅるるるるるるッ!!




 腹が鳴る。

 まるで、悲鳴だ。

 もう、限界なんだ。


 だけど。




 きっと、前を睨みつける。


 赤々と光り輝く、巨大な光球。

 この、わけのわからぬ鋼鉄クラゲの、動力源はすぐそこだ。

 もう少し飛べば、たどり着ける。


 まぶしい。

 まぶしい。

 赤い光がまぶしくて、鬱陶しい。


 もう、お日様も顔を出し始めた。

 太陽は、二つもいらないぞ。


 だから。




 ぐぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅッ!!




 ああ......。

 お腹が、空いた......。




 ブシュッ!!

 ブシュ、ブシュ......。

 プスン。




 もう、絞りきった。

 燃料ぎれ。

 これ以上、魔力は、出せない......。




<あ!!エミー、避け......>




 最後に聞こえたのは、そんなオマケ様の慌て声。


 ドオン!!


 そして、砲撃音。




 その後すぐに、背中に熱と衝撃を感じて。




 意識が、暗転した。




◇ ◇ ◇




 エミーは、もう限界だったのだ。

 【黒翼】による、滑空。

 その行動は大いにメグザムとエンジィを慌てさせたものの、悪あがきであったと言って良い。

 何しろ、彼女はこの【黒翼】、一度しか使ったことがない。

 ぶっつけ本番も良い所だ。

 しかも、魔力乏しい現状だ。


 彼女は。


 ついには『ソウルコンクラー』から放たれる砲撃に命中し、墜落した。

 その結末を、誰が責められようか。




 とにかく、呪い子は、地に墜ちた。


 邪悪は高笑いし、さらに高度を上げる。


 高く、高く、日の光に先んじて。


 傲慢に、頂へと昇る。




◇ ◇ ◇




「............ぐ」




 砲撃が、背中に直撃し。

 大空から、真っ逆さまに地上へと叩きつけられても。


 エミーは、生きていた。


 だけどもう、ぼろぼろだ。


 鎧を作り出す余力もない。




<エミー!エミー!大丈夫ですか!?>


 オマケ様の泣きそうな声を、ぼんやりと聞く。


 彼女の視界に広がるのは、三色に染まった、雲一つ無い朝の空。


 ベースは、まだ少し薄暗い、水色。

 その東の端には、太陽の白色。

 目障りなのが、未だ爛々と輝く、鋼鉄クラゲの赤色。




 ぐぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅ!!




「あ、ああ......」


 それにしても酷い、空腹感。

 エミーは、石畳に仰向けにめりこんでいた体を何とか起こし、周りを見回す。

 どうやらここは、大通り。

 だけど周囲に、人影は無い。

 無くて良かった。

 もし何かいたら、今のエミーはきっと。

 物理的にも、心理的にも、容易く。

 それを引きちぎって、腹に収めただろうから。




「ぐ......」


 とにかく。

 何でも良い。

 とにかく、何か食べなくてはいけない。


 エミーは辺りの石畳に指を突き刺し、抉り取り、それを口に運んだ。


 ぼり、ぼり、ぼり。


 食べる。

 食べる。

 何でも良い。

 食べる。


 削る。

 削る。

 世界を削る。


 世界を削って、命を繋ぐ。


 ぼり、ぼり、ぼり。


 ぼり、ぼり、ぼり......。




 四つん這いになり、一心不乱に石畳を貪る。

 東から顔をのぞかせる太陽が、そんな彼女の影を長く伸ばす。

 伸ばして、伸ばして、伸ばしたその先に。


 何か、黒くて大きな塊があった。


「あ、あう......あ......」


 それに気づいたエミーは、必死に這いずって、そこまで移動した。

 朝日に艶々と、その甲殻を艶めかせる、それは。

 腹を裂かれて死んだ、戦士の亡骸だ。




 ばき。




 常軌を逸した膂力を発揮し、石畳よりも固いその甲殻を、無理やり砕く。

 そして、口に含む。

 丸のみする。


「!!」


 すると腹の中で広がるのは、濃密な、凝縮された、魔力だ。

 優秀な。

 優秀な、戦士だったのだろう。


「あ......はぐ、はぐ......!!」


 エミーはデストロイブンブンの亡骸を、必死に、一心不乱に貪った。




◇ ◇ ◇




 その戦士の亡骸を、余すことなく取りこみ。

 ようやく、エミーは立ちあがった。

 未だ、空腹は治まらぬ。

 治まるはずがない。

 しかし、どうにか立ちあがり、思考する。

 それだけの、活力が生まれた。




「オマケ様......」


 エミーは、ぽつりとつぶやいた。


「私......負けちゃった......」


<エミー......>




 見上げるは、邪悪。

 空に浮かぶ鋼鉄クラゲ。

 もはや、大地に接続していた、その触手の如き魔導ケーブルは巻きとられ。

 たどり着く術は無い。




「負けた......」


 ぼんやりと、そのクラゲを見つめる。

 動力源の光球は、未だにぴかぴか赤い光。


 ぴかぴか、ぴかぴか。


 その健在を、エミーに見せつける。




 それを、見ていると。

 エミーの心の中に、沸々と。

 ......怒りやら悔しさやら、そういったものが、沸きあがってきた。




「............ちッ!!」


 一つ舌打ちをして、石畳を抉る。

 そうして作り出した礫を、今では豆のように小さくなった鋼鉄クラゲへと、苛立ちを乗せて投げつける。


 礫はまっすぐ、まっすぐに飛び。

 おそらく、鋼鉄クラゲの動力源へと命中した。

 しかし、何も変化無し。

 ただの石礫では、傷一つ付かない。


<と、届くんですね、あれ......>


 オマケ様はその事実に若干引きつつも、言葉を続けた。


<しかし、所詮はただの、石礫......あの空中要塞を傷つけるためには、硬さが足りません......>


「............」


 そんなオマケ様の言葉を聞きながら。

 エミーは鋼鉄クラゲを見上げつつ......悔しさのあまり歯ぎしりを鳴らした。




 しかし。




「......硬さ?」




 エミー、ふと気づく。




「なら、凄く硬いものをぶつければ......あれも、壊れる?」


<いや、それはそうかもしれませんが......ありませんよ、そんな硬いものなんて。おそらくあの空中要塞は、超古代魔導文明の遺物です。その装甲を傷つけられるほどの、投擲武器なんて......>


 オマケ様の言葉を聞き流しながら、エミーは辛うじてその形を留めていた自分のカバンをまさぐった。

 その中に入っているのは、青い花。




 しかし......それだけでは、ない。




 かつて海で、彼女の大きな舎弟、ザラトプと別れる時。

 彼からもらった、贈り物。

 それを、エミーは。

 肌身離さず、持っていたのだ。




<あ......!!>




 エミーがカバンから取り出したそれを見て、オマケ様は思わず声をあげた。


 東の空からまっすぐ差しこむ朝日。

 それを浴びて美しく輝く、その白き宝玉。

 エミーですら砕けない程硬い、拳大の球。


 その、名前を。




 ......“神珠”、という。

【神珠】

 第16章にて登場。

 かつてアーシュゴーという国をおかしくしてしまった、元凶である。

 しかし今は、ただの宝玉へと、成り下がっているが......。


 今、ここで、大切なことは。


 それが、もの凄く、硬いということだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  負けてなんかない!エミーさんが命を繋いでいる以上エミーさんに敗北なんてない!だから、だからこそ僕らがファンになったデストロイブンブンもクッソ硬い宝珠も全てはエミーさんの最後の勝利のために…
[良い点] まさかあの伏線がここに!という驚喜な感じがあります。 大変面白いと思います。 [一言] てっきり魔導ケーブルを食...接着して魔力を吸収するだと思いました。いやはや、参りました。
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