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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
17 なぎ倒せ、エミー!花と夜明けと死神編!
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342 蹴散らせ湧き出る魔王軍!4

 さて、ここでデオガンダイは、ちらりと周囲を見回した。

 デストロイブンブンは、行方不明。

 あれだけ連れて来た暗黒魔狼たちは、もはや使い物にならない。

 死んだか、満身創痍かのどちらかだ。

 数があわないので、数匹は逃げ出しているのかもしれない。


 自分は、どうか。

 実はまだ、ダメージらしきダメージは受けていない。

 しかし奥の手【ドラゴンサンダー】を、既に二発も使っている。

 魔力残量的に、満足な威力を発揮できるのは、あと一発が限度といったところか。


 対する目の前のバケモノ少女、エミー・ルーンはどうか。

 黒く煤にまみれ、肩で息をしている。

 それなりに、消耗はさせられたはずである。




「「............」」


 無言で睨みあう両者。

 その間エミーは右拳を使って、煤にまみれた頬をぐしぐしとこすった。


「ちっ......!」


 それを見てデオガンダイは、冷や汗を流しながら小さく舌打ちをした。

 何故ならエミーがぬぐった後の頬には、ただ白く美しい肌が、あるだけだったから。

 暗黒魔狼の牙や爪で攻撃され、確かに血を流していたはずなのに。


 ......そこには傷一つ、残っていなかったのだ。


(驚異的な自然治癒能力まで完備かよ。そのスペック、羨ましすぎて、泣けてくるな......)


 そう、エミーのケガの治りは、異常に早いのだ。

 一晩寝れば全身骨折すら治るのだから、切り傷程度ならあっという間に完治する。


 つまりは、今ここで睨みあい、時間を使えば使う程......エミーは回復し、手に負えなくなる。

 微かに見えた勝ち筋すらも、消えてなくなる。


 だから。


 しかけるならば。


 ......今!




「七、七、八、一、三ッ!!」


 デオガンダイは、絶叫した。

 これまでと同じ、暗黒魔狼への号令だ。


「七、七、八、一、三ッ!!」


 しかし、暗黒魔狼たちは動かない。

 いや、動けない。

 彼らにはもはや、戦う力は残っていないのだ。


「おいッ!貴様らッ!何を寝ころんどるかッ!?戦え、戦えーーーッ!!」


 その様子に焦りながら、デオガンダイは地団駄を踏む!

 それでも暗黒魔狼たちが動かないことを確認すると、彼は腰にさしていた、特に得意でもない剣を、すらりと抜き放った。


「ちくしょーーーッ!!かくなる上は、このオレ、魔王軍中級指揮官、魔操のデオガンダイ様が、直々にッ!貴様を斬り殺してくれようぞーーーッ!!うわああああーーーッ!!」


 そう、叫びながら。

 デオガンダイは......少し腰がひけた、情けない姿勢で......エミーに向かって、まっすぐに駆けだし始めた。


「............」


 エミーはそんなデオガンダイに冷たい視線を送りながら、【黒腕】右腕を、構える。

 近寄るデオガンダイのことを、殴り殺す構えだ。


 それを見て。


 デオガンダイは。


 手に持った剣を。




「おらぁッ!!!」




 全力で、エミーに向けて......投げつけた!


「!?」


 第5形態まで変身している現在のデオガンダイは、竜の膂力を持つ。

 その強大な力で投げつけられた剣の勢いたるや凄まじく、さすがのエミーもとっさに【黒腕】を剣の軌道上......己の眼前へと動かし、防御姿勢をとった。

 その結果、視界が塞がれる。


 デオガンダイはそれを......待っていた!


「せやッ!!」


 その瞬間、デオガンダイは横跳びして、一気にエミーの死角へと移動する。

 そして。


「『風よ、我を後押しせよ!【ウィンドブースト】!』」


 放つは、地味で習得者の少ない、追い風の魔法。

 そのうえで、腰がひけていた先ほどまでとは違う、本気の走りで。

 デオガンダイは、エミーに対して......突撃を開始した!




「うおおおおおーーーッ!!」


 走りながら、デオガンダイの両角が激しく発光し始める。

 雷の力がたまっていく。

 狙うは、超至近距離で放つ、【ドラゴンサンダー】だ!




 そう!

 動けない暗黒魔狼たちにあたり散らす、無様も!

 情けない、へっぴり腰での突撃も!

 全ては、エミーの油断を誘うための演技だ!


 多くの強者が、知らぬ間に身に着けてしまうもの。


 それが、慢心。


「慢心を、突くッ!!これが、弱者の、戦い方よぉーーーッ!!!」


 バチバチバチィッ!!


 両角から雷を迸らせながら、デオガンダイは走る!

 今や彼はエミーの【黒腕】の内へと、入りこんだ。

 ここまで来てしまえば、あの巨大な腕では対処はしにくかろう。


 後は、油断しきったこの小さな強者に。

 全力の雷撃を、お見舞いするのみ!


「おおおおおおーーーッ!!!」




 そう、思っていたのだ。


 デオガンダイは。


 思っていたのだけれど。


「慢心?」


 巨大な【黒腕】の拳の影で、エミーは。


「しないよ」


 死角から飛びこんだつもりのデオガンダイのことを、しっかりと見据えており。


「お前は、強いから」


 彼に向かって、そう言ってから、大きく口を開けた。




 ドッ!!


 次の瞬間、そんなエミーの口の奥から飛び出してきたのは、黒い触手だった。

 触手は凄まじい速度で伸び、デオガンダイの胸を強烈に叩く。


「ぐえッ......!?」


 自らの勢いもあって、その一打がデオガンダイに与えたダメージは、深刻なものだった。

 石畳の上を何度かバウンドしながら、第一広場の中心から端まで、転がっていくデオガンダイの体。

 最後は仰向けになり、その勢いを止めた。


 この、たった一撃で、彼もまた、満身創痍。

 骨が折れている。

 ひゅー、ひゅーと息をたてる。

 もはや動けない。

 角も折れている。

 雷撃は、放てない。


「ク......クカカ......」


 デオガンダイは何とか少しだけ、首を動かし。

 近づいてくるエミーへと、必死で目線を向けた。


「なあ、おい......本当か......?」


「............」


 そして、問いかけたのだ。


「オレは......本当に......強かったか......?」


 エミーはゆっくりと、力強く頷いた。


「......強かった!」


 そしてそう、答えたのだ!




「クカカ......クカカカカッ!!」


 体中、強烈な痛みに苛まれているだろうに。

 デオガンダイはその答えを聞いて。

 心底嬉しそうに、笑った。




「............」


 そんなデオガンダイを眺めながら。

 エミーは【黒腕】の両手を祈るように握りしめ、ハンマーのような形を作り出した。

 【黒大槌】である。


 デオガンダイは、魔族。

 オマケ様が言うには、人類と敵対することを、神に宿命づけられた存在である。

 ここで、殺しておくべきなのだ。


 エミーはゆっくり、ゆっくりと【黒大槌】を持ちあげて。

 デオガンダイに向けて、それを。

 振りおろそうとした。




 しかし、その時だった!




 ピカァッ!!




 デオガンダイの体が、突然紫色の光に、包みこまれたのは!




「!?」


 思わず反射的に、エミーは目をつぶった。

 そして再び、その瞳を開いた時には。


 目の前に転がっていた異形の魔族の姿は、跡形もなく、消え去っていた。




「............」


 その様を見て、エミーは。

 ゆっくりと、息を吐いた。


 そしてあたりを、見回す。


 この第一広場、もはやエミーのほかに、動く者はいない。

 まだ息のある暗黒魔狼はいるかもしれないが、もはや脅威にはならないだろう。

 静かなものだ。


 それを確認してからエミーは、【黒腕】を引っこめた。

 そして同時に、どす黒い鎧の一部を解除する。

 するとその中から現れたのは、小さなカバンだ。

 中に入っているのは、少しのお小遣いと、舎弟にもらった白い球、それと......青い、花束。


 花束は、無事だった。

 念入りに鎧で保護していたので、デオガンダイの雷撃も、この花束には届かなかった。


 その事実に、安堵して。


 エミーは再び、カバンを鎧の中にしまいこんでから。


 周囲の家々の窓から送られる、人々の視線など気にも留めずに。




 ミハビュシラの丘に向かって、大通りを歩き始めた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 自分の事を弱者だと思っていたのに強者(エミー)に強いと認められたデオガンダイ、今後がどうなっていくのか気になるw
[良い点]  デオさまアボーン回避!!(´⊙ω⊙`)ヤレヤレ系副官ロンジヌさん今回もナイスフォローありがとうございます♪ [気になる点]  もしかしてばあちゃんから託された青い小さな花を保護するのに黒…
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