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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
17 なぎ倒せ、エミー!花と夜明けと死神編!
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336 (呪い子)“花屋”最後の、“嫌がらせ”

 午後の、まだお日様が高いうちに倒れたヌムブリばあちゃん。

 ばあちゃんは、まだ目を覚まさない。

 もうそろそろ、日付が変わる。

 あと一時間もしないうちに、『夜明けの日』だ。


「............」


 私はこれまで、ただじっと、ばあちゃんのベッドの横に座って、その手を握りしめていた。


 もちろん、それ以外のことだって、していたよ。

 当然、医者だって呼んだ。

 ばあちゃんが倒れたすぐ後には、ばあちゃんの行きつけの病院の先生を担いで連れてきて、診察だってしてもらったんだ。

 ......先生は、首を横に振るばかりで......薬も何も、出してはくれなかったけど。


<エミー......>


 ためらいがちに、オマケ様が私に、声をかけ。


<残念ですが......ヌムブリは、もう......>


 そして、諦めの言葉を口にした。




 しかし......その時だった。




「む......げほっ、エミー......?」


「!?」


 ばあちゃんが咳きこみながら......うっすらとその目を、あけたのだ。


「ばあちゃん」


「げほ、ごほっ......おや、おや、もうすっかり、暗いねぇ......あたしとしたことが、寝過ごした。お店は」


「閉めといた」


「夕食は」


「もう食べたよ。ばあちゃんの分も、残してるよ」


「そうかい、そうかい......今、何時だい......?」


「11時過ぎ」


「そう......かい。ごほっ」


 ぜえぜえと、苦しそうに息を吐きながら。

 私とそんな、当たり障りのない話をしてから。

 ばあちゃんは、寂しそうに笑った。


「せめて、『夜明けの日』まで......と、思っていたが......げほっ、どうやら、持ちそうにないね......」




「何を言ってる」


 私はばあちゃんの額の汗をふきながら、なるべく平静を装って言った。

 私はもとより無表情。

 動揺を隠すのは得意だ。


「お医者さん言ってた。ばあちゃん、疲れてるだけ。たくさん寝て起きたら治る」


 得意なはず、なのに。


「ははは......エミー、あんた、嘘が下手だねぇ」


 ばあちゃんは、にやりと笑って私の頬に手を伸ばし。


「あたしとは、違う」


 そう言って、私の涙をぬぐった。




 かちかちいう、時計の音。

 ばあちゃんの、咳の音。

 私の、鼻をすする音。


 しばらく室内を満たしていた物は、概ねそれで、全てだった。




◇ ◇ ◇




「ねえ、エミー」


 涙が止まらず、肩を小さく震わせ続ける私の様子をちらりと見て、ばあちゃんは咳きこみながら、にやりと笑った。


「あたしはね、もうババアなんだ」


「............」


「十分に、長生きは、したのさ」


「............」


「笑って......送ってくんないかい?」


「............無理」


 私はぐしぐしと涙をぬぐってから、ぽつりと言った。


「私......生まれてこのかた、笑ったことなんて、無いもの」


「難儀な、子だねぇ......あんたも」


 げほ、げほと、再度咳をしてから。

 ばあちゃんは、大きく息を吐いて、苦笑しながらそう言った。


 そして再度、沈黙。


「「........................」」


 かちかちかちかち、時計の音。




 ばあちゃんからは、もうほとんど、魔力漏れが無い。

 それを視てとれる私には、わかってしまう。

 もう、本当に時間は、残されていないのだと。


「......ねえ」


 だから、私は。


「さっき、私、言ったよね。『恩返しする。何でも言って』って」


「............」


 ばあちゃんの手を握りながら、ばあちゃんの瞳を見つめながら、そう語りかけた。


「何か、無いの?やって欲しいこと」


「............」




 ばあちゃんは、その言葉を受けて。

 静かに瞳を閉じて、黙りこくってしまった。


 だけど、数分後。


 彼女は、はっきりと。


「......ある」


 そう、言ったのだ。


「!」


 突然、ばあちゃんが私の手を握り返す力が、強くなる。

 驚いて、ばあちゃんの表情を見ると。


 ばあちゃんは、またしてもにやりと、笑っていた。

 だけどその笑いは、これまでのような、寂しそうな笑いではなかった。


 いたずらっ子の、ような。


 そんな印象を受ける、笑顔だった。




「ねえ、エミー、お願いがある」


「何でも言って」


 頷いて、そう返答した私に、ばあちゃんは大きく息を吸ってから......次のように、言ったのだ。




「この、“花屋”最後の、“嫌がらせ”に......つきあって、もらいたい」




 その瞳は大きく見開かれ、爛々と輝いていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ばあちゃん…;;; エミーの涙をぬぐう所、こみ上げてくるものがありました…。 ばあちゃんの願い、なんだろう。
2022/07/24 17:53 退会済み
管理
[良い点]  こんなしんみりと泣ける文章も難なくこなすむらべ先生(・Д・)流石っす。 [気になる点]  死にゆくヌムブリばあちゃんが望む“嫌がらせ”とは?  しかしエミーさんもヌムブリばあちゃんもお…
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