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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
17 なぎ倒せ、エミー!花と夜明けと死神編!
329/720

329 (白縁)再会 11時24分

 ここはアーシュゴー国王都の裏通りの、奥の奥。

 地元の人間ですら、あまり入りこまないような......迷路のような薄暗い路地裏。


 そんな人気の無い細い道を、買いたてのパンをつめた大きな袋を抱えながら走る、若い女性がいた。

 真ん丸な目に、太い眉。

 そばかすのある頬。

 愛嬌のあるその顔立ちは、現在不安で歪められている。


「はっ、はっ、はっ......」


 小走りに進む彼女の、息は荒い。

 そして時折、何かを気にするように、後ろを振り向いている。


 つまり、端的に言おう。

 彼女は現在、何者かに追われているのだ。




『お姉さんも、気をつけなよ?最近良く聞くでしょ?......人さらいの話!』


 女性の脳裏によぎるのは、先ほど噂好きのパン屋の女将さんと交わした会話。

 最近裏通りで多発している、謎の失踪事件。

 『怪しい集団が、被害者を囲んでいる場面を見た』という証言もあることから、これはただの失踪事件ではなく、誘拐事件......つまり目的不明の人さらい事件なのだと、女将さんは神妙な顔つきで語っていた。


 そんな噂が、既に王都の一般住民にも流れている状況だ。

 つまり。

 今現在、彼女を追っているのは......。


 女性があれやこれやと、脳内で推測を積み上げ始めた......その時だった!




 シュッ!




 ナイフが小さな風切り音を立てながら、左右で三つ編みに縛った彼女の髪をかすりつつ、通り過ぎていったのは!


「!」


 女性が慌てて振り向くと、そこには細身のシルエット。

 逆光で詳細はわからないが、骨格的には男性である。


「きゃあああああっ!」


 女性は悲鳴をあげながら、抱えていたパンの袋を放り投げた!

 ばらばらと宙を舞う、焼き立てパン!

 そして、女性は体勢を低くして!

 恐怖で歪む、その顔を!




 一瞬で、獰猛かつ好戦的な笑顔へと......変化させた!




「ああああああッ!」


 無害な力なき一般王都民の仮面を捨て去った彼女は、低い体勢のまま、力強い踏みこみ!

 宙を舞うパンの下を潜りながら、瞬時に相手との距離をつめる。


 相手とは、大分身長差がある。

 首筋を狙うには、こちらの背が足りない。

 一撃で仕留めなくとも良い。

 まずは、腹。


 女は甲高い叫び声をあげながら、敵の腹に向けて、槍のように手刀を突き出す。

 敵は油断していたのか、まだ動き無し!


(やった!!)


 女は己の攻撃の成功を確信し、脳内で快哉を叫んだ!

 が、しかし!


 敵の男は、女の手刀が届く、そのほんの一瞬前に。

 ひらりと。

 それをかわしたのだ!


「ああああああッ!?」


 少し焦りつつも、女は思いきり地面を踏みこみ、急停止。

 そして方向を変え、再度突進。

 真横に避けた男に対して、またしても手刀を突き出す!


 しかしそれも、容易く避けられる!


 狭い路地裏での戦いだ。

 女の手刀は石壁へとめりこみ、一瞬の隙が生じる。

 その隙に、男は。


 女の首筋へと、ナイフを当てた。




 ......完敗である。

 もはやこの期に及んでは、抵抗する手立て無し。

 死を覚悟した女は、その真ん丸な瞳をぎゅっとつぶった。


 しかし。




「うん、良い動きだったね。成長を感じるよ」




 首筋のナイフが彼女の命を刈りとることは無く、響いたのは聞き覚えのある声。


「え?」


 思わず女が振り向くと、そこにいたのは。

 先ほどは......逆光でわからなかったが。


 良く焼けた肌をジャケットとシャツで包み、スラックスをはいた男だ。

 髪は白髪で、細長い白縁眼鏡をかけている。


「やはり、成長......優れた暗殺者の資質とは、常に成長を続けること。成長しようという志を持っていることだ。何故なら顧客の信頼は、これまでと同じ仕事を続けるだけでは、得られないからね。彼らはいつだって、『もっと、もっと』と熱望している。要求の水準は、どんどん高くなる。彼らの要望に応え、満足させるには、こちらが日々成長を続けるしかないんだ。故に、だからこそ、ね。我々は、成長することをやめてはならない。成長とは、我々に与えられた義務であるというわけだ」


 聞き覚えのある声。

 身なり。

 そして、相変わらず良くわからないことを、ぺらぺらと喋り続ける、その口。


 間違いなく、今、女の前に立っている、その男は。


「アンビシャス、代表......」


 女が所属する組織、『紫ノ二ツ輪』の代表、アンビシャスその人であった。




「久しぶりだね、ナイフハンド」


 アンビシャスは白い歯を煌めかせながら、爽やかに笑った。

【アンビシャス】

 かつて小規模カルト宗教団体だった『紫ノ二ツ輪』を乗っとり、暗殺者組織へと作りかえた男。

 現在の肩書は、『紫ノ二ツ輪』代表。

 とある依頼に失敗したことで、本部で活動していた暗殺者たちを、大勢失っている。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  (´⊙ω⊙`)な、なんと負け犬アンビシャスの再登場!?今さら出て来てどーなるもんでもないけど果たして生き延びる事が出来るのかwww。 [気になる点]  サブタイの(白縁)って誰のことだろ…
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