目指せ妹(まい)スター
目の前の大きな建物に圧倒されつつも如月さんが門を開け誘導してくるのでそれに従う様にして敷地へと恐る恐る歩を進める。
「おにーちゃーん! 久しぶり!」
すると門を通ってすぐのところで、横から人影が飛び出してくる。
「わぁ!?」
僕はそれに思いっきり驚いて、のけぞりながら飛び出してきた人物と距離を取る。
「その大げさな驚き方に、人とナチュラルに距離を置こうとする姿、本物のお兄ちゃんだ!」
「いや、本物ってなんだよ。……というか驚いてなんてないよ? ほんとだよ?」
僕は大仰にそうやって驚いてないアピールを繰り出す。
それに対して、飛び出してきた人物……僕の妹である千早は呆れた様にため息をついて答えてくる。
「お兄ちゃん、誤魔化せない事分かっててわざとらしく誤魔化すよね。 意地っ張りなのか、素直なのか……」
「失礼な、誤魔化す気しかないって」
「あれでお兄ちゃんが驚いてないと思うのはよっぽど心が綺麗な人だけだよ……」
……そんな酷いのか、僕の演技。
エリスは鋭い部分もあったが、こういう風にいうとだいたい誤魔化されてくれたので逆説的に心が綺麗と言う事なのだろうか?
間接的にではあるが妹にその事を肯定された気がして嬉しくなる。
そうやって少し話してから、妹が庭から突然飛び出して来たことを思い出した。僕が来るまで待っていてくれたんだろうか?
「千早、待っててくれたんだ」
「うん。さらちゃんが出るときに連絡くれたから、そろそろだろうな〜って思って待ってたの。……というかお兄ちゃんひどいよ、いつ来るかって言ったのに返事くれないし」
「……あっ、そういえば忘れてた」
「まあ……お兄ちゃんだもんね……しょうがないよね……」
千早はそうやって諦める様に呟くと、こちらを見上げながら続けて喋る。顔が近くなってしまうって僕は自然と後ろに下がる。
「……たまには連絡して。私、いつだってお兄ちゃんに会いたいし、話したいんだからね?」
そんな風にあざとく言ってくる千早。
妹だから別に何も恥ずかしい事もない……と言いたいけど、目が悪く、その影響か目つきも悪い僕とは似ても似つかぬぱっちりした目に、バランスよく整った顔。
そして、どこで覚えたのか上目使いで微笑むという、自分が可愛い事を自覚していなければとてもではないが、あざとくてできないような行動を取って来る千早。
僕はそのあざとさになんとかして抗おうと考えて答える。
「いや……だって、千早だって迷惑でしょ? 僕からどうでもいい連絡なんて来たって」
目を逸らしながらも、そうやって答える。
そんな僕に千早はさらに距離を詰めながら答える。僕の足はまた一歩下がった。
「……お兄ちゃんらしいね。そうやって距離をとっちゃうの」
物理的な意味だけでは無くて、心理的な意味も含まれているだろう発言をする千早。
その距離を埋めるように千早は足を一歩前に出してくる。
「いい? お兄ちゃんが自分に魅力なんてないって言っちゃうのは知ってる。だけど、その事と私がどう思うかなんていうのは別なの。いくらポンコツで、ひ弱なメンタルしてるから言っても、私はお兄ちゃんが優しくて人の立場に立てる人だって分かってる。だから、私に連絡するくらいの事、自分勝手にしてくれていいんだよ?」
「う、うん」
「私は妹なんだからね? 遠慮なんてしなくてもいいんだよ? 何が無くともどんどん連絡くれていいんだから」
そうやって千早はなんとも嬉しい事を言ってくれる。
何か言葉を返そうかと思うが、千早が久しぶりに僕に会えたのが嬉しいのか興奮もそのままに自分の世界に入っていくもんだから、タイミングを逸してしまう。
「……連絡なんて軽い物じゃなくて、別に私、お兄ちゃんにだったら何されてもいいよ……。あっ、だめそんな風にがっついて来ちゃ……。ふふ、お兄ちゃんこういう時だけ積極的なんだ。このムッツリお兄ちゃんめ」
千早はそうやって隠す気もなく妄想の世界へ飛び出していく。
……昨日も如月さんが自分の世界で変な妄想口に出してたっけ。
僕も人の事言えないけど、坂川家の子供は独り言が大好きなのだろうか……。
そんな事を思っていると、僕が来た門の方から咳払いが聞こえてくる。如月さんのものだ。
「こほん。……千早様、奈月くんに何を思うかは勝手ですけど、ほどほどにして下さいね」
そうやって諭すように千早に語る如月さん。
やっぱり、基本的に真面目でまともな人なんだなあなんて事に感動してホッとしてしまう。
「千早様だけが奈月くんに滅茶苦茶にされるなんて不平等です。私も一緒にめちゃめちゃにしてもらわないと……」
「いや、それはおかしいよね!?」
どんどんと僕の如月さんに対する評価が下がって行くのだった。
ムッツリお兄ちゃんvsガッツリ妹ちゃん




