1話 後
投稿しました。
「ねぇねぇ、陽くん、陽くんのお家に寄っても良いかしら? 」
「え、嫌ですよ。」
「むぅ、残念・・・・」
本日7度目の質問。
お姉ちゃんの話をしてから詩織さんはずっとこの質問を繰り返している。
しかも、今は生徒会室。
ほら、みんな白い目で見てるよ?
やめよう?
マリアちゃん、可哀想なものを見る顔するならせめて助けてください。
源太先輩、何裁縫やってるんですか? 熊のキーホルダーですか? 相変わらず可愛いですね。好き。
耐え切れず、視線でかいちょーに助けを求める。
すると、伝わったのかやれやれと言った感じで口を開く。
「ワンコくん、今日買い物行きたいんだけど。」
「良いですよ? 何買うんです?? 」
「下着」
うん、無理。
ふざけんな、さらなる爆弾投下してんじゃねぇか!
「えっと、すいません。一人で行ってください。」
「え、最初からそのつもりだけど。」
「・・・・」
「・・・・」
なんだこの空気。
「え! なぁにぃ? ワンコくんお姉ちゃんの下着選びたいんでちゅかぁ〜?? 良いでちゅよ〜〜?? 一緒に行きまちょうねぇ〜〜〜?? 」
ニヤニヤと笑いながらかいちょーにぐりぐりと頭を撫でられる。
くっそぅ! やらかした!! でも僕だってやられっぱなしじゃないんだ!!
「いいですね! 行きましょうか!! 」
空気が凍る。
「ひ、陽くん・・・・?」
「バッカみたい」
「斉藤・・・・」
「・・・・」
自分がさらなるしくじりをした事に気付く。
「ん、わかった。じゃあ一緒に行こうね。」
かいちょーは平然とした顔でそう告げた。
そのまま、特に何もなく今日の生徒会活動は終わった。
詩織さんが「ぐぬぬ・・・・」って顔でかいちょーを見てた事を抜かせば。
☆☆☆
生徒会室の鍵を職員室に返しに行く為、ワンコくんには校門付近で待ってもらう事にした。
「ねぇ」
校門へ向かう階段を降りる途中、上から話しかけられた。
「いつまで続けるんですか? 生徒会長さん。」
「やぁ、風香ちゃん、今日のパンツは熊さんかな? 」
わたしの指摘に慌ててスカートを抑える風香ちゃん。
こほんと1つ咳払いをしてキリッとした表情を作る。
「こんな事続けても、お兄ちゃんはあなたの事を思い出したりしませんよ? 」
「うん、わかってるよ?? 」
「それなら、なんで! 」
「だってわたしの事を覚えてなくても彼は彼だった! だから、きっと、これで良いんだ!! 」
「・・・・」
「わたしは彼をなぞって生きる。彼の為に生きていくよ、わたしは。たとえ、彼の記憶が戻らなくても。彼が別の誰かを好きになっても。また、わたしを忘れても。わたしは彼だけを好きでい続ける。彼の幸せを、最後まで見届けるんだ。」
「・・・・ふん、ずいぶん重い女ですね。」
「あはは、彼には絶対言えないけどね。」
笑って誤魔化す癖、うつっちゃったな。
でも、それが嬉しい。
彼と一緒の物が増えている。
「まぁ、良いです。『彼ら』は既に次の手を伸ばしてますから」
「うん、そっか」
風香ちゃんは夕日を背にわたしに向けてビシッと指を指す。
「覚悟してろ、です。」
☆☆☆
「かいちょー、遅いなぁ〜」
僕は今、校門で待たされている。
多分、一時間は待ってる。
「あ、ワンコくんだ。じゃあね〜!」
「ほんとだ! じゃあね〜!! 」
「あ、うん、ばいばい!」
部活帰りの生徒達に話しかけられる。
すっかり定着しちゃったな、このあだ名。
かいちょーが人前でもお構いなしでちょっかいかけてくるから僕もちょっとした有名人だ。
「あ、ワンコくん。じゃあね〜」
「あ、かいちょー、さよなら〜」
うん、ほら、またこうやって話しかけられて・・・・
「って、かいちょー! 」
「あ、気付いた。」
勢いでほんとに置いてかれそうになった・・・・。
ほんと、『アリス』の事が片付いてから振り回されてばっかりだな。
「いや〜、待たせてごめんね? 」
「許せない。」
「どうしたら許してくれる? 」
「許して欲しけりゃ出すもん出しな。」
「おっけ、帰ったらじぃっくり、ね? 」
え、良いの? マジで??
「まずは買い物を済ませてからね〜」
「あ、ちょっと! 」
かいちょーに手を引っ張られ、僕達は走り出す。
「ふふふ、見ぃつけた。」
誰かが着けて来ている事にも気付かず。
☆☆☆
「最近、ワンコくんふざけた事言わないよね」
僕達は、ゲームセンターにいた。
あれ? 下着売り場は??
「下着は別にいいよ。嘘だし」
「ひどい、僕の純情もてあそばれた」
「そうそう、そうゆうの。なんか、最近減った気がする。」
そうかな?あんまり意識してないんだけど。
「それって、やっぱり『アリスの狂気』が抜けたからかな? 」
「さぁ? どうでしょう?? 普段から無意識にやってるんで。」
確かに、最近真面目になった気がする。
いけないいけない。
初心に帰ろう。
「かいちょー、今日の天気は? 」
「晴れだね」
「かいちょー、焼き肉の食べ方は? 」
「タレだね」
「じゃあ後ろから着けて来てるのは? 」
「誰だね? 」
「ふぇっ!? バレてるッ!? 」
振り向くとオロオロしてる詩織さんがいた。
「すごいね、ワンコくん。どうやって気付いたの? 」
「いや、詩織さんって、すごい良い匂いするじゃないです。」
「うわ、変態だ」
「違くて。」
白い目で見てくるかいちょー。
自分の体臭を気にし始める詩織さん。
「『アリス』の事があって、初めて異能を使ったじゃないですか。あれ以来、耳と鼻がよく利く様になったんですよね。」
「うわ、犬化してんじゃん。大丈夫なの? 」
かいちょーが心配そうに僕の額にコツンと額を合わせてくる。
「あぁ、わたしの仕事なのに・・・・」
「別に詩織さんの仕事では無いですね」
「わたしの仕事でも無いけどね。」
何言ってるんですか、かいちょーは僕の隣に永久就職ですよ。
「言ったな? 言質取ったぞ?? 」
「残念、口には出してません。」
「えっと、口に出てたよ〜? 」
え、マジで? うっそだ〜、まさか、そんなヘマは・・・・
『かいちょーは僕の隣に永久就職ですよ。』
ボイスレコーダーで録音していた、だと・・・・!?
「幸せにしてね? 」
いつもの様に、ニヤニヤとした笑いで僕を見つめてくる。
「あ〜、はいはい」
「じゃあ、この婚姻届にサインとハンコをーーーー」
「かいちょーなんでそんなの持ってるの? 」
「女の子の必需品だよ? 」
「初めて知りました。」
「スタ○、プリクラ、婚姻届は乙女の嗜みよ〜? 」
そうゆうものなのかな?
二人ともバッグの中に婚姻届が入っていた。
「じゃあ、そろそろサインとハンコをーーーー」
ぴろりん♪
「お、風香ちゃんからメールだ。」
「ちっ」
うわ、このかいちょー舌打ちしたよ。態度悪っ、SNSの厄介オタクに晒されて炎上されるぞ。
「えーつと? なになに?? 『ひなたくんの家に誰かいるよ? 』」
「おねえさんじゃない? 」
「ですよね? 」
その瞬間、詩織さんの目がギラリと光った。
「行きましょうッ!! 」
詩織さんが僕とかいちょーの腕を掴み走り出す。
こらこら〜、ゲームセンターでは走るの禁止だぞ?
「あぁ!? 折角のデートだったのに〜っ!! 」
かいちょー? デートじゃないですよ??
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