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物語異能の負け犬男子  作者: 柴犬男
ジキルとハイドと姉と弟
19/38

1話 中

投稿しました。

正直、なんと呼べば良いのかわからない。

自分の知らない時間にいた、自分の知り合い。

今となっては、たった一人の家族。

わかっていても、なんとなくギクシャクしてしまう。


「えっと、さいとう、つくよさん? 」


あぁ、なんでフルネームで呼んだんだろ?

これじゃ他人行儀過ぎるな。


自分の発言に後悔し、俯いていると月夜さんが僕の唇にぷにっと人差し指を当ててきた。


「だぁめ、私のことは〜、『お姉ちゃん』か『月夜ちゃん』って呼んで? 」

「えっと・・・・・・・・『つくよお姉ちゃん』」


この瞬間、つくよさんの目がギラッと光った気がした。

僕は、この感覚を知っている。


「合わせ技キターーーーーーーーーーッ!?!?!? 」

「もがぁっ!? 」


思い切り抱き寄せられた。

く、苦しい。

そうだ、この感覚思い出したぞ、かいちょーが暴走した時だ。

あの目に似ていたんだ!!


「あっはははは! またやられてる!! 」

「ふぁいひょー、みふぇないふぇふぁふふぇふぇ(かいちょー、見てないで助けて)!! 」

「え? なに?? 聞こえない。」


この野郎! さっきの仕返しかっ!!


「ぷはぁっ! 死んでしまうわ!! 」


バチィンッと胸をはたく。


「あぁん、ひーくんごめんね? 」


くそぅ、素直に謝られると言い返し辛い。


「ワンコくんは幸せ者だね〜? 」


かいちょーはニヤニヤし過ぎでしょ。


「で、姉さんはーーーー」

「『お姉ちゃん』」

「っ、お姉ちゃんは何しに帰って来たの? 」


そうだよ、これを聞かなきゃいけないんだよ。

この人たちすぐ話脱線するから・・・・全く、もう高校生なんだから僕を見習ってしっかりして欲しいよ。


「なんか失礼な事を言われた気がする。」

「ほんとですか? 幻聴ですか? 身体どこか悪いんじゃ無いんですか?? 」

「うん、そうかも 」

「何かして欲しいことありますか? 」

「責任を取って結婚して欲しい 」

「お姉ちゃん結婚はまだ早いと思うの。 」


僕とかいちょーの戯言に食い気味で入ってくるお姉ちゃん。


「お姉ちゃんが帰って来た理由はねぇ」

「うんうん」


さぁ、本題だ。


「ひーくんをアメリカに連れて帰る為だよぉ? 」


☆☆☆


『WSL』


主にアメリカで活動している製薬会社。

正式名称は『Witch & Science Library』。

本来「悪役級」として疎まれる魔女の愛読者が科学者と協力し、愛読者専門の薬品を取り扱う政府公認機関。


お姉ちゃんは、そこで働いているらしい。


「お姉ちゃんねぇ? ひーくんみたいに異能をうまく引き出せない人達が、自分の力をもっと効率良く引き出す事が出来るお薬の事を研究をしてたのぉ。」

「ほうほう、それで? 」

「そのお薬がねぇ? 最近やっと完成したのよぉ! 」

「なるほど! いらない!! 」

「えーーーっ!? 」


だって、僕自体は異能使えないらしいし。


「どうしてぇ!? お姉ちゃん、ひーくんの喜ぶ顔が見たくてい〜っぱいがんばったんだよぉ!? 」

「それはわたしから説明しましょうっ!! 」


お! 出たな!! こうゆう時だけ出しゃ張る生徒会長!!


「それはですね、かくかくしかじか」

「ふむふむ、なるほどぉ〜」


大丈夫? これ伝わってる??


「うん! 全然わかんないけどわかったわ!! 」


あ、伝わってないね。

しょうがない、僕が説明してあげよう。


「えっとね、お姉ちゃん。僕の物語異能は『犬(桃太郎出典)』って事は知ってるよね? 」

「うん、知ってるよぉ? わたしが発見したんだもん 」

「え、そうなんだ。で、それでね? ここの生徒会長さんの異能が『桃太郎(桃太郎出典)』なんだよ。」

「へ〜、すごいねぇ。」

「えっへん! 」


ドヤ顔で胸を張るかいちょー。

なんかムカつくな。


「『桃太郎』の能力は『三種の神器』って言って、自分の強過ぎる力をお供動物出典の愛読者の身体に預ける。だからお供動物出典の愛読者の僕は『桜木 桃花の所有する異能の1つ』って事。らしい。」

「じゃ、じゃあひーくんは『どんなに努力しても異能は使えない』って事、だよね? 」

「・・・・そうだよ」


そうだ。


僕は異能が使えない。


どんなに努力しても、どんなに嘆いても。


僕は挫折するだけの人生を歩む。


僕は所詮、『会長の道具』として生まれ落ちた物なんだから。


「だからさ、お姉ちゃん。僕はアメリカには行けない。行っても、意味が無い。お姉ちゃんの努力はきっとみんなを笑顔に出来る。でも、その『みんな』の中に僕は入れないんだ。」

「そんな・・・・」


あぁ、意地悪な言い方だったかな?

でも、仕方ないよね。

これが現実だ。


「だからさ、せめてゆっくりしていってよ。お姉ちゃんの気が済むまで、さ。」

「そうですよ、久々の弟くんを堪能していってください。」


お姉ちゃんの目がギラッと光る。

かいちょーが余計な事言ったから。


「うん! そうするわぁ!! 」


命、保つかな??



☆☆☆


昼休み


「って事があったんですよ」

「へぇ〜、大変っすね〜」

「なんですか? それ?? 自慢ですか?? 僕達非リアを馬鹿にする為だけに行っているのなら即刻そこの窓から飛び降りて僕達の目の前から消える事をおすすめいたします。」


僕の話をスマホをいじりながら上の空で聞いているチャラ男、熊谷 金太と中指を立ててくるメガネ男子、伏見ふしみ しょう

彼らは僕が高校に入ってできた友達でクラスメイトだ。


元々席が近かった僕達はいつの間にか金太が話しかけ、僕がボケ、翔がツッコミを入れるの流れが出来ていた。


「な〜に話してるの? 三馬鹿くん」


忘れちゃいけない、風香ちゃん。

今日ものん気に話しかけてくる。


「風香ちゃん、いきなり三馬鹿は失礼だと思うよ? 」

「そうっすよ! ね! 翔くん!! 」

「うえっ!?あ、は、はい! そうです、ね」


翔くんは女性が苦手だ。

なんでも、昔近所にいたお姉さんに散々いじめられてトラウマになっているらしい。


「翔くん! ふぁいと!! 」

「ふぁいとっす! 」

「う、うるさい!」

「『金太負けるな! 』って言うと『金玉蹴るな! 』って聞こえない? 」

「「うわ、マジだ」」

「やっぱ三馬鹿じゃん・・・・」


なんだなんだ、最近出番が無いからって嫉妬してんのか風香ちゃん。


「違うよ、ひなたくんに用があったんだよ」

「今ひなたくんなんか言ってたっすか? 」

「いや? 何も言ってなかったよね?? 」

「落ち着け、風香ちゃんは他人の心が読める」


僕達が茶化すと風香ちゃんが某奇妙な冒険の様なポーズをしていた。


「僕3部が好きかな。」←メガネ

「ボクは2部っすね。」←チャラ

「僕は4部かな。」←僕

「わたしは5部」←風香ちゃん


むぅ、まさか全員読んでいたとは。さすが人生の教科書。


「ところで、何の用だったの?? 」

「ん? あぁ、わたしじゃなくてね?? ほら」


風香ちゃんが教室のドア付近を指を指す。


そこには、むちっとした太もも、Gカップの大きな胸、ゆるふわウェーブのかかった髪型!


そう! そこには鳥塚 詩織!!

我らが生徒会副会長!!


「陽く〜ん」

「ぎゃぁぁぁぁあっ!?!? 」

「なんで叫ぶの〜!? 」

「いや、ノリで」


本当になんで叫んだんだろ??


「陽くん、お弁当はもう食べた? 」

「あ、食べてなかったです。」


本当は食べた。


「ほんとう!? じゃあ一緒に食べましょ〜」


この人、お世話に命をかけてる。

買ってきたコンビニのパンばかり食べていた僕の食生活を見兼ねて最近は僕の為にお弁当を作ってくる様になってしまった。


「はい、良いですよ? どこで食べます?? 」

「そうね〜、屋上なんてどうかしら? 」

「あぁ、いつも通りですね。」

「うふふ、そうよ〜」


クラスメイト達にひらひらと手を振り別れを告げる。

三馬鹿の残り二匹+風香ちゃんは何故か敬礼をしていた。


「陽くんは高校には慣れた〜? 」


階段を上っていると詩織さんにそんな事を聞かれた。


「あ〜、まぁ、なんとか」

「ふふっ、よかった〜」


そう呟く詩織さんは、なんとなく儚げにも思えた。

まるで、何か辛い事を抱えているかの様に・・・・


「あれ?しーちゃんにワンコくんじゃん?? 何してんの、階段で?? 」


出たな、シリアスクラッシャー


「あら、ももちゃん。」

「かいちょー、ちぃ〜っす。」

「はいはい、ちぃ〜っす。何? お弁当食べんの?? わたしも行きたい。」

「うふふ、良いわよ〜」


お、犠牲者追加。


「うっわ〜屋上初めて入った。」

「そうなんですか? 」

「うん、入学式以来」

「初めてじゃない、それは」

「うふふ」


さぁ、お弁当を食べよう。

これはある意味『戦い』なんだ。


「さ、食べましょ〜? 」

「うぇ〜い、いただきま〜っす! 」

「こらっ! ももちゃん!!ちゃんと座って食べなさい!! 」

「ちぇっ、は〜い」


や〜い、生徒会長が怒られてる。

ははは、ザマァ。

ところで・・・・


「あの、詩織さん? 僕の箸は?? 」

「はい、あ〜〜ん」

「いや、え? 」

「あ〜〜〜ん」

「いやいやいや」


さぁ、始まりました!

『第7回 あ〜ん阻止選手権』


「陽くん、口開けて? 」

「いや、自分で食べたいです。」

「ぐすん、陽くん、どうしてそんな意地悪な事を言うの〜? 」

「いや、嘘泣きですよね?? 」

「うわ〜、ワンコくん泣かした〜〜」

「え、マジ泣き?? 」

「ぐすんぐすん」


僕女の子の涙に弱いんだよな〜


「わかりました、食べますよ。」


瞬間、詩織さんが泣き止みかいちょーとハイタッチをする。

くそぅ! はめられた!!

かいちょーもグルか!!


今日も負けたか。


「はい、あ〜〜ん」


僕は結局素直に食べさせてもらっていた。


「よかったねぇ、ワンコくん。家では実のお姉ちゃんに甘やかされて、学校ではしーちゃんにお世話されて。」

「いや、この心地よさから脱しないと僕の進路ニート直行ですけどね」


かいちょーめ、ニヤニヤしながら話しかけやがって


恨めしそうにかいちょーを見ているとガシャンっと何かが落ちる音が聞こえた。


「実の、お姉ちゃん・・・・? 」

「詩織、さん? 」


おや、なんだか様子がおかしい。


「陽くん、お姉ちゃんがいるの? 」

「らしいです。昨日発覚しました。」

「そ、そんな・・・・」


え、何この状況?

詩織さん、今にも泣き出しそうなんだけど。


「・・・・ない」

「え? 」

「ぜぇったい! 負けない!! 」


なんか、めんどくさい事になりそう?


「うわぁ、めんどくさい事になりそう。」


かいちょー、そうゆう事は思っても言わないの。


やっと平穏な暮らしを手に入れたんだけどな〜・・・・。

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