3話 中
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「先輩」
どうしたの?
「先輩は、凄い人ですね」
うん、よく言われるよ。
「勉強も運動も出来て、人をよく見てる。それに教師からの信頼も厚い。生徒みんなの憧れですよ。」
・・・うん、そうだね。
「でも、先輩って何も出来ないんですね」
・・・・え?
「勉強も運動も、何に対しても情熱を注がない。人を見てるんじゃなくて、顔色を伺っているだけ。みんなの『憧れ』であり続ける事に押し潰されて」
そう、かな?
「惨めで臆病で泣き虫で、まるで悲劇のヒロイン気取りですね」
い、言い過ぎじゃないかな?
「だから、先輩」
・・・・・
「もう、無理に笑わないでください」
「僕は先輩が好きです」
「僕は先輩が好きでした」
「僕は先輩とずっと一緒にいたいです」
「僕は先輩とずっと一緒にいたかったです」
「僕はもう先輩には会えません」
「僕はもう一度先輩に会いたいです」
「だから」
「なのに」
「どうして」
「■■■■■■■■■? 」
☆☆☆
「ーーーて! 」
んん?まだ眠いんだけど。
「ーーたくーーーてよ!! 」
誰が叫んでるんだよ。
「ひなたくん起きてよぉぉぉッ!! 」
ドゴァッ!!
「ーーーーぐふっ!? 」
股間に信じられない程の衝撃を感じた。どうやら僕の人生は終わりを告げるらしい。お父さん、お母さん、先立つ不孝をお許しください。
「ひなたくん起きてよぉぉぉ! 死んじゃうやだぁぁぁぁぁぁ!!!! 」
「起きる起きるっ!わかったから!! だからちょっと離してーーーーッ!! 」
目が覚めると風香ちゃんに胸ぐらを掴まれブンブン揺さぶられていた。
僕が目を覚ました事に安堵し、ようやく風香ちゃんは手を離してくれた。
あぁ、よかった。風香ちゃん、助かったんだ。
風香ちゃんの元気そうな顔を見つめていると何だかホッとする。
それにしてもさっきの衝撃は何だ? 股間がめちゃくちゃ痛いんだけど?? 大丈夫かな?? 子孫途絶えちゃったかな??
ちょっと玉さんが奥に押し込められた気がするからひっぱり出せないかな?
ジャンプすれば落ちてくるかな?
物は試しだ。
せーのっ、いっちにぃさ〜んし・・・・
「あ、起きた? 」
あれ? かいちょーの声が聞こえる??
かいちょー死んじゃったんじゃなかった??
「ちょっと〜、無視はひどいんじゃない?? 」
・・・・・・・・
「うわぁッ!? おばけだっ!!! 」
「どさくさに紛れて胸を揉まないッ!! 」
風香ちゃんに飛び付いて、流れに任せて胸を揉んでみたらグーで殴られた。
なるほど、さっきの股間の衝撃はこれか。
「かいちょー、無事だったんですね・・・」
「うん、まぁ、風香ちゃんが助けてくれたみたい。それにしても凄いね、風香ちゃん。あんな大怪我してるわたしに突然、『いたいのいたいのとんでけっ! 』って叫ぶんだ時は『この子バカなのかな』って思ったのに、本当に痛みが吹っ飛んじゃった。『芭蕉扇』ってそんな使い方もあるんだねぇ」
風香の物語異能「芭蕉扇」はどんなものでも『吹き飛ばす』事が出来る。例えそれがとんでもない質量の物質でも、覆せない概念だとしても。
「風香ちゃん、その異能ちょっと僕の股間にもやってくれない?僕このままだと孫の顔拝めない」
「そ、それって、わたしたちの未来について考えてくれてるって事!? 」
「おい、なぜそうなる」
「えっへへへ、男の子だったら『田吾作』、女の子なら『ジョセフィーヌ』が良いな〜♡」
謎のトリップを起こす風香ちゃんを見て、かいちょーが呆れ交じりに話しかけてくる。
「この子ネーミングセンスおかしいね」
「かいちょー、それは言わないであげて」
風香ちゃん、最初自分の物語異能に『風香ちゃん扇子』って名付けようとしてたくらいだし。だから今だに「芭蕉扇」って呼び続けてるくらいだからね。
「風香ちゃ〜ん、まだ〜? 股間超痛いんだけど〜?? 」
「自然に治るのを待つのとどっちが早いかな? 」
「待った方が早そう・・・・」
「えっへへへ」とニヤけてる風香ちゃんは一先ずほっとこう。
あぁ、僕も彼女みたいになれたらいいのに。
僕の手がキュッと握られる。
振り返ると、かいちょーが僕をジッと見つめている。
あぁ、覚えてる。
あなたは、僕と出会った時もそんな目をしていましたね。
「ねぇ、そろそろ話してくれてもいいんじゃない? 」
かいちょーが真剣な声音で話しかける。
「何をですか? 」
僕は、いつもの様におちゃらけた態度で返す。
「ここまで来てとぼける? 普通」
「あはは」
わかってるよ。
僕が弱いから、こんな事になったんだよね?
だからこの人を、巻き込んでしまった。
「ふざけてないで」
「ふざけてませんよ? 」
知ってるよ。
この人は優しいから、自分の事のように泣いてくれる。悲しんでくれる。
なぜだかはわからない。
でも、そんな気がする。
「ねぇ、話してよ」
「無理ですよ」
聞かないでください
「お願い」
「嫌だ」
なんで
「どうして? 」
「どうしてでしょう? 」
なんでなんで
「なんで? 」
「なんででしょう? 」
なんでなんでなんで
「また逃げるの? 」
優しい目で見つめるんですか?
「ほんとうに、聞きたいんですか? 」
「ここまで巻き込まれてるんだ、最後まで付き合うよ」
あぁ、神様。
どうして僕をこの人に引き合わせたのさ。
「わたしたち、友達でしょ? 」
こんなにも優しくて、『残酷』な人と。
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