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第二章 2

ルテナから一週間の墓守隊配属を知らされ、ネオとクロムは渋々特別墓地へと行くと、仕事内容を詳しく聞かされる。実際にやってみると、凄まじく肉体労働の過酷な仕事だと痛感させられる。


その一方、ノイドは友人たちとのつかの間の飲み会後の朝、同棲している婚約者エリーゼからルテナについて、女子同士の恋愛話のことを聞く。

       2


 二人が制服に着替えると、レニーが運んできた二人分の遺体の前で死亡診断や詳細な経歴が記載(きさい)されている書類を渡された。

 損傷(そんしょう)の酷い死体など見たこともある二人は平気ではあるが、食後に腐臭(ふしゅう)を嗅ぐとやはり吐き気はしてくる。

「さて、さっそく仕事に取り掛かってね。僕は巡回(じゅんかい)してくるから」

 レニーは軽く手を挙(あ)げ、御者(ぎょしゃ)台(だい)に乗りこんで墓場から出ていく。

 重苦しい音を立てて扉が閉まると、ルテナは墓地を指差した。

「さて、お仕事の内容ですが……」

「ライヘについての説明と倒し方なら聞いてる」

 すかさずネオが口を挟むと、ルテナが微笑する。

「なるほど。では手順(てじゅん)を。ライヘには死体の頬、鎖骨(さこつ)部分と両手足に登録番号が書かれてます。何か所にもあるのはガイストの破壊目的のため、切断されやすい部位だからです」

「……ああ、首を落とすのが最適(さいてき)なんだっけか」

「そうです。で、ナルさんが持って来てくれた名簿の番号と、死体を照らし合わせます。合っていれば掘って埋めて、墓標(ぼひょう)に名前と登録番号を書いて建てるだけです」

「簡単だな」

 クロムがさきほど聞いた話を思い出すとルテナが頷く。

「はい。埋め直しをする時は、間違わないよう、墓標の番号と体の番号を照らし合わせる作業をしてから埋めてください。あとは出てきたら戦って埋め直すのを繰り返すお仕事です」

「なるほど」

 ネオが微妙(びみょう)な顔をして頷くと、ルテナはさらに鈴を手渡してきた。

「これは特殊な鈴で、ライヘが出てきたときにだけ音が鳴って知らせてくれます。一体出ると一回、二体で二回って感じで鳴るからすぐに対処できて便利なんで、常に付けてください」

 受け取った二人が鈴を振ってみても、今は音もならなかった。

 この大陸には、様々な属性の魔力を宿す鉱石が各地で取れる。この石を加工して、色んな道具に付与することでガイストと似た道具を作り出せる。この道具は国によって呼び方が違うが、原理はほぼ一緒で、アルマンディン王国では『魔(ま)具(ぐ)』と呼んでいた。

 鋼人は鉱石との相性もいいため、魔具の加工においてはどの国よりも精巧で特殊な道具を作ることで知られ、ガイストの能力自体を付与することが出来る者すらいる。

 特にハンマーのガイストの者に備わりやすいため、彼らは鍛冶師(かじし)になる者が多い。

 どうやらこの鈴もその魔具のようだ。

 さらにルテナは墓地の左側を指し示す。

「お二人には道から左側の一般人側を担当してもらいます。右側と奥には行かないように。あたしは今倒したライヘを埋め直しますんで、聞きたい事があったら声をかけてください」

「あ? なんで分けてんだよ」

「ライヘは生前の身体能力と肉体に比例(ひれい)して強さが変わります」

「……あ、さっきオッサンも言ってたな。生前が戦士職だと厄介とか?」

「そうです。右側と奥は戦士職ライヘが埋まってます。一週間だけの仕事で死にたくはないでしょ?」

 クロムの疑問に答えたルテナは、かなり真剣な眼差しで二人を見る。

「これが一番重要です。墓地では『騎士(きし)道(どう)』とか『正義』とか『良心』とか振りかざさないでください。町で忘れられると大変困りますけど、墓地では忘れて容赦(ようしゃ)しない事。勝てないと判断したらなりふり構わずすぐ逃げる。いいですね?」

「化け物に遅れは取らん」

 ネオが憮然(ぶぜん)と告げるとクロムも同意とばかりに頷いた。

 そんな二人を、ルテナは意味深に笑顔で見上げ、書類を差し出した。

「では、さきほど言ったように名簿と遺体の番号の確認からお願いします」

 言われるがままに受け取った二人が早速取り掛かる。

 クロムは近くに置かれた半(なか)ば腐乱(ふらん)した死体を見て思い切り顔を顰(しか)めつつ、書類に記載された死因を確認してみる。

「階段から足を滑らせて首を骨折……転落死(てんらくし)か? うへぇ……一人暮らしで誰にも気付いて貰えずに、数日放置されてたのか……寂しい奴……」

 遺体を再度よく見ると、確かに首がおかしな方向に曲がっていた。その体は腐敗と同時に青銅(せいどう)色に変色していて、傍(はた)から見るとまるでカビが生えているようにも見えた。

「こっちは……む?」

「どうした?」

 ネオが書類を見て唸(うな)っているのに気付いてクロムが覗(のぞ)き見る。

「あ、こいつ、昨日の辻斬(つじぎ)りの被害者か」

 ルテナが来た日、彼女が慌ただしい事を指摘した時、二つの事が起きていた。

 一つはネオとクロムの二対三十の大喧嘩、そしてもう一つが辻斬りだった。

 ここ一カ月程前から首都では辻斬りが横行(おうこう)し、市民を震撼(しんかん)させているのだ。昨日も、七人目の被害者が発見され、軍で捜査(そうさ)に当たっていた。

 手口は共通していて刃物による斬殺(ざんさつ)だが、滅多(めった)切(ぎ)りの状態で発見される。しかも、場所も年齢層、性別も関係なく、目的も不明で、手がかりが一切ない。

 そんな残忍(ざんにん)な犯行と、これまでに七人もの犠牲者を出している。その責任から、軍は躍起(やっき)になって捜査しているのだ。

 その担当が第一軍なのだが、二人は軍団長のラジームに指示されるのが嫌で仕事をサボっていた。しかし話は一般人よりも詳しく知っている。

 ネオは死因や詳細を読み終えて嘆息する。

「戦場でもないのに突然斬られて殺されるとは……こういう者がいるから『未練(みれん)が残ってライヘになる』という噂になったのかもしれないな」

「見ず知らずの奴にいきなり殺されりゃ未練も残るよな」

 二人は、二体の遺体を前にして死に方を憐(あわ)れむ。

 ルテナへと視線を向ければ、ライヘが出て来た穴を広げている最中(さいちゅう)だ。ライヘを隣に横たえ、シャベルに足を掛けて深く刺し、大量の土を持ち上げて横へ。それを繰り返してあっという間に穴を開け、ライヘを横から転がり落とし、今度は埋め直す。

 手際が良すぎる彼女の姿を見ながら、ネオがぽつりと呟いた。

「それにしても、ライヘに種類がいるとは知らなかったな。そのためにわざわざ呼ばれたというが、まだ墓守になって一年だろう。大丈夫なのか?」

「つーか、俺ら三人しかいねぇっておかしくね? 他はどうしたんだよ」

「そういえば……それも気になるな」

「聞けば教えてくれるんじゃね?」

「答えるかどうかだな。素直に言うようには見えん」

「ものは試しだ。それに俺らはシロウトだし? 俺が無理だったらあと頼む」

「……承知した」

 ネオが首肯(しゅこう)すると、軽く差し出された拳に、自分の拳で軽く突いた。約束したクロムは資料を彼に渡してルテナの元へ行く。

 近づいて来た彼に気付いたルテナは首を傾げた。

「どうしました? 何か問題でも?」

「問題っつーならあるな。運び屋のおっさんから仕事の説明聞いた時によ、ここに化け物がいるって聞いたんだ。フレッサーとか呼ばれてるっていうやつ。お前勝てるのか?」

「レニーさんって意外に口が軽いですね。まぁ、フレッサーと戦った事もありますよ。その経験と……まぁ、お姫様の『戻って来て』の手紙が大きな箱に入りきらんばかりに来てましたからねぇ……」

 肩を竦める女騎士の発言は冗談なのか本気なのか。

 クロムははぐらかされたと分かったのか、突っ込みを入れずに黙り込む。元守護騎士なだけあって、言えない事は一般騎士よりも遥かに多い。むしろ首都に呼ばれる何かがあって、そのついでにフレッサー退治の任務がきた、と思った方がよさそうだ。

 一応納得したクロムはもう一つ質問する。

「ここ、他に隊員はいねーのか?」

「ここのフレッサーに全滅させられました」

「うへぇ……」

 あっさり明かされた隊員不在の理由にクロムが嫌そうに声を上げると、ルテナは詳細な経緯(けいい)を話し始めた。

「フレッサーっていうのは、生前に武術をやってただけじゃあならないはずなんですよ」

「ならない? 最初からフレッサーじゃないってことか?」

「そうです。フレッサーというのは、能力が残っている者がなるということになってますが、それだけじゃあならないんです」

「他にもあんのか」

「ええ。ライヘはなぜか一(いっ)定数(ていすう)を越(こ)えると……つまり『密集(みっしゅう)』すると殺し合いをするんです。その状況になると、生き残ったライヘは倒した者達から魔力を吸収するんです。それで、肌が浅黒くなり、魔装が発現するんです」

「うえぇ……」

 フレッサーの出現条件を聞いてクロムが苦々しい顔をし、頑張って思案した後に首を傾げた。

「……あれ? ってことは、殺し合いをさせなきゃいいってことだろ?」

「そうです。それが墓守(はかもり)という職業がある理由の一つでもありますね。数を減らして殺し合わせなければ最悪のフレッサーは生まれません」

「……んん? じゃあ、なんでこの墓地にはいるんだ? 倒してれば問題……あ」

「そう。つまり、倒してないんです。隊員達がサボってたので」

 思い至ったクロムに代わり、ルテナが長い長いため息を吐く。

「元々、素行(そこう)不良(ふりょう)の騎士の左遷(させん)場所ですし、墓守自体あまりいい仕事でもないですから、ここの隊長も隊員もサボって町で遊んでたんです。誰も見回りをしたりしなかったのが問題だったんでしょうね」

「はぁ? 隊長はフレッサーのこと知らなかったのかよ?」

「隊長ならご存知だったでしょうけど、甘くみてたんでしょう。だから十二軍の軍団長と副団長は、他の団長のように首都に駐留(ちゅうりゅう)はせず、常に各地を巡回して、さぼってないか、何か異常は出てないか監査(かんさ)してるんです」

「なるほど。そういや、確かに首都にいるって話しは聞かねェな」

 墓守隊の問題を聞き、クロムが相槌(あいづち)を打つと、ルテナが話を戻す。

「それで、酒場で偶然墓守隊がたむろしてるのを他の騎士が目撃し、報告したことによって総団長に叱責(しっせき)され……墓地に戻ったんですが……それからまた連絡が途絶えました」

「あー、フレッサーが生まれてて、死んだんだな」

「その通りです。さぼっていた運び屋も、様子を見に墓地に行ったまま連絡が途絶え、不審(ふしん)に思って騎士を派遣して、この事態が発覚しました」

「うわぁ……それで、どうやってフレッサーとか惨状(さんじょう)を打開したんだ?」

「第四軍の大隊が出動して、この壁の上から総攻撃を仕掛けてひとまずは鎮圧(ちんあつ)したそうです。あたしとレニーさんが来るまでずっと交代で仕事をしてくださってました」

「お疲れっした……」

 クロムは町の方を向いて、第四軍の団員達の顔を思い出し、労(ねぎら)いの言葉を呟く。

 それから、クロムは見た目が弱そうなルテナを見て思わず呟く。

「そんな奴相手にするんだろ。本当に大丈夫なのかよ」

「大丈夫な者を派遣しないでどうするんです?」

 ルテナが薄く微笑む。その様子は緊張感や覚悟の片鱗(へんりん)すら皆無だ。

 クロムは何か違和感を感じたが、それが分からず、一旦胸に仕舞い込む。

「ところで、そいつが埋まってるところとか……」

「言いませんよ。言ったら興味本位で見に行くでしょう。死にたいんなら教えますけど。質問は以上ですか? なら、さっさと仕事してください」

 苦虫(にがむし)を噛み潰したような顔で告げるルテナに、性格が把握されている事に驚きつつ、クロムは何万語と出てきそうな悪態(あくたい)を飲み込んでネオの元へ戻る。

 今聞いて来た事を話して聞かせると、ため息を吐いた。

「怠(なま)けたツケが自分達にもろに返って来たわけか」

「おかげでオレらまで巻き込まれちまったっつーことだな」

 自分達の事は無関係かつ自業自得で、きっと遠からず同じ運命だっただろうが、クロムは鼻を鳴らして今は亡き前墓守隊の所為にする。

 ネオがさらに思案に入ると、クロムは肩を落として長いため息を吐いた。なんだか考えるだけ不毛(ふもう)な気分になったのだ。

 その時だった。


 ちりん。


 腰に付けていた鈴が涼やかな音を奏でた。

 同時に背後から土を掘り返すような音に気付いた。

 ――鈴が鳴る時はライヘが出る時。

 鈴の意味を思い出し、掘り返す音も相まって、二人の背筋に悪寒(おかん)が走った。

 恐る恐る肩越しに振り返って見ると、ライヘが這(は)い出し、上半身が露出(ろしゅつ)していた。

 歳は四十代程だろうか、肉体は欠損してないようだが、人間とは思えない青銅色の、緑のカビにも見える肌をした男性が、二人を認めてゆっくり立ち上がる。その瞳は話に聞き知った通り白と黒が逆転し、文字通り白濁(はくだく)した虚(うつ)ろな瞳が二人を反射するのみ。

「ぅぉわ!」

 驚いて引きずっていた死体を離し、クロムが飛び退(すさ)った。その声に反応し、男性が振り返り長剣を顕現(けんげん)させる。

 ちりん、ちりん、ちりん。

 さらに鈴が死の音を鳴らす。周囲の三つの墓から腕が出て、体が現れ、年齢もバラバラな男性達が出てきた。合計四人。

 クロムの叫びにルテナが一瞥すると、遠くから声を張り上げた。

「あ、そうそう、周りから出てくる事になりますから、囲まれないように注意して戦ってくださいねー!」

「くださいねー、じゃねぇよ!」

 再度クロムが叫び、ネオも死体を離し、二人で並んでじりじりと下がる。

「落ちつけ。私達に敵わない相手などいない!」

「――おうっ!」

 狼狽(ろうばい)しかけていたクロムは叱咤(しった)を受けて気を持ち直し、手の中に光を凝縮(ぎょうしゅく)させる。

 顕現したのは自身の身長程もありそうな両刃の長剣だ。鍔(つば)の部分には金色の宝石が填(は)めこまれた無骨な剣だった。

「おおおおぉぉぉぉ!」

 その刃から電光が放たれ、轟音を響かせて長剣を持つライヘが感電して全身から煙を上げて倒れる。さらに、近づいて来た斧を持つライヘへ踏み込み、電光を纏った刃でボロボロの服ごと肩口から袈裟(けさ)懸(が)けに斬りつけた。

 さらにネオも続けてガイストを顕現させる。

 手の中で細長く光が伸びて顕現したのは、穂先の横に斧が取り付けられ、突く、薙(な)ぐ、斬る、という三つの要素を兼(か)ね備えたハルバードと呼ばれる槍だ。

「行くぞっ!」

 ハルバードから冷気が放出され、横薙ぎに払うと氷の錐(きり)が瞬時に作りだされて残った二人へ突き刺さり、同時に踏み込んだネオがハルバードを旋回(せんかい)させ、止めとばかりにまとめて切り裂いた。

 目の前のライヘが膝を折るのを見て、クロムは剣の腹で肩を叩き、眺めているルテナへ親指を下にして見せた。

「はっ! こんな仕事よゆ……!?」

 視界の端で膝を折ったはずのライヘがのそりと立ち上がり、片腕を上げるのが見え、反射的に剣を上げ、斧を受け止めた。

 ギィンッ!

 甲高い音をさせた瞬間、異様に重い衝撃に、両足が土にめり込み、膝を突きそうになる。鍔迫(つばぜ)り合(あ)いのその後ろでは、電撃を受けたはずのライヘが起き上がっていた。

「……っ! マジか……!?」

「クロム! ……ぬ!?」

 相棒の危機に声を上げたネオは、間近にいたライヘが氷の錐を刺したまま再び起き上がったのを見て絶句する。

 その時、レニーが親切に説明してくれていた事を思い出す。

 ライヘは無意識のうちにセーブしてる力が解除されている状態。

 頭部が弱点だから首を斬るか、打撃で粉砕するべき。

 そのどちらもすっかり忘れていた。

「しまった……! クロム! 頭を狙え!」

「お、おう!」

 レニーにも言われていた事を思い出し、クロムが渾身(こんしん)の力で斧を跳ねのけ、同時に蹴りを入れると、柔らかい土に足を取られて体が傾ぐ。長剣の重心もままならない。

「だぁぁ! くそ!」

 ルテナは失敗した瞬間をわざと狙って注意する。

「あ、墓地は何度も掘り起こされてるので、足場も柔らかくて最悪です。重心移動には注意してくださいね。今ので分かったと思いますが」

「てめぇ……! 言うのが遅せぇ!」

「ちなみに、頭以外に心臓も弱点ですよ。ガイストが原因ですから、ガイストを弾き飛ばすとか、腕とか狙うと効果的です。墓守の基本その一『使える物は全部使え』。というわけで、お手本を見せますねー」

 ルテナはのんびりと説明しつつ、近くに刺さっている棒の先端のランタンに火を灯した。

 ボワッと青白い火が灯る。

 その瞬間、四人のライヘが振り返り、まるで火に群(むら)がる蛾のように近づいていく。

 ルテナはそれを悠然と待ち受ける。

 最初に長剣のライヘが切りかかるが、その剣の腹にシャベルを添(そ)えて受け流した。その刃が斜めに逸れて、近づく別のライヘの頭を直撃する。さらにシャベルを返し、受け流したライヘの首を横の一閃で跳ね飛ばした。

 頭部を失った体は僅(わず)かな血しか出さず、二人分の死体が転がる。

 さらにナイフを振り上げて来たライヘの腕を掴んで足を掛け、その勢いのまま投げ飛ばし、踏みつけて近くにあった木製の墓標を引っこ抜いて胸に突き刺す。

 その間に、斧を振りかぶった男性が背後から迫るが、振り向きざまにシャベルで斧を受け止め、手首を捻って斧を地面に刺す。

 その斧の柄に沿ってシャベルを滑らせ、下段から首を狙って逆袈裟懸けに振るった。

 最後の一人の首が落ちるのを茫然と見ていた二人に、木製の墓標を引き抜いて元の位置に刺しながら暢気(のんき)に手を振る。

「こんな感じです。手近にある物も使っちゃって構いませんよ」

「……おい、そのランタンは?」

 クロムがゆらゆらと青白い火が揺れるランタンを示すと、ルテナが解説した。

「ああ、コレはですね、運び屋の必需品(ひつじゅひん)です。ライヘを惹きつける火というものがあって、それを灯す事が出来る『魔具』です。出向くのが遅くてライヘになっていたらコレで誘導するんです。ココでも、囲まれた場合とかに、味方が離れた所から灯して助けたりします」

 二人は互いに顔を見合わせる。

 そういえば、戦場にいた時は必ず墓守隊が駐留していた。気にはしてなかったが、彼らは敵を警戒しながら、味方の死体が並んでいるところを青い炎のランタンを下げ、行ったり来たりしていた。あれはライヘになった者がいないかの確認と、囮として引き付ける役割があったのか。

「…………それ先に言うべきことではないのか」

 ネオが指摘し、二人でジトッと半眼で睨むが、ルテナは飄々と笑いながらランタンの火を吹き消した。

「言ったでしょう、基本は運び屋の道具なんですよ。誘導なんて戦士のライヘの時ぐらいですからねぇ」

 言外(げんがい)に素人だと馬鹿にされていることに、二人の額に青筋が浮かぶ。

 すると、再び鈴が鳴り、また二人のライヘが出て来た。

「あ、ちょうどいいですね。やってみてください」

 ハッと我に返った二人は、武器を構え直し、武器を振り上げて迫る二人のライヘへ挑みかかり、見た事を念頭(ねんとう)に置いてガイストを避けつつ、頭や胸を狙って斬り伏せる。

 黙って見ていたルテナは、聞こえないように小さく呟いた。

「まぁ、一般ライヘが倒せるだけマシか……」

 容赦(ようしゃ)ない事を言いつつ、ルテナは戦士職側でもライヘが出ている事に気付いて、歩いて行きながら二人へ声を掛けた。

「そこの六人プラス新しい遺体二人分は埋めてください。こっちはこっちでやりますから。埋め直した頃には昼だと思うんで、終わったら昼食にしましょう」

「……マジかよ」

 二人が転がっている死体を見下ろすと、ルテナがさらに注意する。

「あ。そうそう、軍手してくださいねー、支給品で黒い手袋あったでしょう? ココってどうしても不衛生(ふえいせい)ですから、素手で握り続けると血豆(ちまめ)が出来て、潰(つぶ)れて、雑菌とかで大変な事になりますよ。あ、血が出たら、言ってください。塗り薬ありますんで」

「「…………」」

「あと、掘る穴はそんなに深くなくていいです。シャベルの柄に付いてる飾りの凹み部分ぐらいで」

 シャベルの見えるように上げて中央を指さす。

 様々なアドバイスを受け、さらに息一つ乱してない余裕な彼女を見て、疲労と悔しさを一緒に飲み込み、黙って手袋をはめる二人だった。

Q、ライヘの頭と体が別人のまま埋められたらどうなりますか?

A、考えてません。きっとおそらくたぶん、頭が土の中で動いて元々の体にくっつくかと。たぶん。


Q,、墓標を別の人が埋葬されたところに挿すミスがあったらどうなりますか?

A、死亡書類に遺体に書かれた数字が明記されているので、最終確認で間違ってなければ大丈夫です。墓標のミスは隊長に叱られます。


Q、どうして木曜投稿と書いてるのにいつもズレるんですか?

A、えー、今回は、寒くなって床にマットレスの直敷きが寒くなるだろうと思い、部屋の収納の問題もあって、ロフトベッドをネットでひたすら検索し、自分で組み立てる自信がなく、結局ニ〇リまで行ってサイズなどを確認し、ベッド本体・机・本棚・ハンガー掛けの四点セットの高額商品を購入しておりました。ネットで「あ、これいいかも」と思ってたやつの四倍高いってどういうことや!(でもなぜか後悔してない)。それで全く進んでない事に気付いたわけでして。

えー、というわけで、遅れてすみませんでした!!!!!!!!


以上、一人でQ&Aをやってみました。実際に質問されたわけじゃないです(笑)。

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