排除
週明け月曜日
査問委員会の日が来た。向陽電機本社前に、荒木は一人で立っていた。荒木は不安な表情で、スマートフォンを握り締めている
その時だった。
「荒木さん」
背後から声がし、振り返ると宮下がいた。
「どうしました?時間ですよ」
柔らかい笑顔を浮かべているが、目が冷たい。
「査問委員会へ来ていただきます。なお、本件は重要な機密保持上の問題がありますので、外部者との接触は控えていただきます。また、私物をすべて確認させてください」
宮下は表情を変えずに言い放った。
「外部者…って、何ですか」
荒木は震える声で、宮下に問う。
「前にも申し上げましたよ。社外の人間へ、社内情報を漏洩している可能性がありますので」
「『社外の人間』って、私たちのことかしら?」
宮下が振り向くと、工藤が立っていた。福寿と正木もいる。
「いや…これはこれは…」
宮下の目が、一瞬だけ細くなった。
「本人に対して、実質的な隔離措置を取っているようですが」
工藤が続ける。
「弁明補助の機会は作りましたか?記録は?第三者同席は?」
工藤がわざと矢継ぎ早に質問をかぶせた。宮下は笑みを崩さない。
「社内規程に基づく通常対応です」
「『通常』の定義を聞きたいところだけど…今日の査問委員会は、弁護士である私工藤と、特定社会保険労務士の福寿が同席させていただきます」
工藤が言うと、宮下は苦笑いを浮かべた。
「困りましたねぇ。部外者の同席はみとめておりませんので、どうぞお引き取りください」
宮下は嫌味ったらしくお辞儀をした。
「拒否されるなら、その理由を仰って下さい。密室性の高さ。証拠の残りづらさ。だから第三者が必要になるのは、お分かりですよね」
工藤が続ける。
「長時間聴取を行うつもりなら、こちらも対応を考えますよ」
宮下は沈黙している。工藤は宮下と距離を詰め、毅然と言い放った。
「宮下さん。これは、公平な調査ですか?」
福寿が言うと、宮下は一瞬目が揺らいだ。
「当然です。公平性を第一にしています」
「そうですか。それならば、尚更同席させていただきたいですね。荒木さんは、法的支援を受ける権利があります。あなた方が『公平な調査』と言うなら、代理人排除はむしろ得策ではないのでは?」
福寿がきっぱりと言った。
「まぁ、そこまで仰るなら仕方ありませんね。認めて差し上げましょう」
宮下は鼻で笑い、軽蔑した目で工藤と福寿を見た。
「正木君の同席は難しいから、近くで待機していて」
福寿が言うと、正木は場を離れた。




