表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/9

捏造

 翌日


 福寿事務所に、一人の女性が来訪していた。大学時代の友人で、弁護士の工藤淳子である。 


「向陽電機よね。ここ、一般的には『模範的ホワイト企業』とされているわ」


 工藤が資料をめくる。


「経産省表彰、厚労省の安全衛生優良企業、顧客満足度も高いです」


 正木が眉をひそめる。


「こういう会社は、体面を飾ることを第一に考えているの。だから内部の火種は、最初から『無かったこと』にされる。組織ぐるみで消しにかかるのよ」


 工藤は眼鏡を外しながら言った。


「荒木さんのケースも、その構造よね」

 

 福寿が続けた。


「直接的な違法行為が見えないようにされていて、証拠が残らない設計なのよ。タチが悪いわ」


 工藤が重苦しい話し方をした。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 その日の夜


 福寿のスマホに、荒木から短いメッセージが届いた。


[会社から、説明の面談が入りました。同席者は宮下総務課長のみです]


[社内情報を外部へ漏洩している疑いで、懲戒審査にかけられる可能性があるようです]

 

 続いて、二通目のメッセージが届く

 

[少し怖いです]

 

 福寿は画面を見つめたまま、しばらく動かなかった。そして短く返信する。 


[録音は可能な限り確保してください] 

 

[送信]

 

 正木が不安そうに聞く。


「『通報者が孤立する設計』が完成されているわね」


 工藤が静かに口を開く。    


「孤立する…設計ですか…」


 正木が訝しんだ。


「そして、その設計を作った側は、次の手も準備してるはず」


 福寿が静かに言う。


「次の手…ですか?」


 正木が聞く。


「荒木さんの『信用』を壊す手よ」


 工藤が目を細めた。


「そう。告発者を黙らせる一番安全な方法は、孤立させて、誰からも信用されないようにすることなのよ」




 福寿の言葉に、正木は呆然としていた。


「信用を壊すって…そんなこと、どうやって?」 


「一番簡単なのは、『通報者こそが問題アリ』という構図に作り替えること」 


 工藤が言うと、福寿がゆっくり頷いた。 

「例えば『社内情報漏洩』とかね」 


 工藤が言う。


「え!?どういうことですか…?」 


「例えば、外部に相談した事実がある。それだけで『情報漏洩の疑い』にはできるのよ。『疑い』で良いの」


 工藤の声は淡々としていた。


「それを『誇張』して、それらしい解釈を乗せれば、懲戒審査の材料には十分でしょ」


 工藤が続けた。


「さらに審査が始まれば、『調査中』を理由にして、外部との接触を物理的に断たせるわけ。そうすることで、さらに孤立化させられるのよ」


 福寿が言うと、工藤は二度頷いた。


「じゃあ荒木さんは…もう、会社の中で完全に悪者扱いにされる可能性が…」


「可能性の段階ではなくて、もう始まっていふと見るべきよ」 


 工藤は目を細め、強く言い切った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ