表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
UnChain  作者: 大垣礼緒
PR
18/20

■第三章:赤い反射

 ロゼリアへ続く地下通路は、いつになく赤かった。

 照明の色温度が変わったわけではない。

 壁に走る金属の継ぎ目、足元の水たまりは、油膜みたいに薄く広がって、赤を抱いたまま動かなかった。

「……なあ、これ」

 サムが足を止める。

「光の反射じゃ、ねぇよな?」


「うん……なんか、いやな感じ」

 つかさも眉を寄せる。

 蓮は顎に手を当て、その場の空気を嗅ぐように目を細めた。

「鉄の匂いが濃い。これは……」


 その先に、静止した車列があった。

 アイスブラストの無人装甲車が十数台。

 整然と並び、エンジンを止め、沈黙している。


「……攻めてきた?」

 結乃の声は震えていた。


 蓮が即座に否定するように首を振る。

「いや、撃ってきてない。車外の展開もゼロ……」

 センサーの小さな赤点灯が、濡れた床にぼんやり映り込んでいた。


 結乃は胸元を押さえた。

「やっぱり……報復だ……私が通訳した奇襲の仕返しで……」


 そのとき――

 ロゼリアのバックヤードにつながる扉が、重たい音を立てて開いた。


 白い蛍光灯の列。

 その奥から、担架が二つ、三つと押し出されてくる。


「っ……!」

 つかさが息を呑んだ。


 一台目のストレッチャーに横たわっていたのは、胸に、顔に、手足に厚く包帯を巻かれた男だった。

 掌底の使い手――新藤鷹虎。

 息は浅く、頬の色は蒼い。

 湊との死闘の傷が癒えぬまま、さらに何者かに叩き伏せられたのが一目でわかる。


「……おいおい、嘘だろ……」

 蓮が思わず呟いた。

「虎さんほどの人間が……誰にやられたんだ、こんな……」


 サムは言葉を失い、結乃は一歩後ずさる。

「ほ、報復どころか……これ……」


 その混乱の中、

 奥の通路から、急ぎ足で靴音が近づいてきた。


「場所空けぇ! 二番ベッド使うで!」


 キヨシだった。

 ジャケットを片手で肩に引っかけ、もう片方の手で負傷兵の容態を確認しながら、容赦ないテンポで指示を飛ばす。


「止血続けぇ! そっち心拍落ちてるやろ、はよ持ち上げて!」


 湊が駆け寄る。

「キヨシさん! 一体――」


「説明は後や!」

 キヨシは湊に返すより先に、周囲の混乱の全貌を一瞬で見切った。


 ロゼリア医療室前は地獄のようだった。

 アイスブラストの残った兵士が数名、疲弊しきった顔で担架を押している。

 東扇島医療派遣の面々も、止血パックを自分の腕に巻いたまま、

 他の負傷者を支えようとしてふらついている。

 結乃は膝を抱えそうなほど怯え、サムと蓮は状況の意味が掴めぬまま突っ立っていた。


 空気がざわめき、誰も全体を見れていない。


——その瞬間。


 キヨシは腹の底から声を放った。


「――注目ッ!!」


 壁までも震わせるような怒号だった。

 誰もがビクリと肩を跳ねさせ、動きを止める。


「今からお前らの指揮官は“俺”や!!ここは戦場と一緒や、迷う暇は一秒もあらへん!言うた配置に即つけ! 反論も質問も後回しや!」


 たったそれだけで、空気が変わった。

 散らばっていた視線が一点に集中し、息がそろう。


 キヨシはすぐさま手を突き出した。

「まず担架! そこ二台、医療室へ直行や! 通路塞いどる奴らどけぇ!」


 負傷兵の中でも軽傷の者たちが、条件反射のように動き始める。

 派遣医療班の一人が「こっち空いてます!」と叫び、ストレッチャーが滑るように進んだ。


「つかさ!」

 キヨシが振り向く。

「お前は医療室! 采女の補助につけ! 止血とバイタル確認優先や!」


「は、はいっ!」

 つかさは走りながら、自然と医療者の顔に戻っていく。


「サム!」

「お、おう!」


「芹沢のとこ行け! IDハックの予備電源交換と、車両の再起動チェックや!一刻も早く探知を切るぞ!」


「……了解、やってみる!」

 サムの瞳に焦りと決意が混じる。


「湊!」

「はい!」


「ハックが終わった車両から順に、ラフィーナ搬入口へ回送や!外で止まってる分が敵に見られたら居場所がバレてまう!けが人に任せるのも忍びないがお前の足なら全部捌ける!」


「任せてください!」


 湊は深く頷き、駆け出した。


 そしてキヨシは蓮へと顔を向ける。


「大杉、お前は――」


 結乃の震える肩越しに目をやり、静かに言葉を置く。


「結乃ちんのケアや。あの子はきっと現状を誤解してる。落ち着かせられるんはお前しかおらん」


「……わかった。任せろ」

 蓮は結乃のそばにしゃがみ込み、優しい声で呼びかける。


 ようやく、混乱の中に秩序が立ち上がり始めた。


 ストレッチャーが次々と医療室へ吸い込まれていく。

 つかさは采女の指示を受け取り、滲む汗を拭いもせず手袋を替えた。


「JCS三桁……血圧拾えません。ショックステージⅢ〜Ⅳ」

「パッキングで大方の止血は済んでるわ!つかさちゃん、傷口洗浄からの縫合に移る。輸血は直接輸血。この際やむを得ない。医療班の1人に適合する血液型の子がいる。ドナーを連れてくるから準備を」


「わかりました。生食準備完了。創部洗浄入ります」


 つかさは鋭い目で鷹虎の胸部を確認しながら、迷いなく器具を並べていく。


 結乃はその様子をただ見つめ、肩を震わせた。

「そんな……どうして……」


 蓮がそばに寄り添い、そっと声を落とす。

「報復なら、あいつらがこんなボロボロになる理由がねぇ。落ち着け。今は事実だけ見ろ」


 結乃は唇を噛んだが、蓮の言葉に揺らぎが生まれ始めていた。


 そのとき。


 無人装甲車の影から、一人の男がふらつきながら姿を現した。


 煤で黒ずんだコート。

 肩口には深い裂傷。

 片足を引きずり、呼吸は粗く、それでも目だけは獲物を捕らえる獣のように鋭かった。


「…………無血の鳥、加護なきは不自由なり」


 伊藤玄馬だった。


 蓮が目を見開く。

「伊藤……! お前、なぜここが」

 玄馬は乾いた笑いを漏らし、壁に片手をついた。

「ここに来れたのは――」


 ゆっくり蓮を見た。


「渋谷でお前に発信機をつけていたからだ。旧式のな」


「いつの間に……!」

 蓮が思わず声を荒げる。


「まさか役に立つとは、思わなかった」


 軽口のはずなのに、その声は震えていた。

 息をするだけで痛みが走っているのが見て取れる。


「俺はなんとでもなる。それより、キヨシさんと話をさせてくれ」


 赤い反射が、床に揺らいだ。

 誰も言葉が出なかった。


 玄馬はふらりと体勢を崩し、蓮が慌てて支える。

「おい!!」

「平気だ……痛覚度を超えれば快楽にも近し……だ」

 玄馬はかすれた声で笑ったが、目の奥は冴えていた。

「……キヨシさん。いるんだろ」


 キヨシが医療室から戻ってくる。

 額に汗を浮かべながらも、顔は鋼鉄のように冷静だった。


「伊藤くん。懐かしいが、それよりも無事かいな」

「無事……ではねぇけどな」

 玄馬は口元を歪め、重たく息を吐いた。

 笑ってるように見えて、そこには誇りの血の味が滲んでいた。


「その傷……どないしたんや」

 キヨシは歩み寄り、裂傷の深さとS.I.Vスーツの焼け跡を確認する。

 その手つきは鋭く、しかし痛む部分には触れないようにしていた。


「……襲われたんだよ」

 玄馬は壁に片手を預けたまま続ける。

「中南海と……ブラックデビルの混成部隊に」


 蓮が思わず声を荒げる。

「はァ!? あいつらが手ェ組むなんて有り得ねぇだろ!」


「俺もそう思ったよ」

 玄馬は苦笑したが、その瞳は薄氷より冷えていた。

「だが事実だ。第二軍曹隊が壊滅。生き残ったメンバーを抱え、俺らは撤退するしか……なかった」


結乃は口元を抑えながら小声でつぶやく。

「中南海……ブラックデビル……全部繋がる……」


「ああ、そこの姉ちゃんは知っての通りだろう。だが俺等はお前を恨んじゃいない。こうなることはそれより前に決まっていたんだ」

 静寂が落ち、玄馬は視線をキヨシに向けた。


「……キヨシさん」

 名前を呼ぶ声は、敵のものではなかった。

 男として、命を託す相手の声だった。


「頼む。虎さんの命を……助けてくれ」


 その瞬間、蓮も結乃も息を止めた。


 玄馬は続ける。


「敵対してた側なのはわかってる。殺し合ってきた関係だ。けど……今回だけは……力を貸してくれ」


 ゆっくりと、深く、腰を折った。


「……すまなかった。お前らに刃を向けることとなったことを……今は心から、謝る」


 キヨシは目を閉じ、ほんの数秒だけ沈黙した。

 遠く医療室の奥で、鷹虎の心電図がピッ、ピッ、と不安定な音を立てている。


 そしてキヨシは静かに息を吐き、玄馬の肩に手を置いた。


「――ええやろ。謝罪も、事情の説明も後でじっくり聞く。今は救える命から救うんがウチの流儀や。ただし、この状況が落ち着いたあかつきにはあんたらアイスブラストには説明義務があるで。後日うちの主要メンバーを踏まえ会議や。ええな?」


 玄馬の拳が震えた。

 それが怒りか、安堵か、誰にもわからなかった。


 ただ一つだけはっきりしていたことがある。


この瞬間、敵と味方の境界線が、血の上で揺らいだ。


 こうして怒涛の治療と後処理が始まり――

その混乱が落ち着くまでに、三日を要した。


 ロゼリアの地下入口を塞いでいたアイスブラストの車列は、湊とサムの手によってすべてラフィーナ搬入口の待機区画へ移された。

 通路に溜まっていた血痕は洗い流され、倒れていた器具も片づけられた。

 軽傷の兵士たちは、キヨシの指示でロゼリア内部の整備や警備に回され、最低限の共同作業ができる程度には空気が落ち着いた。


 しかし——

 鷹虎だけは、依然として目を覚まさなかった。

 采女とつかさの懸命な処置で命こそ繋がったものの、意識の深い底に沈んだままだ。

 そんな状態のまま、ロゼリア中央広場に、応急の“会議所”が設けられた。

 かき集められた折りたたみの長机。所々サビが浮き、足がガタつくパイプ椅子。

 照明が青白く揺れ、地上とは別世界の冷たい空気が漂っている。


 ——それでも、形にはなっていた。


 集まったのは、戦闘要員・技術班・医療班など、ロゼリアの主要メンバーほぼ全員。

 そしてアイスブラスト側からは、伊藤玄馬、そして鷹虎の代理として采女が席についた。


 二つの勢力が向かい合って腰を下ろすその場には、熱ではなく、乾いた“静電気”のような緊張が漂っていた。


 キヨシが前に立ち、片手で資料を叩く。


「すまんな。騒乱の中、みんな酷くお疲れやろ。せやけど状況を整理せな——

 この問題、後へ後へ回したらロゼリア自体が立ち行かんようになる」


 周囲のざわつきが、静まる。


「なんせこの人数や。全員が口々に喋り出したら収集つかへん。

 せやから今回は——“質問制”にする。こっちから聞く。

 それに対して順番に答えてもらうで」


 淡々としたキヨシの声に、アイスブラスト側もロゼリア側も黙って頷いた。


 キヨシは視線を玄馬と采女に向ける。


「まず最初の質問や。

 ——お前らがロゼリアに来た『本当の理由』を、説明してもらおか」


 その言葉が落ちた瞬間、空気がひりついた。

 敵として刃を向け合ってきた組織同士が、いま、同じ机を囲んでいる。


「今回ここへ来たのは、助けを求めるためだ。

 俺たちは、もう本拠地へ戻れねぇ。

 中南海とブラックデビルの連中に——完全に崩壊させられた」


 広場全体がざわりと揺れた。


 キヨシは軽く顎を引き、次の質問を放つ。


「ほな次や。

 ——ここへ逃げてきた人員は? 敵が紛れとる可能性もある。

 どういう構成や? 名前と立場、全部洗わせてもらうで」


 促され、采女が前に出る。


「重症のボス・新藤鷹虎。

 その秘書兼医師を務める私、采女志近。

 アイスブラスト戦闘教官であり上級士官——伊藤玄馬。

 生き残った玄馬の直属の部下が五名。

 そして……アイスブラストで保護していた、元東扇島医療派遣チームの六名。

 合計、十四名。全員の身元データと識別IDは提出済み。危険はありません」


 ——東扇島医療派遣チーム。


 その響きに、湊は反射的に手を挙げていた。


「っ……!その中に——結城渚の名前は!?」


 蓮が「私情を挟むな」と制止しようとしたが、

 キヨシは片手を上げて制して言う。


「……答えたってや。これは聞いとくべき質問や」


 采女はわずかに目を伏せた。


「……ないわ。残念だけど、渚さんは当時——

 『川崎に人はいる。助けて』

 私の横でアイスブラストにその救難無線だけを残して、東扇島の最深部に向かったの。みんなの事は頼みましたと一言残してね……」


 その言葉に、つかさもサムも思わず息を呑む。


 つかさは椅子をきしませて立ち上がった。


「待ってください、采女さん!当時の私たち東扇島医療派遣チームは……

 アイスブラストに追われて、浄化作戦に巻き込まれたはずです!

 どうしてアイスブラストに救難信号なんて送ったんですか!?」


 サムも続いて声を上げた。


「それに……!その救難無線——俺が拾ったのは数ヶ月前だ!

 何年も前の話じゃない!タイムラグがデカすぎる、どう考えてもおかしいだろ!」


 広場が一気にざわめき始める。


「まずサム、その件は芹沢と無線のログ解析を——」


 キヨシが言い終えるより早く、芹沢が手を上げて割って入った。


「……無理だな。サムの無線は百年前の港湾用の骨董品だ。ログなんて洒落た機能は付いてねぇ」


 芹沢は無線機を指で叩きながら続けた。


「ただし——一つだけ“説明がつく”ケースがある」


 全員が息をのむ。


「この無線、**VLF帯(超長波)**を使ってるんだよ。

 今の時代じゃほとんど廃れてるが、昔は港とか潜水艦通信で使われてた帯域だ。

 こいつはな……電離層や地下施設で“異常伝搬”を起こすことがある」


「異常伝搬……?」


「数年前の信号が、条件次第で再混信して飛んでくる。老朽化した送信設備ならなおさらだ。地下のコンクリに反響して、遅延して……“亡霊みてぇに”信号が蘇ることがある」


 芹沢は苦笑した。


「まあ、科学的には推測の域を出ないが……

 あの無線が拾ったのが仮に“渚さんの声”だったとしたら、

 古い送信施設が吐き出した過去信号だった可能性がある」


 キヨシが「なるほどなぁ」と唸った。


「ほな、サムの件はいったん据え置きや。

 次につかさちゃんの疑問やけど……

 ここは采女さん、頼めるやろか」

采女は、水を飲んで喉を整え、静かに口を開いた。


「……あの日、アイスブラストが私たちを襲ったのは覚えているわね?」


つかさが小さく頷く。


「ええ。黒いS.I.Vスーツ……あれは完全にアイスブラストのロゴでした。

 指揮官は最初に殺されて、私たちは散り散りに——」


采女はそこで、眉根を深く寄せる。


「——あの兵士たちは、アイスブラストじゃなかったの」


広場がざわめく。


「アイスブラストを名乗った別の部隊。これは鷹虎様の推測の域に過ぎないが、おそらく……“ひばり”よ」


その言葉に——結乃だけがビクリと反応する。

王やヨンヒが時々口にしていたコールサイン。“ひばり”。


采女は続ける。


「私たち東扇島医療派遣は、組織ごと嵌められた。本物のアイスブラストの殲滅作戦なんて最初から無かったのよ」


つかさが震える声で問う。


「じゃあ……じゃあ、先生を助けに来たのは——」


采女は静かに言う。


「鷹虎さんよ。殲滅作戦に加担する“ふり”をして、私たちを救い上げた」


つかさは思わず口を抑え、サムは目を見開く。


采女は淡々と告げる。


「医療班は本来50名いた。でも、逃げ延びたのは私を含め7名……いいえ——」


「つかさちゃんを含めたら……8名よ」


広場のざわめきが収まりかけたその時、結乃が小さく手を挙げた。


「……あの、ひとつだけ。その“ひばり”というのは……一体、何者なんでしょうか?」


声は震えていたが、まっすぐだった。


「私はしばらくブラックデビルと中南海の元で拘束されていました。

 通訳として働かされて……その中で、その名前を何度か耳にしました」


自分の不安をただ確かめるように、結乃は深く息を吸った。


「……どうか教えてください。その“ひばり”とは、誰なんですか?」


広場が静まり返る。


采女は結乃を見つめ、ひと呼吸おいてから、そっと首を振った。


「 “ひばり”は狡猾で、鋭くて……姿を表さない。

 誰も、完全には掴めていない存在なの。

 ……それに、その質問には答えられない」


その言い方は、明らかに“知っている側”のものだった。


湊が思わず立ち上がる。


「答えられないって……どういうことだよ!?アイスブラストの敵で東扇島の主犯格じゃないのかよ……!」


その肩を、隣の蓮が押さえる。


「落ち着け。これには理由があるんだ」


蓮の低い声が、広場の空気の温度を平熱に引き戻す。


険しい顔の玄馬が、ゆっくりと手を挙げた。


「“ひばり”ってのは、あくまで俺らが勝手に呼んでる通称だ。

 本当の名は……誰も口にできねぇ。

 口にする“許可”すら、与えられていない」


少し間を置き、玄馬は続けた。


「アイスブラストに限らねぇ。

 この国のAI統制の中枢にいて、

 現場じゃ“上”とか“声”とかそんな呼ばれ方しかしねぇ存在だ」


そこに蓮が割って入る。


「俺も組織にいた頃に何度か聞いた。

 幹部クラスや、各グループのトップクラスになると──

 “言語統制プログラム”がかかる。


 その名も、正体も、意図的に認識できないようにされてる。

 漏洩対策としては完璧だ」


玄馬が重ねる。


「つまり……

 一度でも政府や大企業に籍を置いた人間は、

 “ひばり”に触れようとするだけで命を落とす可能性がある。地雷持ちだ。やつの尾羽根なんざ……俺たちじゃ一生掴めねぇ」


広場に、重い沈黙が落ちた。


キヨシが手元の端末を閉じ、広場をぐるりと見渡した。


「……ほな、今出た疑問は以上やな。とりあえず今後は毎朝、襲撃に備えて強化訓練を行うで。さあ他に、聞きたいことあるやつはおるか?」


静寂が広がる。


誰も手を挙げない。

無理もなかった。


いくつもの謎が解けたはずなのに――

核心を前にすると、それ以上踏み込めない“壁”が立ちはだかる。

誰もが、その存在の輪郭に触れかけて、黙り込んでいた。


キヨシは小さく頷く。


「……よし。なら次に移るで」


芹沢が前へ出て、手にしたケースを開いた。

冷気のような緊張が再び広場を撫でる。


「アイスブラストの連中にも、旧ナノの投与が必要だ。

 あんたらの識別IDは、もう中央に筒抜けになっちまってるはずだ。

 まあ、この一帯はまだ“モヤ”がかかってる状態だから、細かいところまではバレちゃいねぇ。

 けど、ここにいる限り、いずれ限界が来る。追跡も制圧も受けるだろう。

 俺らは仲間を守らなきゃならない。……協力してくれるな?」


広場の空気が、再びざわめく寸前で止まる。


キヨシは静かに宣言した。


「……これで、本当に“こっち側”の仲間や。

 準備ができたら順番に来てもらうで」


アイスブラストの面々は互いに目を合わせ、

静かに頷き合った。


その瞬間、

“組織”と“組織”の境界が、

初めて完全に崩れ落ちた。


バタバタが続きますが今日も私は元気です……


いや、嘘です


胃腸風邪でダウンしてました


多少落ち着いてきたかなぁと思った矢先のこれ


トイレと寝床の往復に


ウォシュレットが欲しいと思いました


なんか腹が立ったので


ウォシュレットに関する論文を書いたんですよ


意外と女性の使用率って低いんですよね


まあそれはさておき


次週も土曜日更新予定です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ