モフモフなんだからねの巻
何と、老婆に扮していた黒き魔女の正体は、クレアにそっくりの少女だったのである。
いや、むしろクレアそのものと言っても過言ではない。
「バレてしまっては仕方がない。あたしはクレアから独り立ちした悪しき心……あたしが死ねば、そっちのクレアも死ぬのよ。どう? あたしを殺せる? 魔王ジャスティス」
「くぅ……何て卑怯な……」
「ジェ……イム……あたしはどうなってもいいから……そいつを……倒し……て」
瀕死に陥ったクレアは、ジャスティスの腕の中でそう言った。
「そんなこと出来るわけないでしょ……何故なら、そいつはクレアのことを……」
――スパッ――
ジャスティスの手刀が、黒き魔女を切りつける。
「黒き魔女よ。余計な戯れ言は……やめるんだな」
黒き魔女は、ジャスティスの手刀を喰らった頬から、血を流した。
それを指でなぞり、ペロリと舐めた。
「なるほど……戦う意志があるってことね。いいわ、掛かって来なさい。あたしが死んだらその女も死ぬだけ……」
「上等だ。いくら人間に心を許したとて、魔王としてのプライドがある。だが、一つだけ願いを聞いて欲しい」
「いいわ。言ってごらんなさい」
「すまない……。見ての通りクレアは虫の息だ。お前とのバトル中、死なれては困る」
「何が言いたい?」
「少しでいい……回復をしてあげたい」
これは、ジャスティス……いや、ジェイムの最後の賭けだった。
ジェイムの作戦は、こうだ。
復帰したクレアと協力し、黒き魔女……つまり悪しきクレアを封印するとう算段だ。
だが、上手くいくかどうかは、黒き魔女の返答による。
ジャスティスは息を飲み、黒き魔女の返答を待った。
「ジャスティス……何を考えている?」
「バトル中、突然お前に死なれても困るからな」
「なるほど、そういうことか。わかったわ。この薬草をクレアに与えて……」
「かたじけない」
ジャスティスは受け取った薬草をすりつぶし、クレアに与えた。
すると、傷口はみるみるふさがっていった。
と、同時にクレアに異変が起きた。
どんどん小さくなっていく体。
「ふまふま……」
猫耳バンドさえ効かない……れっきとしたハムスターになってしまった。
「貴様、我を騙したな?」
「お互い様だろ? そっちこそ、回復したクレアと良からぬことを考えていたのだろう? 浅知恵は寿命を縮めることくらい、魔王ならわかってもいいんだけどね」
「全てお見通しって訳か」
「そう言うこと。それにクレアは二人もいらないしね。あたしが本当のクレアに相応しいのよ」
「ならば、我一人で貴様を封印するのみよ」
ジャスティスは、ハムスターに戻ってしまったクレアを抱え、気を解放した。
生かさず、殺さず黒き魔女を封印するとこが出来るかどうかはわからない。
ただ、やらなくてはいけないことは明白だった。
「こっちも全力でいくよ」
「望むところだ」
睨み合う黒き魔女とジャスティス。
先手を取ったのは、黒き魔女だった。
無詠唱のまま、強力な魔法をジャスティスに撃ち込む。
ジャスティスはそれに耐えながら、前進しする。
「来るな、来るな――っ!」
黒き魔女は、ジャスティスの異常な行動に、恐怖を覚えた。




