まさかの事態の巻
黒き魔女は、少し動揺を見せたが、
「これは都合がいい」
と、言い放った。
さすがのクレアも、黒き魔女とジャスティスの二体相手では無理がある。
絶体絶命のピンチかと思われたその時、ジャスティスが重い口を開いた。
「クレアよ。我はようやく気付いた。自分の犯した過ちを……。沢山の民を奪った罪、許してくれとは言わないが、せめて加勢させてくれ」
かつて人々を恐怖に陥れたジャスティスだったが、クレアと行動を共にすることで善の意識が芽生えようとしていた。
「助かるわ。あたしに取って、ジェイムはジェイムだもん……別に、ひいきしてる訳じゃないんだからね。その辺、誤解しないでよね」
「ふぅ……よく喋る。では、クレアよ。改めて、宜しくな」
「こちらこそ」
時を越え、紡がれた絆……今、ベスタニャの王女と世界を恐怖に陥れた魔王が手を取り合う。
世界最強の共通の敵……それは目の前にいる、全てを狂わせた黒き魔女。
「なんだい、なんだい。私の邪魔をしようったって、そうはいかないよ。行け、我がしもべ達よ」
黒き魔女は、巨大なドラゴンを召喚した。
「真の姿を取り戻した我に、この程度……」
ジャスティスは、ドラゴンに飛び掛かり、強固な鱗を鋭い爪で引き裂く。
ドラゴンも負けじと、牙を向きジャスティスに反撃する。
しかし、ジャスティスはヒラリと身をかわし、更に追撃を仕掛ける。
「死ね――っ!」
ジャスティスの拳は、ドラゴンの牙を砕いた。
「ギャォォン」
ドラゴンは咆哮をあげ、灼熱の炎を撒き散らした。
「こんなもの避けるまでもない」
ジャスティスは、衝撃波でその炎をかき消した。
「背中がお留守よ」
クレアは、隙だらけのドラゴンを珊瑚の剣で引き裂いた。
――ドサッ――
ドラゴンは力なく、床に倒れこんだ。
「こんな感じかしらね。さぁ、今度はアンタの番よ。覚悟なさい」
「おのれ――っ! 許さん……許さんぞ――っ!」
黒き魔女は怒り狂い、多彩な魔法を連打した。
クレアとジャスティスは、冷静にその一つ一つをかわしていく。
「我々にそんなもの効かぬ」
「そうよ」
「フハハッ。それはどうかな?」
「うぐっ……」
突如、クレアの背後から襲い掛かる氷の柱。
クレアは避ける間もなく、まともにそれを食らった。
背中から、噴き出す血液。
「今度は、お前の方が背中がお留守だったようだな」
「クレア――っ!」
「ジェイム……あたし……」
「クレア、死ぬな! 目を開けろ」
ジャスティスはクレアを抱え上げ、黒き魔女に強烈な衝撃波を放った。
「貴様など、消えてなくなれ――っ!」
辺りに閃光が走り、ナップの住みかもろとも黒き魔女は吹き飛んだ。
だが、戦いはこれで終わらなかった。
瓦礫から這い出てくる黒き魔女。
何ともしぶとい輩である。
その身を覆っていたローブは朽ち果て、その正体を露にする。
そこに立っていたのは、クレアに瓜二つの女性の姿だった。




