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海底と言ったらお宝の巻

 クレアが大剣を両手に持つと、大剣は二つに別れ、珊瑚を象った剣になった。

両手に持った珊瑚の剣は、地上と何ら変わりのない切れ味を示す。

 八本あった触手はクレアの二刀流により、呆気なく一本にまで減少していた。


「ジェイム、今助けるからね……」


 ジェイムは自発的に呼吸をすることが出来なくなり、その命はもはや風前の灯。

クレアは素早く触手を振りほどき、その胸にジェイムを収め、酸素を供給出来るように水の魔法を施した。


「まずは、コイツの息の根を止めないとね」


 両手に持った珊瑚の剣が、大王イカの左右の両目に向かっていく。


――ビシュァァ――


 海中に、どす黒い大王イカの血が滲む。

大王イカは、墨を吐き出しながら身をくねらせ、遂にはもがくことを止めた。


「ふぅ……まったく。ビビらせないでよね」


 クレアが大王イカを仕留めると、ジェイムが目を覚ました。

それと同時に、海底へと辿り着く。


「クレア、助けに来てくれたのか? すまない。それはそうと、その格好は……」


「ジェイム、礼はいらないわ。それより見て!」


 クレアが指差す方向には、朽ち果てた船が鎮座していた。

さしずめ、幽霊船とでも言ったところだろうか?


「ちょっと行ってみない?」


「イヤと言っても、行くのだろう?」


「うふ。わかってんじゃん。お宝が眠ってるかも知れないしね」


 クレアは一気に浮上し、器用にマストに手を掛けると、滑りのある甲板に降り立った。


「さて、さて。いよいよ中に入るわよ」


 ドアノブに手を触れず、珊瑚の剣でドアを叩き割る。

乱暴だと思われるが、水圧が掛かった海底ではこれが一番の得策だ。


 船内はびっしりと生えた苔が光り、意外にも明るい。

足元に注意しながら奥へと進む。

 ここは厨房だろうか?

海水に晒され、錆び付いた鍋やフライパンが乱雑に浮遊している。


「お宝なんて、ないじゃねぇか」


「待って、この先が怪しいわ」


 一際異彩を放つ、強固な鉄の扉。

クレアは他のドアと同じ要領で、切り掛ける。


――キィン――


 しかし、その鉄の扉は、クレアの珊瑚の剣を受け付けなかった。


「ますます怪しいわ。ジェイム、離れて」


 クレアは両目に持った珊瑚の剣を鞘に収め、今度は魔法を詠唱する。


「はぁぁぁ……」


 絶対領域から見える、太股の割合が増える。

風と氷の魔法の融合……。

 鉄の扉はまるでガラスのように、意図も簡単に崩れ落ちた。


「クレア、何という魔力だ。更に腕を上げたのか?」


「そうなのかな? わかんないけどね」


 覚醒を遂げたと知らず、クレアはそう返した。

今回唱えた魔法も、かなり力を抑えたのだが、ジェイムに取っては恐怖を感じる程だった。

 奥へと進むとクレアの予想通り、きらびやかに光る金銀財宝……その中央にはここで、一生を終えたらしき高貴な姿をした骸骨。

恐らく、この人物が船長だったのであろう。

 クレアとジェイムはそんなことはお構いなしに、宝をかき集める。


「これを売れば、生活が楽になるな」


「あたしの城の宝に比べたら、大したことないけどね。さぁ、帰るわよ」


 クレアとジェイムは宝を携え、この部屋を出ようとした。


「何処へ行く?」


「ジェイム、何か言った?」


「いや、何も言っていないが」


「何処へ行くのだと、言っている」


 クレアとジェイムが振り向くと、 船長らしき、骸骨の目が怪しく光っていた。

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