壮絶なバトルの幕開けの巻
黒き魔女は紫のオーラを放つと、それを瀕死の曹操に纏わせた。
すると、曹操はスクッと背筋を伸ばし、赤い瞳を光らせた。
何処かで見たことのある光景……そう、信長と同じ状況である。
生きながらにして死人となった曹操は、操り人形の如くクレア達に剣を振り回す。
その度に、ビチャビチャと音を立て臓物を晒け出す。
徐々に朽ち果てていく肉体はやがて、骨と皮だけになっていった。
「ぬぉぉぉ」
曹操はもがき苦しみながらも、必死でクレア達に襲い掛かる。
クレアは攻撃せず、受け身の態勢だ。
こうなってしまっては、信長と同様に再生されてしまうだろうし、剣では倒すことが出来ないからだ。
ジェイムはこのシチュエーションを打破すべく、曹操の動きを封じに入った。
クレアに、貧乳の姿になってもらう為だ。
ジェイムは曹操の足元に食らい付くが、抜け落ちるように手応えがない。
異臭を伴う肉片は滑りがあり、ジェイムの牙を寄せ付けないのだ。
「クレア、何をしている! 早く……早くするんだ!」
またしても、クレアは名のある者を葬らなくてはならないことに、憤りを感じていた。
「早く……やらなきゃ、やられるんだ」
ジェイムがそう言うも、クレアはひたすらに攻撃を受け止め、貧乳の姿になろうとしなかった。
――ジーナ、貴女ならこんな時、どうする? ――
迷いの中、クレアは心の中でジーナに語り掛けた。
すると、ロザリオが怪しく光り、死人と化した曹操に向け一筋の光りが射し込んだ。
「こ、これは? ワシは今まで一体……」
その光りを浴びた曹操は、元の体を取り戻し我に返った。
「も、孟徳! 正気に戻ったか?」
「ジェイム……これはどういうことだ?」
「黒き魔女に死人として、洗脳されていたんだよ。それをクレアが救ってくれた」
「なんと、かたじけない……」
「礼は、こいつを倒した後よ!」
クレアはこの事態に驚くこともなく、再び黒き魔女に大剣を向けた。
「ここまで力をつけているとは……やむを得ん。全力で掛かってきな」
「言われなくたって、やってやるわよ」
黒き魔女は、氷の魔法を詠唱した。
氷の刃は何本にもなり、クレアに襲い掛かる。
「いや! はっ! それ!」
クレアは意図も簡単に氷の刃を叩き切り、攻撃に転じた。
「今度はこっちの番よ」
「バカな……あれほどの氷の刃を……」
怯む黒き魔女の懐に潜り込み、突き上げるように大剣を振り上げる。
黒き魔女は必死にかわそうとするが、素早さではクレアが勝っていた。
もはや、今までのクレアではない。
本人は気付いていないようだが、着々と覚醒の時は近付いていた。
手痛いダメージを喰らった黒き魔女は、またしても空へ戦線離脱を図ろうとする。
クレアは逃がしてなるものかと、空高く跳躍した。
だが、これがクレアに隙を作ってしまったのだ。
空中戦では、自由が効かない。
対する黒き魔女は、空中では分がある。
黒き魔女は迫り来るクレアに向かって、雷の魔法を放った。
「死ね――っ!」
「きゃぁぁぁ」
クレアは稲妻の柱に行く手を遮られ、甲板へと叩き付けられた。
幸い木の甲板がクッションになったお陰で助かったが、何万ボルトもの電圧はクレアの体を蝕んだ。
「クレア――っ! のぁぁ……」
慌てクレアのもとに駆け出すジェイムにも、雷が与えられた。
正に、絶体絶命のピンチである。
「手こずらせおって……孟徳よ、お前はどうする? 仲間になれば命だけは助けてやろう……」
一人残された曹操に、黒き魔女は問う。
曹操は剣を握り締め、瀕死の状態に陥ったクレアとジェイムを見つめる。
「ワシは……ワシは……」
ほんの僅かな時間だったが、曹操に取っては永遠と感じれる程、長く思えた。




