正論はどっち? の巻
クレアは、ジェイムを追おうとしなかった。
ここに来て二人の間に考え方に、違いが生じ亀裂が入ったのだろうか。
否。
クレア自身も、本当はわかっていたのだ。
こうするしかなかったと。
しかし、他に方法があったのかも知れない。
そう考えると、ジェイムにキツく当たるのは妥当なのだ。
「クレア、ジェイムを追わなくていいのかよ」
これまで隠れていたナップが、ひょっこり顔を出す。
更に続けてメルルも姿を現した。
クレアは、長政とお市の亡骸を弔いながら二人に言った。
「この世には、どうにもならないことがあるの……」
その瞳は、いつものクレアじゃなく、何処か寂しげな雰囲気を醸し出していた。
するとそれに対してメルルは、
「見損なったわ。クレアは、もっと話がわかる人だと思ってた。ジェイムだって、クレアのことを思って……」
「わかってる……そんなことわかってるわ。でも、だからと言って殺していいとは限らないわ」
「確かに、クレアの言うことは正論よ。でも……でもね。ジェイムの気持ちもわかってあげてよ。あたちはジェイムを追うわ。だって、仲間だもん」
メルルはそう言うと、ジェイムの背中を追って行った。
「いっちまったな……いいのかよ、クレア」
「あたし……間違ってるのかな……」
「間違ってない……とは言い切れないな。オイラはクレアの言い分も、ジェイムの言い分もわかる」
「仲間……か……」
クレアは長政とお市に祈りを捧げると、顔を上げ歩き出した。
「おい、クレア。待ってくれよ。一体、何処に行くんだよ」
「決まってるじゃない……黒き魔女を追うのよ。運命が間違ってなければ、きっとジェイムともまた巡り会える」
「仕方ないな……オイラが付き合ってやるよ」
クレアとナップは、黒き魔女を追って歩き出した。
◇◇◇◇◇◇
一方ジェイムはというと、行き場を失い途方に暮れていた。
そこへメルルが駆け付ける。
「はぁ……はぁ……やっと追い付いた」
「メルル、どうしてここへ?」
「あたちジェイムについて行く。あんなわからず屋まっぴらよ」
「悪いことは言わん。クレアの元へ戻るんだ。俺と居てもためにならん」
「イヤよ。もうついていくって決めたんだから」
ジェイムは苦笑いしながらも、本心は嬉しかった。
「勝手にしろ……ほら、行くぞ」
「うん」
ジェイムとメルルは、宛もなく先を目指した。
すると目の前に、空間の歪みらしきものが現れた。
「こ、これは何だ?」
「これは空間の歪みね。元の世界に帰れるかも。ジェイム、もしかしたら黒き魔女はここに逃げ込んだんじゃない?」
二人は考えるより先に、その歪みへと体を投げ出した。
◇◇◇◇◇◇
「ここは何処だ? ベスタニャとは違うようだが……」
「また、変なとこに来ちゃったみたい。ジェイムどうしよう」
「とにかく、情報を集めよう」
二人が訪れた場所……そこはかつて諸葛亮孔明が、風を呼んだ赤壁であった。
時を越え、国境を越え、再び血で血を洗う戦いが始まろうとしているのは言うまでもない。
戦国時代編はこれで終了です。
次回からは三國志編です。




