姉川での戦いの巻
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ここは姉川――浅井軍本陣。
同盟関係にあった織田家と浅井家は不仲になり、その対立は戦をも引き起こしていた。
「お市よ、そなただけでも生き延びてくれ」
そう述べる、この男の名は『浅井長政』――この戦を仕切る浅井軍の大将である。
「なりませぬ。長政様お一人を死なす訳にはいきません……」
そう返すのは長政の妻であり、敵軍の大将である『織田信長』の実の妹、お市である。
浅井軍は劣勢にあり、小谷城からの朝倉軍に運命は委ねられていた。
「お市、信長殿には申し訳ないが、朝倉家には恩がある……わかってくれ」
「長政様、市は長政様の妻です。例え、実の兄でも敵は敵……運命を共にします」
「お市……済まない」
長政はそう言うと鎧を纏い、槍を手にした。
戦場は血に染まり、多くの死者を出していた。
出来れば避けたいこの戦――しかし、織田軍は話し合いでわかる輩ではない。
長政は覚悟を決め、自軍の兵士達の亡骸を越え、織田軍本陣を目指した。
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「クレア、血だ。血の匂いがする……」
姉川に掛かる巨大な橋を前に、ジェイムは血の匂いを感じ取っていた。
嗅覚を狂わせるほどの、血の匂い――そして死臭。
ただならぬ戦の予感だ。
「ジェイム、あたし……もう人が死ぬのは見たくない」
クレアはトラウマのように、先の戦いを思い出していた。
魔王との戦いでも、数え切れない人々が命を落としたのだ。
「この戦いの根元は、黒き魔女の所為かも知れないね」
メルルの言うことは、強ち間違っていなかった。
前方に見える本陣――。
人間らしからぬ、例えるなら『魔王』とでも言える男が鎮座しながら不敵な笑みを浮かべ戦場を眺めている。
その姿は異常で、生気すら感じられない。
「アイツが、この戦を牛耳っているに違いない……」
ジェイムは本能的にその男が敵だと瞬時に判断し、我先にと戦場に雪崩れ込んだ。
空を引き裂くように、鋭い爪が敵を襲う。
生気のない兵士達は、煙のように消えていく。
「やはり、そうか……コイツら人間じゃない……幻影兵だ」
幻影兵――つまり魂を持たない、亡者の影。
一歩出遅れたクレアも、大剣を携え戦場に赴く。
「おりゃ――っ!」
大股を開き、巨乳を揺らしながらジェイムに負けじと大剣を振るう。
一騎当千――その言葉がピッタリ当てはまるほど、クレアの大剣は幻影兵を薙ぎ倒していった。
しかし、斬っても斬っても何処から幻影兵は沸き出て来た。
「キリがないわね。はぁ――っ!」
通常両手持ちの大剣を軽々と片手で持ち、弧を描くように切り裂く。
ジェイムも自慢の牙を活かし、クレアが仕留めそこなった幻影兵を片付ける。
気付けば、クレア達の周りだけ道が開けていた。
そこに覇気のある男が、葦毛の馬に股がり現れた。
「そなたらの武、感服いたした。某は浅井軍大将――浅井長政と申す。どうであろう、我々に手を貸しては頂けないであろうか?」
「私からもお願いします。申し遅れました。長政様の妻、市にございまする」
長政の後ろから顔を出した、お市という女――小柄なわりに強い意思を感じれる。
「あたしは、ベスタニャ王国の王女クレア。助太刀致しますわ」
「ベスタニャ王国? 聞いたことのない国であるな。まぁ、よい。助太刀、感謝致す。敵は織田信長……じきに援軍も参る。それまでの辛抱じゃ」
「援軍なんて、いらないわ」
そう言いながら、クレアは大剣を肩に抱えた。
こうしてクレアは、長政に賛同し共闘することを誓ったのであった。
敵本陣は目の前……クレアは息を深く吐いた。
「オイラは、ここに隠れてるぜ」
「あたちも~」
メルルとナップは、長政が騎乗する馬の尻尾にしがみついていた。




