表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
27/48

古き日本からの巻

 一見穏やかに見えるこの田園風景。

しかし、そこに似つかわしくない一行が舞い降りた。


「クレア、魔力はまだ戻らんのか? さすがに三人ともなると、背中が痛い……」


 ジェイムの言葉を冗談半分に受け取ったクレアは、


「人間になる方法を忘れちゃった」


と、豪語する。

これには温厚なジェイムもキレ、三人纏めて背中から振り落とした。


「痛いわね!」


「クレア、冗談を言っている場合ではない! 我々は空間追放を食らった人々を助け出し、黒き魔女を討伐する為にここまで来たのだぞ!」


「ジェイム、声がでかいよ」


 熱くなるジェイムをメルルが止める。

だが、時既に遅く、農作業をしていた農民がジェイムの声に気付き、近付いてくる。

クレア達は逃げる間もなく、その場に止まった。

 農民は不思議そうな目で、クレア達を見つめる。


「珍しい猫と、ネズミだべな。こっちさ来い」


 どうやら、この農民には精霊であるメルルとナップの姿は見えず、ハムスターのクレアとジェイムしか見えていないようだ。


「あたし人間だから!」


 自分がハムスターの状態だと言うのを忘れ、クレアは思わず喋ってしまった。


「ネ、ネズミが喋った……」


 農民は腰を抜かし、尻餅をついた。

ジェイムはもはやこれまでと、自らも口を開いた。


「驚かせて済まない。我々は、不思議な力で喋ることが出来るのだ。俺の名はジェイム。こっちは……」


「ベスタニャ王国の王女クレアよ」


 農民は頬をつねり、夢じゃないことを確認するとようやく立ち上がった。


「今まで生きて来て、こんなことは初めてだっぺよ。オラの名は田吾作(たごさく)、見ての通り農民だっぺよ」


 田吾作は半信半疑ながらも、クレア達に気さくに話掛けた。

どうやら敵ではないようだ。

 クレアは田吾作に敵意がないと確認すると、人間の姿を露にした。

田吾作には刺激が強すぎる、巨乳の方のクレアだ。


「ぶはぁ……」


 田吾作は再び尻餅をつき、噴水のように鼻血を撒き散らした。


「おめぇさん、本当に人間だったんだな。しかも乳がでかいお侍さんはオラ初めて見ただ」


 田吾作が驚く横で、メルルが『偽りの巨乳……本当は貧乳』と毒を吐く。


「メルル――っ!」


 クレアは、メルルに向かって拳を挙げる。

しかし、メルルの姿が見えない田吾作は、クレアが何をしてるのかわからなかった。

その姿を見て、ジェイムが詫びを入れる。


「済まない。気にしないでくれ。それはそうと田吾作、我々は黒き魔女と呼ばれる女を探している。心当たりはないか?」


「はて? 聞いたことあるような、ないような……」


「ちょっとアンタ思いだしなさいよ。何なら、サービスしてもいいわよ」


「ぶはぁ――っ!」


 再び田吾作は鮮血に染まる。


「ふしだらな姫様だっぺな。確かこの先の姉川(あねがわ)で、(いくさ)が行われてるでな。そこに異国の黒い服を着た女が、軍師になってるって聞いたことあるだ」


「この先にいるのね。ありがとう田吾作」


「待つだ。戦は遊びじゃねぇだよ」


「田吾作よ、心配するな。クレアは、人並外れた身体能力を持ち合わせているのだ」


 ジェイムはそう言うと、田吾作に礼をしながら背を向けた。


「待つだ!」


「まだ何かあるの? しつこいわね」


「その……何だ。オラにそのでっかい乳ば、揉ませてけろ!」


――ドフッ――


「行きましょう」


 クレアはスケベ心を抱いた田吾作の鳩尾(みぞおち)に重いパンチを浴びせると、姉川に向かって歩き出した。

 ジェイムは思った。

クレアだけは敵に回してはいけない、味方で良かったと。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ