恐るべき呪いの巻
◇◇◇◇◇◇
何もない無機質な空間……。
耳鳴りがしそうな程、無音の世界……。
ジェイムはそこで目覚めた。
「俺は……死んだのか? いや、違うな……確かにあの時の記憶がある。それに、背中に痛みが残っている」
ジェイムは今までのことを整理しながら、前足を地面に投げ出した。
石化した筈の体が、容易に動く。
五感をフルに研ぎ澄まし、状況を把握しようとするも、ここが何処だか、何故ここに身を置いているのかもわからない。
自問自答するジェイムに、青いネズミが腕にかじりつく。
ジェイムは堪らず、そのネズミを払い除けた。
「何だ、貴様は! 俺をペルシャ猫のジェイムと知っての愚行か?」
青いネズミはヒョイと体を起こし、ジェイムに言った。
「ゴメン、ゴメン。あまりにモフモフしてたもんだから。オイラ、水の精霊ナップってんだ。君も石にされたんだね?」
ジェイムはその聞き覚えのある名前に驚き、聞き返した。
「ナップ? お前、本当にナップなのか? クレアから話は聞いている」
ジェイムがそう言うと、今度はナップの方が驚き、
「クレアを知ってるの?」
と、返した。
ジェイムはこれまでの経緯を話し、毛繕いを始めた。
「なるほど……クレアは無事なんだね。とにかく、ここから脱出しないことには、元に戻れないよ。っと、その前にその怪我を直してあげるよ」
ナップは目を瞑り、キュア(回復魔法)を唱えた。
すると、ジェイムの背中の傷はみるみるふさがった。
「すまない……。では、ここを脱出するとしよう。背中に乗ってくれ」
「サンキュー」
ジェイムは背中にナップを乗せると、前へ歩き出した。
この先に何があるかは、わからない。
出口があるとも限らない。
しかし、僅かな可能性を信じ歩き出した。
◇◇◇◇◇◇
一方、精霊の泉を目指すクレアとメルルは、ある変化に気付いていた。
「クレア、見て見て――っ! 石化したジェイムが光ってるよ」
石化したジェイムは、クレアの腕の中で怪しく光輝いていた。
それを見たクレアは、
「ジェイムは生きてる。生きてるわ」
「うん」
クレアとメルルはその現象に希望を抱き、これまで以上に精霊の泉へと急いだ。
やがて見慣れたナップの住みかと、精霊の泉が姿を現した。
ナップの住みかにはあの黒き魔女は居らず、もぬけの殻だ。
クレアは胸を撫で下ろし、床に転がったナップを拾い上げた。
石化したナップは、ジェイムと同様に怪しく光輝いている。
「ナップも輝いてる……」
クレアがそう言うと、石化したナップとジェイムは共鳴するかのように、更に激しく光った。
その表情はまるで生きているかのように、穏やかだ。
クレアは床に二体並べると、優しく撫でハムスターに姿を変えた。
「クレア……何でハムスターになったの?」
「二人の呪いを解く方法を調べに、あたしのお城に行くのよ。人間の姿だと連れ戻されちゃうからね」
「なるほど~。クレアってば頭いい~」
「アンタが頭悪いだけよ。精霊のクセに……」
――グサッ――
クレアの言葉が、メルルの心を突き刺す。
「アンタはここで留守番しててね。すぐに戻ってくるから」
「は~い……」
メルルはクレアの言葉にショックを受け、しょんぼりと頷いた。




