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千年樹の奇跡の巻

 黒き魔女は不気味な笑みを浮かべると、体を宙に浮かせた。


「生意気な……これでも喰らいな」


 懐から取り出されたのは、直径五センチ程の小さな玉。

黒き魔女は強く念じると、それを地面に叩き付けた。

それと同時に、紫色の煙が辺りに立ち込める。


「ゲホッ……ゲホッ……何よ、コレ……」


 どうやらこれは煙幕だったようだ。

煙が消える頃には、黒き魔女の姿は、忽然と消えていた。


「もう……あと一歩だったのに……」


 クレアは、大剣を地面に突き刺しながらそう言った。

しかし、結果的に黒き魔女を追い払ったのだ。

大金星と言えよう。

 戦いを終えたクレアは、石になったジェイムに手を添えた。


「ジェイム……ごめんね」


 その大きな瞳から、大粒の涙が溢れた。

やがてその涙は頬を伝い、石化したジェイムに吸収されていく。

おとぎ話ならこれで呪いが解けるが、実際にはあり得ない話だ。


「クレア、千年樹の花の蜜をジェイムにかけたらどうかな?」


 メルルは宥めるように、そう述べた。

しかし、口に含まないと効果がないのは明らかだ。


メルルの言ったことは雲を掴むような話だが、それでも少しの可能性を信じてクレアは千年樹の蜜をジェイムに与えることにした。

 若干滑りのある千年樹の花の蜜は、石化したジェイムに流れていった。

しかし、五分待っても十分待っても、ジェイムに変化は起きなかった。


「やっぱり駄目みたい……」


 クレアはそう言いながら、自らも千年樹の花の蜜を口に含んだ。


「甘くて美味しい~。あ、あれ、あれ?」


「クレア……どうしたの?」


「体が……」


 そう話している途中で、クレアはハムスターの姿に戻っていった。


「呪いが解けるはずなのに……」


 メルルがガッカリした表情を見せると、クレアはまた人間の姿に戻った。


「あ、あれ? さっきと違う貧乳のクレアだ。しかも、何故裸?」


「メルル、貧乳って言わないでっていってるでしょ! 何かね、自由に姿を変えれるようになったみたい。えへへ」


「凄い、凄いよ」


「本当のあたしの姿だと魔法が使えて、おっぱいが大きい姿になると大剣が使えるみたい。そのぶん魔法は使えなくなるみたいだけどね。ハムスターの姿だって、楽勝よ」


「ニャハハ、やったね。クレア凄~い。でも、やっぱり貧乳の姿が本当のクレアなんだ~」


「うん……って何回も貧乳って言うな~」


 クレアとメルルは、久しぶりに心の底から笑った。


 やがて、緑の月は光を失い、千年夜は終わりを告げた。

クレアはジェイムを抱き抱え、明けていく空を見上げた。


「メルル、とりあえずここから脱出するよ」


「えっ、どうやって?」


「巨乳に変われば、こんな斜面、楽勝~、楽勝~」


 クレアはそう言うと巨乳に変身し、メルルとジェイムを抱え一気に斜面を駆け登った。

すり鉢状になったその中心部に、さっきまで見ていた千年樹が堂々と根を張らせている。

 クレア達は、後ろ髪引かれる思いでその場を去り、ナップがいた精霊の泉を目指すことにした。



 そして物語は、新たな局面を迎える。

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