殺戮の千年樹の巻
ジェイムはクレアに覆い被さるように、身を晒した。
閃光はジェイムを包み込み、鈍い音を奏でる。
――パキパキパキ――
爪先から石化は始まり、下半身はもはや大地と一体になっていた。
「ジェイム……何故、二度もあたしを……」
「ヘヘッ……何でだろうな……。でも、これだけは言える……クレア、お前と過ごした時間……悪くなかっ……た……」
ジェイムがそう言い添える頃には、耳の先まで石化していた。
完全に石になったジェイムは、凛と胸を張り今なおクレアを守るような態度を見せている。
「ジェイム、ジェイム――っ!」
クレアがそう叫ぶも、ジェイムからの返事はなく、大地の臍に響き渡ると儚く消えていった。
「許さない……許さないんだから――っ!」
クレアは怒り狂い、二本足で立ち上がる。
すると突然辺りは暗くなり、日中だと言うのに夜の帳が降りた。
「ま、まさか?」
黒き魔女は、何かに怯えるように自らの頬を撫でた。
「何なの、何なの? これってもしかして……」
メルルは慌てながら、再びクレアに近付く。
「メルル、何か知ってるの?」
「うんとね。古から伝わる古文書に、千年樹で交わる絆がありし時、奇跡を起こす千年夜がやって来るって確か書いてあったよ」
「千年夜?」
クレアがそう返すと、黒き魔女はこの場から離脱しようとしていた。
「あ、クレア。黒き魔女が逃げようとしてるよ」
「ちょっと待ちなさいよ」
「ひぃぃぃ……何てね。こうなりゃ、纏めて地獄行きにしてやるまで」
黒き魔女は魔方陣を描くと、人の何倍もの高さを持つゴーレムを召喚した。
「お前達の相手は、このゴーレムが承るよ。さぁ、行けゴーレムよ」
「ウゴッ――っ!」
大地を揺るがす程の巨体を震わせ、クレア達に忍び寄る。
「クレア、めっちゃマズイよ、ゴーレムのパワーは人間の二十倍って聞くよ。逃げようよ」
「メルル、アンタだけでも逃げなさい。あたしは逃げない……それに千年夜の奇跡を信じてみたいから」
「わかったよぉ、あたちも協力するよぉ。めんどいな~」
クレアは魔力を一気に高め、アクアをゴーレムに放った。
「ウゴッ」
ゴーレムは意図も簡単に、片手でアクアを弾き飛ばし尚も近付いて来る。
「ウゴッ――っ!」
――ドガッ――
ゴーレムは渾身の力を込め、大地を叩き割る。
「マジマジ――っ! あんなの喰らったら死んじゃうよ。クレア、やっぱ逃げようよ……って、クレア?」
千年夜に怪しく光る緑の月が、クレアを照らし続ける。
やがてクレアはその緑の光を吸収し、人の姿になった。
だが、いつもと様子が違う。
貧乳だった胸は張り出て、エメラルド色に輝く露出度の高い鎧を纏っていた。
更に、右手にはクレアの背丈ほどある大剣が握り締められている。
「もしかして、もしかして、これが奇跡? 人間のクレアってめっちゃ可愛いじゃん。でも、おっぱい見えそうでエロい」
「うふふ。色っぽい? メルル、こいつを片付けるから、少し下がってて」
クレアは大剣を両手に握り締めると、ゴーレムに向かって跳躍した。
「アンタなんか、あたしの敵じゃないし。えぇい!」
――ジャギン――
クレアは大剣を振り抜き、ゴーレムの左手を切り落とした。
「まだまだ――っ!」
攻撃の手を休めることなく、クレアは更に右手を切断した。
「どう? まだやる気?」
クレアが挑発にも似た言葉を発すると、ゴーレムはバランスを崩しながらも突進してきた。
恐らくのし掛かろうとしているのであろう。
しかしクレアは動じない。
やれやれと大剣を握り直し、ゴーレムを一刀両断した。
ゴーレムは断末魔を上げることなく、その場に崩れ落ちた。
「さぁ、次はアンタの番よ!」
クレアは剣先を黒き魔女に向け、そう言い放った。




