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あたし、負けないからの巻

 お頭は狙いを弾丸向け、今にも撃ちそうだ。


「やれるもんなら、やってみなさいよ」


 クレアは弾丸の手元から離れ、一か八かの賭けに出た。

それは、弾丸を救う為の処置だったのである。


「ネ、ネズミが喋った。さては猫耳バンドをつけているのね?」


 お頭が一瞬怯んだ隙に、クレアは更に弾丸から離れた。

やがて、銃口は弾丸からクレアに移り変わっていく。


「汚らわしい……ネズミ無勢が私に楯突くとは……いいでしょう。望み通り殺してあげましょう」


「ふん、キモいんだよ。オカマ野郎」


「なっ! 言ってはいけないことを……もう、許しません」


 お頭はトリガーを引き、マシンガンを放った。



――ブバババババッ――





「あ、あれ? あたし……生きてる」


 飛び散った薬莢と共に、血生臭ささが漂う。


――ドサッ――


 クレアを覆い被さるように、弾丸は地面に倒れた。


「だ、弾丸――っ! アンタ何してんのよ」


「へへっ……死ぬのは俺様一人でいい……」


「ちょっと……弾丸、死なないでよ」


「は……早く、ジェイムの何処に……行って……や……れ……かはっ」


「弾丸――っ! 死んじゃヤダよぉ。キュア(回復魔法)、キュア――っ!」


 クレアの回復の魔法を唱えるも、時既に遅く、弾丸は安らかな笑みを浮かべたまま死んでいった。


「おや、死んでしまったようですね。誰か、誰か――っ!」


 お頭の呼び掛けに門番が反応し、駆け付けた。


「お頭、何のようで?」


「この汚い死体を片付けなさい」


「こ、これは弾丸さん……」


「いいから、早く!」


「へ、へい」


 門番は紅に染まった弾丸に手を伸ばした。


「許せない……許せない……汚らわしいのはアンタの方よ。あたしがアンタを地獄に送ってあげるわ! 覚悟なさい。アクア――っ!」


 クレアは怒りが頂点に達し、全ての魔力を解放した。

水の魔法『アクア』は、うねりをあげ巨大な津波となりお頭を包みこんだ。


「うぎゃ――っ! い、息が出来ない……」


 凄まじい水圧がお頭を畳み掛け、その中心でお頭はもがき苦しむ。

更にクレアは魔力を高め、第二陣のアクアを放った。


「少しは目が覚めた?」


「た、助けてくれ。もう……二度と悪さはしないわ」


「神に誓える?」


「誓う……誓う」


 クレアはその言葉を信じ、魔力を徐々に解いていった。


「ふぅ……死ぬかと思った……貴様、よくも――っ! この大盗賊マッドマックス様をコケにしてくれたわね」


 お頭は、自らの名をマッドマックスだと名乗ると、再びマシンガンを手に取った。


「アンタ……どうしようもないグズね……その体でどうしようと言うの?」


「何のことだ? あ、あれ? あれ……」


 マッドマックスの体は縮み、やがて薄汚いネズミの姿になった。


「どうやら、アンタには魔法が掛かっていたようね。その薄汚い姿で、一生罪を償いなさい」


「うぐぅ……」


 マッドマックスは尻尾を巻いて、何処に消えていった。




 マッドマックスと名乗る盗賊のお頭の正体は、何と薄汚いネズミだったのである。

クレアは門番の手を借り、弾丸を手厚く葬り祈りを捧げると、ジェイムの向かった空を見上げた。


 その後、マッドマックスは崩壊し、門番の計らいでクレアは馬車を出してもらえることになった。

向かう先は、ゴッドブレス。

クレアは、色々な思いを胸に、唇を強く噛んだ。


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