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急げ! ジェイムの元への巻

◇◇◇◇◇◇




 一方、ジェイムはカジノの街ゴッドブレスに到着していた。

予定より早く到着した為、弾丸の舎弟は行き着けの酒場で一杯つけていた。

 ジェイムはというと、馬車の荷台で薄暗くなっていく空を眺めていた。

逃げようと思えば逃げれたのだが、もはやそんな気力もない程に衰弱しきっていたのである。


「あぁ……俺もとうとう死ぬのか…」


 ジェイムが気を失いそうな程、生死の狭間を彷徨っていたその瞬間、街は慌ただしく動き出した。


「火事だ――っ! 逃げろ」


 どうやら出火元は、弾丸の舎弟が一杯つけていた酒場からのようだ。

瞬く間に酒場は火の粉を上げ、どす黒い煙に包まれていった。


「助けてくれ――っ!」


 火柱が上がる中、助けを呼ぶ弾丸の舎弟の声がした。

野次馬達は、好き勝手に『アイツは運が悪かった』などと無責任なことをいい放つ。


「助けてやりたいのは山々だが、体が言うことを聞かない……」


 ジェイムはただただ野次馬と同様に、燃え盛る炎を見守るしかなかった。





◇◇◇◇◇◇





 一方、クレア達は鬼のような速さでゴッドブレスに向かっていた。

 馬車馬であるアルファジャスパーの馬力と、クレアの使用する魔法の融合が織り成す偉業である。

 通常一日近く掛かる道程を、僅か一時間程で駆け抜けた。


「クレアお嬢、何やらゴッドブレスが赤く燃えてますぜ」


 馬車を操る門番、この男、名前を『レッツ』と言う。

道中、意気投合し、クレアをお嬢と呼んでいた。


「レッツ、ただならぬ予感がするわ。急いで」


「あいあいさ――っ!」


 レッツは手綱を握り締め、アルファジャスパーに鞭を入れる。

ゴッドブレスに近付くにつれ、熱風が押し寄せた。


「レッツ、止めて。あたしが鎮火させてみせるわ」


「はいよ」


 レッツが馬車を止めると、クレアは飛び降りアクアの魔法を詠唱した。


「炎よ、怒りを鎮めよ。行け、全てを洗い流せ……アクア――っ!」


 クレアは魔力を解き放ち、燃え盛る炎を鎮火させた。


「ふぅ……これくらい楽勝でしょ」


「お嬢、さすがです」


 レッツがクレアに労いの言葉を描けると、鎮火した酒場から頼りない声が聞こえた。


「助けてくれ――っ!」


 その聞き覚えのある声に、レッツは反応した。


「ラッツ? ラッツなのか?」


「その声は、レッツ。助けてくれ――っ! 俺はここだ」


 辛うじて難を逃れた弾丸の舎弟『ラッツ』が、声を上げる。


「大丈夫か? ラッツ」


「何とか助かったぜ。ありがとよ、レッツ」


「礼を言うなら、クレアお嬢に言うんだな」


「クレアお嬢? 誰だ、そいつは?」


「そいつとは何よ! アンタなんか死ねば良かったのよ」


「いてぇぇ」


 クレアはラッツに毒を吐きながら、右足をかじった。


「ハムスターが喋りやがった……」


「猫耳バンドをしてるからな。それよりラッツ、ジェイムというペルシャ猫を知らないか?」


「ペルシャ猫? あぁ、確か馬車の荷台にいたな」


「ラッツ! そこに案内しなさいよ」


「へいへい。しかし、お前モフモフしてんな」


「お前じゃない。クレアよ」


「はい、クレア」


 かくしてラッツの災難を救ったクレア一行は、ジェイムの待つ馬車へと向うことになった。


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