潜入! マッドマックスの巻
「ここにジェイムが……」
立ちはだかるマッドマックスのアジトを前に、クレアはそう呟いた。
幸い盗賊達は街に出ていて、警備は手薄のようだ。
頼りない門番が気だるそうに、日向ぼっこしている。
「乗り込むのなんて、楽勝ね」
クレアは風を切り裂き疾風の如く……と、まではいかないが、極力持てる力を出し切りアジト内部への潜入を試みた。
アジト内部はひんやりとして、活動するには最適の温度である。
クレアが壁伝いに忍び足を見せると、奥から二人の男がやって来た。
一人は厳つい顔した男、もう一人はやたら趣味の悪い装飾をあしらったオカマ風の男。
クレアは物陰に隠れ、二人の様子を伺った。
「お頭、馬車は出発させましたぜ。勿論、あのペルシャ猫も」
「弾丸、もう動物はやめて下さいね。獣臭くてたまりません」
「しかし、いい値で取り引きできますぜ」
「お黙り! 私は金銀財宝とお金にしか興味はありません。弾丸、わかりましたね」
会話の一部始終を聞いていたクレアは、ここで初めてジェイムが売りに出されたことを知った。
「ジェイム……」
思わずクレアはその名を呼んだ。
勿論、猫耳バンドを着けている為、二人にもその声は届いた。
「何だ? 今の声は……」
「キャァ、弾丸、足元です。見てご覧なさい! ネズミが一匹紛れ込んでます」
弾丸が視線を下に向けるとそこには、白いモフモフしたハムスターがいた。
弾丸は全てを悟った。
このハムスターは、ジェイムが言っていたクレアだと。
「弾丸、その汚らわしいネズミを排除するのです。いいですね?」
「御意! 直ちに」
震え上がるクレアに、弾丸はそっと顔を近付け囁いた。
「お前、クレアだな」
「どうして、あたしの名前を?」
「シッ! 悪いようにはしねぇ。黙ってついて来い」
クレアは状況がいまいちわからなかったが、とりあえず弾丸の言うことを聞いた。
「お頭、コイツを外に逃がしてきます」
「わかったから、早くして頂戴」
弾丸は両手でクレアを救い上げると、アジトの外へと出た。
「ここまで来れば安心だな」
「お前は誰だ。何故、あたしを助ける?」
「実は……」
弾丸はこれまでの経緯をクレアに語った。
「……と言うことだ。すまないクレア」
「弾丸、アンタ最低ね」
「そう、怒るなよ……」
「べ、別に怒ってなんかないんだからねっ! これはあたしの、せ・い・か・く。それより、ジェイムは何処に売られていったの?」
「カジノの街『ゴッドブレス』だ。朝一番で行ったから、夜には着くだろう。早く行ってやるんだな」
「弾丸、アンタ厳つい顔していいとこあるね」
「くぅぅ。クレアは毒舌だな。一度、人間になった姿を拝みたかったぜ」
――ギィィィ――
弾丸とクレアがそんな会話をしていると、入り口のドアが重苦しく開いた。
「弾丸、何をしているのです。あっ! それはさっきのネズミ! 弾丸、私は排除しなさいと言った筈です」
「お頭……これは……その……」
「お黙り、お黙り――っ! あれほど獣臭いのが嫌だと言ったのがわからないのですね?」
お頭は背中からマシンガンを取り出し、弾丸に銃口を向けた。




