4話 ――模擬戦――
4話ああAa!
ガルフ先生の言葉に一同は騒然とした。
「だが安心しておけ。諦めるにはまだ早い。低ランクであろうと高ランクであろうと定期的に実力の成果を見せることはできる。簡単な話だ。努力次第でランクを上げられるということだ。」
周囲からボソボソと聞こえる。
「努力でランクがあるならここにいねぇよ.....」
「結局は才能なのかなぁ....」
多くの嘆きが聞こえてくる。確かに言いたいことは分かる。努力で確実に結果が出るとは思ってない。でも私は現に努力したお陰で大きく変われてる以上、やる価値は大いにある。
「ということで、今からアリーナへ行くぞ。模擬戦をやる。俺が直々に確かめてやろう。」
私たちはガルフの後へついていく。全員浮かない顔をしている。そりゃそうだ。引退しているものの王都では知らない者はいない老兵だからだ。
と、ついさっきシルヴィから教えてもらった。
こそこそと小声でシルヴィが話かけてくる。
「あの先生怖い.....ミィさんは怖くないんですか...?」
「平気平気。」
「本当にミィさんは凄いですね...なんでEランクなのか不思議...。」
シルヴィは慌てて口を塞ぐ。
「す、すみません....失礼でしたよね...」
「ううん。気にしないで。私も正直あんま納得はできてないけど、魔力が少ないから大きく足を引っ張っちゃったのかも。」
「魔力....」
シルヴィは悩んでいる素振りを見せ、私に質問してきた。
「でも実技試験はあの獄炎を使ったって噂があったんですけど...」
「あー....あれね。うん。炎であることには間違いないけど...」
「けど?」
「あーえと、やっぱ獄炎ってことにしといて。」
「あ、はい....分かりました....?」
なんとも腑に落ちていない顔をしている。
すると先頭を歩いていたガルフがこちらを振り向く。
「私語を慎め。遊びじゃないからな。」
「すみません」
「すみません....」
ガルフはすぐに前を向いて歩みを進める。
ここで話をするのは素直にやめようとシルヴィとアイコンタクトを取る。やっぱ怒られるのはいやだもんね。
一行が無言で歩いているとアリーナへ到着する。試験以来だが、改めて見るとやっぱりかなり大きい。Eランクであっても設備も普通に使えていて授業?も受けられる。他生徒の当たりが強いだけなのだろうか。あと墓場発言も気になる。
ガルフがこちらを振り向いて口を開く。
「今から俺と軽く一戦交わしてもらう。先陣を切りたい奴はいるか?いないなら俺が指名する。」
ゼロ。まぁ当然だろう。なにせ超強い有名人だしボコボコにされる未来しか見えないよね。
ただ、せっかく今の実力を知れるいい機会なんだし誰も挙げないなら私が手を挙げてみようか。
すると、横の人が手を挙げた。
「は...はい....!」
シルヴィ!?意外だった。ただ丁度いい。シルヴィの今の実力を知れる場面でもある。よく観察しておこう。
「さて、お前の名は何と言う?」
「シ、シルヴィ...グレイグ....です....!」
ガルフは名簿を見下ろす。
「シルヴィ・グレイグ....グレイグ..か。よし。なら今からルール説明を行う。お前らもよく聞いておけ!」
「魔道具や魔生武器と言った魔装具は使っても構わん。降参と宣言する、あるいは俺が続行不能と判断したら終了だ。特に難しいことはない。」
要するに普通にかかってこいと。なんとも単純で分かりやすい。
シルヴィが恐る恐る再度手を上げる
「なんだ?」
「あの...アーティファクトも大丈夫ですか....?」
「問題無い。やはり、お前はグレイグ家の貴族だったのだな。」
グレイグ家?貴族?シルヴィはそんな上の人間だったのか?でもまぁこんな学園に貴族の1人や2人以上いてもそうおかしくはないか。でも意外かも。
「貴族.....貴族じゃないです。」
あ、否定した。
そうしていると結界が構築される。
「そうか。まぁいい。シルヴィ・グレイグ。お前の好きなタイミングで始めろ。」
「は、はい....それじゃあ.............始め!」
ガルフは地を踏み込んだ。
しかし、速度はガルフが圧倒的。ガルフがシルヴィの顔面に向かって拳を突き出す。
「結晶防紗!」
薄い氷の壁が即座に作り上げられた。やはり氷の能力では使い手によるものの《中位魔法》の氷魔法ですら比較にならない程の性能をしている。
ゴスっと鈍い音が鳴った。氷壁に大きくダメージがあるもののガルフの拳はしっかりと止められていた。
「ほう....氷の能力か。能力持ちとは珍しい。だが油断はしないことだな!」
「は、はい!」
シルヴィは両手を上に掲げる。空中には冷気を帯びた氷の棘が無数に浮かび上がる。
「霜氷驟雨!!」
そして氷の棘は激しくガルフへ降り注いだ。
ガルフは最小限の動きで突撃してくる氷を見事に避けていた。更に氷を掴んでシルヴィに反撃もしていた。やはり老兵は動作1つ1つに余裕がある。
驟雨が止むとガルフは後へ跳んで距離を取ると詠掌をした。
「数で押すのもいいが、質が足りないな。」
そう言うと両手を地面につけた。
「崩地凄漣。」
アリーナの地面に亀裂が入ると地面が波打ち、土石流がシルヴィへ押し寄せる。
「....っ!」
明らかに全員は終わったと思った。
しかし、シルヴィは諦めずに詠掌をした。
祈るように両手を繋いで唱える。
「常冬境界!!!」
シルヴィの指輪が共鳴し、美しい空色に輝いた。シルヴィの周囲が氷に包まれる。迫ってきた土石流は常冬境界を境に全て凍てついた。周囲の時間が若干遅く感じる。そして先程までよりもアーティファクトのと共に発動した氷の力は出力が桁違いに跳ね上がっている。
「....!」
ガルフは目を見開いた。
「お前、本当にEランクか?アーティファクトがあるとしても中々のもんだ。」
「ありがとう....ございま....」
言葉が途絶え、膝から崩れ落ちる。魔力の消耗が激しいのだろう。すやすやと寝息を立てている。猛者相手によくやったものだと感心した。
ガルフはシルヴィを抱え、観客席へ運んだ。
「シルヴィ・グレイグに拍手!」
私は迷わず拍手をした。それに乗じて拍手が増えていった。
ただ同じEランクの生徒がここまで奮闘したことに感化されたのか、怯えていた生徒も自ずと参戦するようになっていた。
気がつけば私の番が回ってきた。
「名は何と言う?」
「ミミリィ・テネブルンです。」
ガルフは名前を確認して名簿を置く。
「よし、ルールは変わらん。お前の好きなタイミングで来るといい。最善を尽くせよ。」
「はい。...........始め!」
私とガルフは一斉に動き、拳同士が衝突する。
「っ!?」
ガルフは一瞬驚いたような表情を浮かべた。
拳と拳が噛み合った瞬間、世界から一瞬だけ音が消えた。 次の刹那、ゴガァァァァン!!と鼓膜を震わせたのは地鳴りのような轟音。攻撃の余波が周囲の地面を粉砕していく。
一度距離を取って体勢を整える。
「Eランクとは到底思えんな。」
「ありがとうございます。」
ガルフは魔法陣を構築し、巨大な岩を創り上げていく。私はすかさず、回路を遮断して強制解除を行う。
魔法陣が砕け散った。
「魔法回路の破壊か?難しく実用性が無いと思われていたが。」
やはり教師であっても驚くものかと、再認識する。
「そうですね。どれだけ早く読み取れるかが鍵となるので。」
「そうか。続きを始めよう。」
すると、次は単発魔法を無数に生成し始めた。なるほど。途中で魔法を解除できるとはいえど、数が多ければ全ては解除できない。
ガルフは手を下げた。
「迅土礫。」
高速で弾丸のように多くの瓦礫が飛んできた。数で攻めるつもりだりろうか。発動者本人は既に動いている。
地面に指を突っ込み、持ち上げて少し大きめの壁にする。無理矢理作った壁で瓦礫を全て防ぐ。
「脳筋かお前!」
大きなハンマーを持って突っ込んでくる。
ガルフはハンマーを叩きつけるように下ろしてきた。私は拳を握り、前に突き出してハンマーを砕く。ガルフは想定済みだと言わんばかりに右腕に岩でガントレットを構築しだした。
殴るつもりだろうか。完成する前にスカートを抑えながら素早く蹴りを入れて吹き飛ばす。
「うおっ!」
壁に衝突する寸前で体勢を立て直していた。しかし、ガルフの表情には余裕が見られない。
「凄いことは十分分かった。正直お前に勝てそうにはない。最後に、俺が技を放つ。避けるでも壊すでも好きにやってくれ。お前が立っていれば、勝ちでいい。」
「分かりました。準備はできています。」
ガルフは距離を取ってから唱えは始める。
「大地の底に眠る古き盟友よ
すると周囲に茶色っぽい粒子が漂う。
「傲慢なる敵に、揺るぎなき世界の重みを知らしめよ。目覚めよ精霊王、その一歩で万物を塵と帰せ!」
今まで放たれた魔法とは遥かに違う。精霊の力を借りて行う魔法だ。この人は本気か。
岩々が次第に竜の形を成していく。
「「「地律竜崩!!」」」
岩の竜が飛来してくる。
あれを殴ったら手が少しピリッときそう。殴る変わりに、虚空に手を伸ばして月華を取り出す。鞘から引き抜き、白銀の刃が一閃する。振り払った風圧で斬撃が生じ、地律竜崩を一撃で破壊する。
「.....まさか本当に壊すとはな....」
ガルフは苦笑いをしていた。周囲は固まっていた。
「それに刀もどこから....剣裁きも只者ではない.....お前は疑問しか思いつかない本当に妙な奴だな。」
「あろがとうございます。」
模擬戦が終えた後、校内紹介でもするらしい。
私たちはガルフへ後からついていく。すれ違う上のランクの生徒からは明らかに嫌そうな顔をされたりひそひそと話したりしていた。
シルヴィは少し俯いている。
「シーちゃん?大丈夫?やっぱ辛い?」
シルヴィは顔を上げてぶんぶんと首を横に振る
「いえ!気にしてませんので!」
「そっか。にしても最後に撃ったあの技凄かったよ。」
それを聞いた彼女は嬉しそうに反応した。
「そうですか?!凄かった......凄かった.....!ありがとうございます!」
「じゃあ今日の放課後からでも鍛える?」
「お願いします!」
即答だった。
校内紹介も終わり、ホームルームを済ませる。今日の授業は終わりとのこと。席を立ち上がってシルヴィを呼ぶ。
すると割り込むように、ピーンポーンパーンポーン♪と間延びした放送の音が鳴った。
「Eランクのミミリィ・テネブルンさん。校長室へ来てください。」
最後まで見てくれてありがとう!定番すぎてつまらないかもしれない.....
↓↓
獄炎
炎
結晶防紗
霜氷驟雨
崩地凄漣
常冬境界
迅土礫
地律竜崩




