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18歳、今日からダンジョン探索者になります  作者: lala


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属性変化・雷

日間ローファンタジーのランキングに入ってとても嬉しいので、今日は18時に追加で投稿します。



【魔力属性変化!?】

【しかも雷かよ】

【お前それ、今取れるやつじゃないだろ】

【何引いてんだこいつ】


 大河がスキル名を口にすると、コメントの流れが一気に速くなった。画面を追っていた指が止まり、次々と重なる反応に少しだけ眉を上げる。


「……そんなにいいんですか、これ」


【いいなんてもんじゃない】

【今のTAIGAにはめちゃくちゃ相性いい】

【属性変化持ちがこのレベルで出てくるのか】

【雷は特に身体強化で強いぞ】


「身体強化?」


 大河はそのコメントを見て、スキルの説明へ視線を戻した。書かれているのは、自身の魔力を雷属性へ変化させるという基本的な効果だけだ。身体強化に使えばどうなるかまでは、どこにも載っていない。


【全身に循環させる魔力を雷に変える】

【身体強化に属性を乗せる感じ】

【雷だと速さがかなり上がる】

【今使ってる全身強化と組み合わせられるぞ】


「……それ、絶対強いやつじゃないですか」


【だから騒いでるんだよ】

【ようやく分かったか】

【ただでさえ速いのに】

【まず止まったまま試せよ】


 大河は周囲へ目を向けた。前方の曲がり角にも、入口へ戻る道にも魔物の姿はない。四体のコボルトを倒した場所から少し離れ、足元に障害物がないことを確かめる。


「じゃあ、ちょっとやってみます」


 胸の奥へ意識を向け、魔力を全身へ巡らせる。慣れた流れが身体を包み、淡いオーラが浮かび上がった。そこから、新しく得たスキルを発動する。


 循環する魔力の感触が変わった。


 身体の表面で、ぱちりと小さな音が鳴る。大河が腕へ目を向けると、オーラの中を細い光が走った。肩から腕へ、腰から脚へ。短いスパークが次々と弾け、身体を包む光の中に雷が混ざっていく。


「……おお」


 大河は思わず自分の腕を持ち上げた。指を開いて握り直すだけでも、いつもの全身強化とは感覚が違う。動こうと思ってから身体がついてくるまでが、妙に軽かった。


【出た!】

【スパーク走ってる】

【全身強化・雷だ】

【見た目からもう強い】

【初手でちゃんと循環できてるのもおかしいんだよな】


「これ、すごいな……」


 大河は腕を下ろし、前方へ視線を向けた。何もない道を確かめてから、軽く地面を蹴る。


 景色が予想より速く流れた。


「おっ――」


 慌てて歩幅を変え、足を踏ん張る。止まった場所は、普段ならもう一歩踏み込んでから届く距離だった。振り返ると、ドローンが遅れてこちらへ飛んできていた。


【速っ】

【今軽く踏んだだけだよな?】

【カメラ置いていったぞ】

【本人もびっくりしてて草】


「……今、そんなに力入れてないんですけど」


 大河は足元を見下ろし、もう一度、元いた場所へ目を向けた。速くなるとは聞いた。それでも、自分で動いてみると想像していた以上に違う。


 今度は移動する距離を決め、先ほどより弱く踏み込んだ。途中で止まり、横へ動き、身体の向きを変える。足を運ぶたびにスパークが走り、いつもの動作が短い時間で繋がっていった。


「……これはいいな」


【顔が完全に喜んでる】

【分かりやすいやつ】

【そりゃ自分がこれだけ速くなったら楽しいだろ】

【いきなり全力で壁に突っ込むなよ】


「そこまで馬鹿じゃないですって」


 言い返しながら、大河はさらに数歩動いた。速くなった身体に合わせて、踏み込む強さと止まる位置を確かめる。まだ普段と同じ感覚では動けないが、繰り返すたびに距離が掴めてきた。


 最後に《マジックソード》を構え、軽く振る。腕の動きも速い。剣を戻すところまで一度に繋げると、自然と笑みが深くなった。


「早く戦ってみたいですね、これ」


【出た】

【もう待ちきれなくなってる】

【戦闘狂に渡しちゃいけないスキルだった】

【いや相性は最高だろ】


 大河はコメントを見て笑い、雷属性への変化を解いた。オーラからスパークが消え、身体の感覚がいつもの全身強化へ戻る。その差を確かめてから、再び奥へ歩き出した。


            *


 次のコボルトたちは、一階層の奥にいた。


 前方の道が少し広くなった場所に、三体が立っている。盾持ちが一体、槍持ちが二体。大河を見つけると、先ほどの集団と同じように前衛と後衛へ分かれた。


「ちょうどいいな」


【またそれ】

【比較にはいい相手だな】

【さっきの戦い覚えてるうちに試せる】


 《鑑定》で三体の情報を確認する。先ほどの四体と、大きな差はない。大河は《マジックソード》へ魔力を流し、全身を巡る魔力を雷属性へ変えた。


 身体を包むオーラにスパークが走る。剣の魔力刃はいつもと同じまま、大河は盾持ちの動きを見据えた。


 前衛が盾を構えて近づき、その背後から二本の槍が向けられる。大河は正面へ踏み込む動きを見せ、盾が持ち上がるのを確かめてから横へ地面を蹴った。


 コボルトがこちらへ向き直ろうとする。その動きが、間に合わなかった。


 大河はすでに盾の外側へ回っていた。剣を振り抜き、前衛の脇腹を斬る。後ろの槍持ちが慌てて穂先を向けるのを見て、大河は追撃せずに離れた。


「……回れる」


 前の戦闘では、回り込む間も相手の位置を気にしなければならなかった。今は、隊列がこちらを向くまでの間に攻撃が届く。大河はその差を確かめながら、もう一度構えを取った。


【今の動き速すぎだろ】

【盾が追いついてない】

【さっきまで横から槍飛んできてたのに】

【もう使い方掴み始めてる】


 傷を負った盾持ちが後退した。槍持ちの一体がその横へ出て、大河へ穂先を向ける。大河はすぐには踏み込まず、相手が突いてくるのを待った。


 槍が伸びる。


 大河は横へかわし、引き戻される前に柄の内側へ入った。斬撃がコボルトの胸を裂き、残る槍持ちがこちらへ向き直る。大河は倒れる身体から離れ、もう一本の槍も外した。


 速いからといって、何も見ずに動けるわけではない。次の攻撃を確かめ、止まる場所を選ぶ。それさえできれば、今まで届かなかった位置へ足が届いた。


 盾持ちが再び前へ出ようとしたところへ、大河が踏み込む。傷を庇って傾いた身体へ剣を振り、二体目を倒す。最後の槍持ちも距離を保てず、穂先を弾かれたところから懐へ入られた。


 魔力刃が胴を斬り、三体目が地面へ崩れた。


 大河は剣を下ろさず周囲を確認したあと、ゆっくり息を吐いた。三体の配置を見直し、自分が動いた経路を頭の中で辿る。


「……全然違うな」


【そりゃそうなる】

【さっきよりずっと楽だったな】

【相手が三体なの抜きにしても速い】

【これでまだEランクなのかよ】


「踏み込めるところが増えましたね。前なら槍が戻ってきてたのに、今はその前に入れる」


 大河は雷属性への変化を解いた。身体の周りで弾けていた光が消える。魔石を回収するために膝をついたところで、別のコメントが目に入った。


【その剣にも雷流せるんじゃね?】

【マジックソードならいけそう】

【身体に使えてるなら剣も試してみたら】


「……剣?」


 大河は黒い刀身へ目を落とした。今の戦闘では、剣へ流す魔力は変えていない。全身強化の速さを確かめることばかり考えていた。


「それもできるのか」


【自分の魔力を変えるスキルだからな】

【流す先を剣にするだけ】

【こいつまだ強くなる気か】


「それは強くなりたいですよ」


 大河は笑いながら魔石を回収し、立ち上がった。周りに魔物がいないことを確かめ、剣へ流している魔力を雷属性へ変える。


 半透明の刃の中に、細い光が走った。


 刀身に沿ってスパークが弾ける。大河が軽く剣を動かすと、短い雷光が刃の外側を伝った。身体に使った時とは違い、手元の武器が変わったことで、その効果を間近に見ることができた。


「……これ、格好いいな」


【分かる】

【雷の剣はずるい】

【嬉しそうで草】

【見た目だけじゃないぞ】


「試したくなるじゃないですか、こんなの」


 大河は剣を眺めたあと、ダンジョンの奥へ視線を向けた。まだ一階層。新しい力を使ってみたい気持ちはあるが、ここだけで時間を使い切るわけにもいかない。


 剣の雷を解き、先へ進む。ほどなくして下り階段を見つけると、大河はスマートフォンを取り出した。


「じゃあ、二階層に行きます。剣の方は次の戦闘で試しますね」


【了解】

【今日はずっと検証配信になりそう】

【初Eと新スキルが同時に来たからな】

【ちゃんと周りも見ろよ】


「見てますって」


 大河はそう返しながら階段へ足をかけた。手にした剣へ目を落とすと、また少し口元が緩む。


 全身へ使うだけで、あれほど違った。


 今度は、この剣へ流したらどうなるのか。二階層へ下りていく大河の足取りは、先ほどよりも軽かった。



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