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2話 「撮り鉄 その1」

氷川龍之介。68歳。ただの年金で生活している普通の爺さんだ。...訂正しよう。普通の爺さんじゃない。ある日、2人の高校生に駅前で暴行を加えられカツアゲされている高齢者を目撃する。氷川はその2人の高校生に自ら制裁を加え、高齢者に財布を取り返すことに成功する。しかし、氷川の首元には謎の入れ墨が。一体、この男。何者なのか。

ここ東京には多くの学生が通学に電車を利用する。早朝はいつもサラリーマンと学生で駅が埋め尽くされている。しかし一つだけ全然人がいない駅が存在する。昔から人気はなかったらしいのだが、最近ここの駅で暴行事件が起きたという噂が起き、さらに人が来ることは無くなった。それ以降、この駅は無人駅と呼ばれるようになった。それをいいことに、無人駅を利用する学生やサラリーマンも少数だが存在するらしい。

氷川龍之介、68歳。この男もそのうちの1人だった。よくこの静かな駅を利用し、街に行くことが多かった。ある日、氷川はいつも通り、無人駅に向かっていた。ホームに向かうといつもなら氷川1人か、サラリーマンと少数の学生がいるのだが今日は違った。いつもより人が多かったのだ。サラリーマンと学生が数人。そして何やら中学生ぐらいの男の子が10人ぐらいで集まってなにやらソワソワしていた。

(珍しいな...)

氷川はそう思っていた。

まもなくして、踏切が閉まるカンカンカンという音が聞こえた。もうすぐ電車が来るのだろう。

その時だった。

「来るぞ!!!!」

「◯◯系や!!!!」

「場所取れ場所取れ!!!」

ホームが突然騒がしくなった。さきほどの中学生グループたちがホームの前に一斉に集まり、大声出しながらカメラを構え始めた。もちろん駅員も注意した。

「危ないので黄色い線の内側まで下がってください!!」

しかし中学生たち。誰1人として聞く耳を持たない。

その中には周囲のサラリーマンや学生を押したり、通行の邪魔をする者までいた。

そのすぐ近くには、金髪の女子高生がいた。すごく派手な見た目。いわゆる、ギャルというやつだろう。ここの駅を利用するなんて珍しい。

「え...」金髪ギャルが困惑していた。

電車が近づいてくる。撮影の構図に彼女が入りそうになると、中学生たちは声を荒げ言った。

「どけよ!!!!」

「邪魔だろ!!!!」

「写り込むだろ!!!!」

金髪ギャルは驚き、困った表情で一歩下がった。

「いや、あたし普通に電車乗るだけなんだけど...」

その時、カメラを持って走り回る中学生に押されてしまい、転びそうになる。

「あぶなっっ!!..」

その瞬間、ガシッと誰かが手を伸ばし支えてくれた。

氷川が間一髪で彼女を支えたのだ。

「..あ、ありがとうございます...」

ギャルが静かに言った。

氷川は黙って撮影に夢中で周囲が見えていない中学生に声をかける。

「...駅のホームは周りの人たちも使うんだ。押したり、大声出したりするのはダメだ。」

氷川は低い声で冷徹な目で睨みつけながら言った。

しかし、実際の彼の脳内は...

(...この言い方なら優しいだろ。相手は中学生だ。このくらいでいいだろ。...昨日の高校生2人はやりすぎたからな。こんくらいでいいはずだ...)

流石の氷川でも昨日の高校生2人の粛清はやりすぎたと思っているらしい。しかし、氷川が優しく注意したのだが、中学生たちから帰ってきた言葉は、

「うるせぇ老害」

「撮影の邪魔すんなクソジジイ」

....落ち着け、氷川。冷静になれ。相手は中学生だ。手を挙げてはいけない。と冷静になろうとする氷川。

「写真を撮るのは自由だ。電車を撮るのもすごくいい趣味だと思う。だけどな、人に迷惑をかけるのは別だ。」

と、なんとか怒りを抑え注意した氷川。

すると、ちょうど駅員もこちらは駆けつけてきて対応してくれた。

「ご協力ありがとうございます。...皆さん!安全のため下がってください!」

と駅員が氷川に感謝を告げ、再び注意喚起をする。駅員が来たことで状況は一変。現場を見ていた周りの人たちも「危ないわよ」や「離れろ離れろ!」と声を上げるようになった。鉄オタたちは居心地が悪くなったのか、しぶしぶ黄色い線の内側に戻った。

電車は無事にホームに到着した。

無事騒ぎは収まり、氷川が電車に乗る。すると、ちょうど氷川が乗ったところにあの金髪のギャルがいた。

ギャルは氷川を見ると笑いながら、

「さっきは本当に助かりました...」

と言った。

「礼には及ばない。見過ごせなかっただけだ。」

と氷川は言い離れようとするが、ギャルは続けて言った。

「正直、見た目で勝手に怖い人かなぁって思ってました。ごめんなさい」

氷川は、ほんの一瞬動きが止まった。動揺してしまった。そのまま、無言で去ることにした氷川。あっ、と声が聞こえた。ギャルが手を伸ばして氷川を呼び止めようとしていた。おそらくまだお礼が言い足りないのだろう。しかし、だんだん人混みが多くなってくる。ギャルはそのまま人混みに呑まれ、氷川を見つけられなくなった。

---------------

その頃、先ほどの駅のホームにて鉄オタたちは話し合っていた。

「さっきの、ジジイのせいでいい写真撮れんかったわ。まじで許せないんだが。」

「ネットに晒して仲間呼ぶわ。あいつ一回分からせないとダメだわw」

「ぜったいに詫びさせてやるからな...覚悟しとけよ。偉そうなクソジジイが。」









1話はちょっと過激すぎたので、抑えめになります。ご安心してお読みください。そして誤字があったら報告お願いします。

次回は 3話 「撮り鉄 その2」

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