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「金色の瞳」

第9話です。


今回は詰め込みたいことが多く、少しごちゃごちゃしているかもしれませんが、物語にとって大切な回になっています。


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

その日から。


フィラの毎日は大きく変わった。


◆


午前は――


ラルフの授業。


◆


「この世界には、大きく分けて二つの種が存在します」


静かな声で語られる。


「人間と、魔族です」


◆


机に向かいながら、フィラは真剣に耳を傾ける。


◆


「しかし、かつては――」


ラルフは一度言葉を区切る。


「両者は共に生きていました」


◆


語られるのは、遥か昔の話。


◆


邪神の出現。


世界の危機。


◆


それに対抗するため――


人間の神は“勇者”に。


魔族の神は“英雄”に。


それぞれ力を与えた。


◆


「そして、彼らは共に戦い――」


◆


邪神を、地下へと封じた。


◆


だが。


◆


「邪神は最後に、呪いを遺しました」


◆


――互いを拒絶せよ。


◆


その言葉と共に。


大陸を二分する巨大な森が生まれた。


◆


「アゼル大陸は、こうして分断されたのです」


◆


フィラは息を呑む。


◆


「さらにその森からは、今もなお魔獣が生まれ続けています」


◆


「……」


◆


「本来、人間と魔族は」


ラルフの声は静かだ。


「互いに協力し、魔獣に対抗するはずでした」


◆


だが――


時は流れた。


◆


「人間の側では、争いが絶えず」


「国が増え、欲が生まれ」


◆


「やがて、森を越え――」


◆


「魔族の領土すら奪おうとするようになりました」


◆


フィラの手が、ぎゅっと握られる。


◆


「一方で魔族もまた、複数の国に分かれましたが」


ラルフは続ける。


◆


「ただ一つ」


◆


「誓いを守り続ける一族がいます」


◆


「それが――」


◆


「オズワルド様の一族です」


◆


「……っ」


思わず顔を上げる。


◆


「英雄の血を引き」


「森を監視し続け」


「人間の侵攻を食い止める」


◆


「その役目を、代々背負っているのです」


◆


胸が、強く打たれる。


◆


(……大公様……)


◆


「そして、ライオ殿もまた――」


ラルフが静かに言う。


◆


「人間との戦で、家族を失っています」


◆


「……」


◆


「ご両親も」


「そして、弟君も」


◆


フィラの視界が揺れる。


◆


(……そんな……)


◆


ぽろり、と涙が落ちた。


◆


◆


午後。


◆


「さて、今度は魔法じゃな」


ローグが言う。


◆


「この世界には六つの魔法元素がある」


◆


火、水、風、地、光、闇。


◆


「感じてみい」


◆


言われた通りに、意識を向ける。


◆


――熱。


――流れ。


――揺らぎ。


◆


「……できた……」


◆


「ほう」


ローグが目を細める。


◆


次々と。


一つずつ。


◆


フィラは、難なく魔法を扱っていく。


◆


「すごいです……フィラ様……!」


ツェリが嬉しそうに声を上げる。


◆


だが――


ローグは、黙っていた。


◆


(……これは……)


◆


ほんのわずかに、眉をひそめる。


◆


◆


その後も。


フィラは変わらず、手伝いを続けた。


◆


治療院。


薬作り。


◆


ライオは、相変わらずだった。


◆


薬も受け取らない。


目も合わせない。


◆


それでも。


フィラは何も言わない。


◆


(……しかたない……)


◆


ただ、できることをする。


◆


その姿を見て。


◆


少しずつ。


周囲の視線が、変わっていく。


◆


◆


――そして。


◆


それを、遠くから見つめる影。


◆


オズワルドだった。


◆


(……)


◆


小さく、息を吐く。


◆


胸の奥に――


今まで感じたことのない感情が芽生えていた。


◆


温かく。


穏やかなもの。


◆


だが同時に――


◆


「……っ」


胸を押さえる。


◆


鋭い痛み。


◆


呪いが、反応していた。


◆


◆


その夜。


◆


フィラはいつものように、執務室を訪れた。


◆


「……大公様……」


◆


扉を開けた、その瞬間。


◆


「……っ!?」


◆


目に入った光景に、息を呑む。


◆


オズワルドが――


倒れていた。


◆


「……大公様!!」


駆け寄る。


◆


だが――


「……来るな……!」


◆


突き放される。


◆


「……ツェリ……連れて行け……」


苦しげな声。


◆


「い、いやです……!」


フィラは首を振る。


◆


「……離れろ……!」


◆


それでも。


フィラは動かなかった。


◆


「……助けたい……」


◆


震える声。


◆


「……大公様が……」


涙が溢れる。


◆


「……苦しんでるの……いや……」


◆


手を伸ばす。


◆


「……薬……それとも……魔法……」


◆


だが。


◆


「……頼む……から……出て行け……」


絞り出すような声。


◆


「……っ」


◆


胸が、締め付けられる。


◆


(……いや……)


◆


(……たすけたい……)


◆


(……この人を……)


◆


強く、強く願った――その瞬間。


◆


光が、溢れた。


◆


眩い光。


◆


フィラの身体から放たれたそれは――


◆


オズワルドを、包み込む。


◆


「……っ」


◆


苦しみが。


ゆっくりと消えていく。


◆


「……これは……」


◆


オズワルドが、目を見開く。


◆


フィラを見る。


◆


その瞳は――


◆


空色から、金色へと変わっていた。


◆


「……」


◆


やがて。


光が、収まる。


◆


「……大公様……」


◆


フィラが、ふらりと揺れる。


◆


「……よかった……」


◆


安堵の笑み。


◆


そのまま――


力が抜ける。


◆


「……フィラ!」


◆


咄嗟に、その身体を抱き止める。


◆


小さな身体は、ぐったりとしていた。


◆


「……」


◆


腕の中の温もりを、確かめるように。


◆


オズワルドは、強く抱きしめた。

第9話をお読みいただきありがとうございます。


いかがでしたでしょうか?

今回の内容、うまく伝えられていれば嬉しいです。


フィラにとっても物語にとっても、大きく動き出す回になりました。

ここからさらに展開が加速していきますので、引き続き見守っていただけたら幸いです。

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