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「その力の意味」

第10話です。


ここから少しずつ、フィラの力や立場について明らかになっていきます。

物語にとって大きな転機となる回です。


今回も楽しんでいただけたら嬉しいです。

意識が、浮かぶ。


◆


重たい。


身体が、動かない。


◆


「……フィラ様……」


遠くで、誰かの声がした。


◆


(……だれ……?)


◆


ゆっくりと、まぶたを開く。


◆


見慣れた天井。


◆


「……ここ……」


◆


「……よかった……!」


◆


すぐ傍で、ツェリが涙ぐんでいた。


◆


「……ツェリ……?」


かすれた声。


◆


「お目覚めになられて……本当に……」


◆


状況が、すぐには飲み込めない。


◆


「……わたし……」


◆


記憶が、ゆっくりと戻る。


◆


――光。


――苦しむオズワルド。


◆


「……大公様……!」


◆


がばりと起き上がろうとして――


「……無理をするな」


低い声が、それを止めた。


◆


振り向く。


◆


そこにいたのは――


オズワルドだった。


◆


「……!」


◆


その姿を見た瞬間。


胸の奥が、強く締め付けられる。


◆


「……よかった……」


◆


ぽろりと涙がこぼれる。


◆


「……ごめんなさい……」


◆


「……何がだ」


◆


「……わたし……」


震える声。


◆


「……へんなこと……したかも……」


◆


◆


「……五日だ」


◆


「……え……?」


◆


「お前が眠っていた時間だ」


◆


「……!」


目を見開く。


◆


「……そんなに……?」


◆


「……ああ」


◆


「……」


◆


「……無事だ」


短く、そう続ける。


◆


フィラを、見下ろす。


◆


「……お前が助けた」


◆


「……!」


◆


胸が、強く鳴る。


◆


「……ほんとうに……?」


◆


「ああ」


◆


嘘はない。


そう思える声だった。


◆


「……よかった……」


◆


安堵に、力が抜ける。


◆


それからしばらくの間。


フィラの身体は、思うように動かなかった。


◆


「フィラ様、少しずつで大丈夫ですよ」


ツェリが優しく世話をしてくれる。


◆


食事を運び。


身体を起こし。


眠りにつくまで、そばにいてくれる。


◆


そして――


「……起きているか」


◆


一日に何度も。


オズワルドが顔を出した。


◆


「……大公様……」


◆


短い言葉を交わすだけ。


それでも。


◆


(……よかった……)


◆


あの夜のように、苦しむ姿はもうない。


それだけで、胸がいっぱいになる。


◆


◆


さらに数日が経ち――


ようやく身体が動くようになったある日。


◆


フィラは、オズワルドに抱き上げられていた。


◆


「……だいじょうぶか」


「……はい……」


◆


そのまま運ばれた先は――


執務室。


◆


中にはすでに。


ラース、ラルフ、ローグ、ツェリ。


そして――


ライオの姿もあった。


◆


(……ライオさん……)


◆


ぴり、と張り詰めた空気。


◆


フィラは、思わずオズワルドの服を掴む。


◆


「……」


◆


そのまま席に着くと。


オズワルドは、静かにローグへ視線を向けた。


◆


「……話せ」


◆


「うむ」


◆


ローグが一歩前に出る。


◆


「まず――」


◆


一呼吸置いて、告げる。


◆


「この娘は、六属性すべてを扱える」


◆


「……っ」


◆


その場の空気が、一瞬で変わる。


◆


「地、水、火、風、闇、そして光」


◆


「……すべてじゃ」


◆


ラースも、ラルフも。


ツェリですら、息を呑んだ。


◆


ただ一人――


オズワルドだけが、無言でフィラを見ている。


◆


「もちろん、それだけでも十分に異質じゃ」


◆


ローグは続ける。


◆


「だが、この娘は違う」


◆


「……」


◆


「どの属性も、同じように使いこなす」


◆


◆


視線が、一斉にフィラへ向く。


◆


「……っ」


◆


怖くなって。


フィラは、オズワルドにしがみついた。


◆


「……おかしい……こと……ですか……?」


◆


震える声。


◆


その頭に、そっと手が置かれる。


◆


「……珍しいだけだ」


◆


オズワルドの低い声。


◆


「全属性を扱える者は少ない」


◆


「……」


◆


「さらに、向き不向きなく扱えるとなれば――」


◆


わずかに言葉を区切る。


◆


「……天才と呼んで差し支えない」


◆


◆


「……てんさい……」


◆


小さく呟く。


◆


◆


「だが」


◆


ローグが、言葉を継いだ。


◆


「今回、閣下を救った力で……理由がはっきりした」


◆


◆


「……理由……?」


◆


◆


「……あれは“聖魔法”じゃ」


◆


◆


「……!」


◆


◆


「この世で、それを扱えるのは――」


◆


◆


「“聖女”のみ」


◆


◆


「……せい……じょ……?」


◆


フィラは首を傾げる。


◆


◆


ローグは、静かに続けた。


◆


「この世には時折――」


◆


「創造神の加護を受けた存在が現れる」


◆


「それが“聖女”じゃ」


◆


◆


「……」


◆


◆


「そしてな」


◆


その声が、わずかに低くなる。


◆


「“聖女”が現れる時――」


◆


◆


「この世界には、災いが訪れる兆しでもある」


◆


◆


「……っ」


◆


フィラの手が、ぎゅっと握られる。


◆


◆


「……わたし……が……?」


◆


◆


小さな声が、震えた。


◆


◆


部屋の空気が、さらに重くなる。


◆


◆


その中で――


◆


オズワルドだけが。


◆


静かに、フィラの頭を撫でていた。

第10話をお読みいただきありがとうございます。


フィラの力や、その意味について少しずつ明らかになってきました。

戸惑いや不安の中でも前に進もうとする姿を、これからも大切に描いていきたいと思っています。


ここから物語もさらに動いていきますので、引き続き見守っていただけたら嬉しいです。

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