「偽りの王国」
皆様こんにちは♪
やっと梅雨らしく雨の日が続くようになってきましたね
ですが、蒸し暑い日があったり、急に肌寒くなったりと気温差も激しいので、どうかお身体にはお気をつけください。
私も体調と相談しながら、無理のない範囲で更新を続けていけたらと思っています
それでは本編をお楽しみいただければ嬉しいです♪
王宮最奥。
玉座の間へ続く大広間。
フィラ達がその扉を開いた瞬間。
そこに広がる光景に誰もが息を呑んだ。
豪奢な装飾。
煌びやかなシャンデリア。
並べられた豪華な料理。
そして。
玉座に腰掛ける一人の少女。
「美優……」
フィラの声が漏れる。
美優はゆっくりと顔を上げた。
その頭には王冠。
純白のドレスには宝石が散りばめられている。
まるで王国の女王だった。
「あら」
美優が笑う。
「生きてたんだ?」
まるで久しぶりに会った知人へ向けるような口調。
そして立ち上がる。
「見て」
ドレスの裾を摘まむ。
くるりと回る。
「素敵でしょう?」
王冠が光を反射する。
「私、やっと手に入れたの」
満足そうな笑み。
「お姉ちゃんより上になれたのよ」
その姿を見ていたフィラは何も言えなかった。
ただ。
強烈な違和感だけが胸を締め付ける。
玉座の両脇。
そこには王と王妃が立っていた。
そして。
その少し下。
王太子。
高位貴族達。
全員が美優へ恍惚とした視線を向けている。
「ミユ様は素晴らしい」
王太子が笑う。
「王国を救うお方だ」
王が頷く。
「我らの希望」
王妃も微笑む。
「全てはミユ様のために」
高位貴族達も口々に称賛する。
その目は虚ろだった。
感情がない。
なのに幸せそうに笑っている。
異様だった。
「何だこれは……」
サイラスが唇を噛む。
その時だった。
フィラの身体を淡い光が包んだ。
聖女の力。
真実を見抜く瞳。
王を見る。
王妃を見る。
そして。
フィラの顔色が変わった。
「……嘘」
小さな声。
「フィラ?」
ヴァルドが眉を寄せる。
フィラは王と王妃を見つめたまま呟いた。
「この人達……」
広間が静まる。
「生きてない」
その言葉に。
最初に反応したのはサイラスだった。
「何だって……?」
王太子達は何の反応も示さない。
ただ美優を見つめ続けている。
だがサイラスだけは違った。
顔色が変わる。
脳裏に過る。
数年前。
伯父。
伯母。
幼い頃から優しくしてくれた二人。
だが。
ある時から変わった。
以前のように会えなくなった。
王宮へ呼ばれなくなった。
王国の空気も変わった。
貴族達も変わった。
王の政策も。
王妃の言葉も。
少しずつ。
少しずつ。
「まさか……」
サイラスの声が震える。
「伯父上達が変わり始めたのは……」
数年前。
王国がおかしくなり始めた時期と重なる。
「まさかあの頃から……」
フィラは首を振った。
「いつからかは分からない」
「でも」
真っ直ぐ王と王妃を見る。
「今ここにいるのは生きている人じゃない」
沈黙。
重い沈黙。
そして。
フィラは目を閉じた。
「ごめん」
聖なる光が広間を包み込む。
浄化。
白銀の光が瘴気を焼く。
「ぐっ……!」
王太子が苦しそうに膝をついた。
高位貴族達も次々と倒れる。
瘴気が剥がれていく。
そして。
王と王妃の身体が崩れ始めた。
「……え?」
王太子が顔を上げる。
その瞳から虚ろな光が消えていた。
正気へ戻ったのだ。
だが。
目の前。
両親の身体が灰になっていく。
「父上……?」
王が崩れる。
「母上……?」
王妃が消えていく。
その瞬間。
フィラの言葉が蘇る。
生きていない。
その意味を理解する。
「父上!!」
絶叫。
王太子が駆け出した。
だが届かない。
王も。
王妃も。
灰となって消えた。
「父上ぇぇぇ!!」
崩れ落ちる。
「母上!!」
返事はない。
何も残らない。
その姿を見て。
サイラスも拳を握り締めた。
伯父。
伯母。
幼い頃から可愛がってくれた二人。
もうとっくに。
いなかった。
だが。
その悲しみを打ち砕くように。
「何するのよ!!」
美優が叫んだ。
涙を流しながら。
怒りに満ちた顔で。
「やっと手に入れたのに!!」
フィラを睨む。
「やっとみんな私を見てくれるようになったのに!!」
フィラは言葉を失った。
本当に。
意味が分からなかった。
「また邪魔するの!?」
「どうしていつもお姉ちゃんなの!!」
怒り。
憎しみ。
執着。
様々な感情が混ざり合う。
「お姉ちゃんなんか大嫌い!!」
その瞬間。
轟音。
玉座の背後から。
黒い瘴気が噴き上がった。
禍々しい力。
広間全体が震える。
誰もが息を呑む。
そして。
その瘴気を見た瞬間。
ヴァルドの表情が変わった。
脳裏に蘇る。
皇帝の最期。
理解できなかった絶叫。
理解できなかった恐怖。
理解できなかった死。
そして。
今。
目の前にある黒い瘴気。
「……似ている」
小さな呟き。
フィラだけが振り返る。
「ヴァルド?」
だがヴァルドは答えない。
ただ。
瘴気の奥を睨み続けていた。
まるで。
そこに何かがいると知っているかのように。
最後までお読みいただきありがとうございました!
今回ようやく王宮へ辿り着きましたが、思っていた以上に王国の闇は深かったようです。
美優が現れる以前から王国は蝕まれていた――。
そして王と王妃に起きていた真実。
書いていて私自身も「そう繋がるのか……」と驚きながら進めていました。
また、今回の美優はただ怒っているだけではなく、様々な感情が入り混じっている状態でもあります。
姉妹のすれ違いも含めて、これから少しずつ描いていけたらと思っています。
そしてヴァルドが感じた違和感。
帝国で起きた出来事との繋がりも今後の大きな鍵になりそうです。
次回はいよいよ黒幕の存在へ近付いていくことになりそうですので、引き続きお付き合いいただけると嬉しいです
いつも感想や応援、本当にありがとうございます!
皆様のおかげで楽しく執筆を続けられています




