「帰ってきたお姉ちゃん」
いつも読んでいただきありがとうございます。
最近、仕事や用事の都合で投稿時間がバラバラになってしまい申し訳ありません。
それでも毎日見に来てくださる方や、ブックマークや評価、感想で応援してくださる方々には本当に感謝しています。
皆様のおかげでここまで続けてくることができました。
これからも自分のペースにはなりますが、毎日更新を目標に頑張っていきます。
それでは今回のお話をお楽しみいただければ幸いです。
「お姉ちゃん?」
震える声が耳に届く。
フィラの顔から血の気が引いた。
言ってしまった。
絶対に知られてはいけなかったのに。
美桜だったことを。
美優にだけは知られてはいけなかったのに。
「そうだったんだ……」
美優は呆然と呟く。
けれど次の瞬間。
その顔がぱっと明るくなった。
「そうだったんだ!」
嬉しそうな声だった。
まるで探していた宝物を見つけた子供のように。
フィラは思わず後ずさる。
一歩。
また一歩。
「来ないで……」
震える声。
けれど美優は首を傾げた。
「どうして?」
本当に不思議そうだった。
「やっと会えたのに」
フィラの心臓が大きく跳ねる。
その言葉。
その表情。
全部知っている。
美優が欲しいものを見つけた時の顔だ。
「お姉ちゃんだったんだ」
美優は嬉しそうに笑う。
「だから似てたのね」
「違う……」
「死んじゃったと思ったのに」
美優は聞いていなかった。
「帰ってきてくれたんだ」
フィラは首を振る。
「私はフィラです」
「ううん」
即答だった。
「お姉ちゃんだよ」
その一言にフィラの身体が震える。
否定しても無駄だ。
もう確信している。
美優は目を輝かせていた。
「良かった」
本当に嬉しそうだった。
「お姉ちゃんがいなくなってから最悪だったんだから」
フィラは息を呑む。
美優は何でもないことのように続けた。
「最初は保険金が入ったから良かったんだけど」
「すぐなくなっちゃって」
笑いながら言う。
まるで世間話のように。
「お母さんなんて酷いんだよ?」
「働け働けってうるさいし」
フィラの顔が青ざめる。
「しかも今度はお姉ちゃんを褒めるの」
美優は不満そうに唇を尖らせた。
「生きてる時は全然だったくせに」
『お姉ちゃんは偉かった』
『お姉ちゃんはちゃんと働いていた』
『少しは見習いなさい』
母親の声を真似する。
「意味わかんないでしょう?」
フィラは何も言えなかった。
「周りもそう」
美優はため息を吐く。
「何だか皆冷たくなったし」
「男の人も前みたいに優しくないし」
「全部おかしくなっちゃった」
そして。
ぱっと笑った。
「でももう大丈夫だよね」
フィラの背筋が凍る。
「だってお姉ちゃんが帰ってきたんだから」
ああ。
変わっていない。
何一つ。
変わっていない。
フィラは理解してしまった。
美優は後悔していない。
反省もしていない。
ただ。
失くした便利な存在が戻ってきたと喜んでいるだけだ。
「お姉ちゃん」
美優は嬉しそうに近づいてくる。
「また助けてね」
フィラはさらに下がった。
「来ないで……」
「それに」
美優は構わず続ける。
「ヴァルド様も紹介して」
フィラの瞳が揺れる。
「お父様も」
「みんなお姉ちゃんのこと好きなんでしょう?」
無邪気な笑顔。
けれど。
フィラには恐ろしく見えた。
「だったら私のことも好きになるよね」
当然のように言う。
「お姉ちゃんが頼めばいいんだもの」
昔と同じだ。
欲しいものがあれば。
美桜が何とかする。
困ったことがあれば。
美桜が解決する。
そう信じている。
「お姉ちゃん」
美優は手を伸ばした。
「今度こそ幸せにしてね」
フィラは震える。
怖い。
怖い。
怖い。
目の前にいるのは聖女なんかじゃない。
昔と何も変わらない美優だった。
「来ないで……!」
思わず叫ぶ。
美優の笑顔が消えた。
「何で?」
「私は……」
フィラの声が震える。
「私はもう……」
美優のためだけに生きていた美桜じゃない。
そう言いたかった。
けれど。
言葉にならなかった。
美優は不満そうに眉をひそめる。
「何逃げてるの?」
一歩。
また一歩。
フィラは後ずさる。
「お姉ちゃんのくせに」
その言葉が。
フィラの胸を深く抉った。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
今回は美優とフィラ、二人にとって大きな転機となる回の前半でした。
フィラにとっては恐怖の再会。
一方で美優にとっては、まるで失くしたものを取り戻したような再会。
同じ出来事でも二人の受け取り方がまったく違うのが、この姉妹らしいところかもしれません。
次回は後編となります。
物語も大きく動く回になりますので、引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。
いつも応援ありがとうございます。
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これからもどうぞよろしくお願いいたします。




