表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
42/89

「翳りの祝宴」

明日でGWも終わりですね。皆さんは何をして過ごされましたか?


私は見事に引きこもっておりました……。その分しっかり書き進められたので良しとします。


でもさすがに最終日くらいは外に出て、美味しいものを食べて飲んでこようかなと思っています。


そんなわけで、本日もお付き合いいただけたら嬉しいです。

 皇都、中央大広間。


 高い天井には無数の灯りが輝き、軽やかな音楽と笑い声が満ちていた。


 貴族たちが談笑し、皇族たちが優雅に振る舞う。


 華やかな祝宴。


 ヴァルドの成人を祝うために開かれた、盛大な式典だった。


 その賑わいの中へ——三人が足を踏み入れた、その瞬間。


 しん、と。


 会場が静まり返った。


 音楽さえ遠のいたかのように、誰もが言葉を失う。


 視線が、一斉に向けられる。


 フィラ。


 ヴァルド。


 オズワルド。


 ただ立っているだけで、場の空気を塗り替える存在だった。


 最初に目を奪うのはフィラ。


 淡く輝く銀の髪と、碧のドレス。


 その色は彼女の透明感を際立たせ、動くたびに柔らかな光を纏うようだった。


 16歳。


 少女の面影を残しながらも、確かに“レディ”へと成長した姿。


 その隣に立つヴァルドもまた、強く視線を引き寄せていた。


 鍛え上げられた体躯。


 無駄のない立ち姿。


 フィラと揃えた碧の礼服。


 感情を表に出さないその表情が、かえって人の目を惹きつける。


 そしてその背後に立つオズワルド。


 娘を持つ身でありながら衰えぬ威容。


 洗練された佇まいと圧倒的な存在感。


 会場中の視線が、三人に集まっていた。


 その中で——


 ヴァルドは、わずかに位置をずらす。


 フィラの前へ。


 さりげなく、その身体で視線を遮るように。


「……?」


 フィラが小さく首を傾げる。


 その視線を受けて、ヴァルドはふっと優しく微笑んだ。


「すごく綺麗だね、フィラ。碧いドレスがとても似合ってる」


 柔らかな声音。


 その笑顔に、周囲が息を呑む。


 無表情で無愛想だと思われていた少年が見せる、初めてのような表情。


「……ありがとう。ヴァルドもカッコいいよ……」


 頬を赤く染めながら、フィラが上目遣いに見上げる。


 その仕草の愛らしさに、会場の視線がさらに強く引き寄せられる。


 オズワルドが静かに口を開く。


「当然だ」


「よく似合っている、フィラ」


「ありがとう、父さま」


 穏やかなやり取り。


 この場だけが切り取られたような、温かな空気。


 その様子を、玉座の上から皇帝が楽しげに眺めていた。


 にやりと歪む口元。


 だが、その異質さに気づく者はほとんどいない。


 ただ——


 皇妃。


 オズワルド。


 そしてヴァルドだけが、わずかな違和感を感じ取っていた。


 やがてざわめきが収まり、成人の儀が始まる。


 玉座の前に進み出たヴァルドが膝をつく。


 その姿を、フィラは静かに見つめていた。


 神官の祝詞が響く。


 厳かに流れる時間。


 やがてそれが終わり——


 皇帝が立ち上がる。


 剣を抜き、ゆっくりとヴァルドの前へ。


「これでお前も成人だ」


 低い声。


 そして。


「……さて、祝いをくれてやろう」


 剣が、大理石の床へと突き立てられる。


 硬い音が響く。


 その直後——


 紫の光が広がった。


 魔法陣が、会場全体を覆い尽くす。


「——っ!?」


 悲鳴が上がる。


 逃げ場はない。


 その中心で。


「……ぐ、っ」


 オズワルドの身体が揺れる。


 胸を押さえ、顔を歪める。


「父さま!」


 フィラが駆け寄ろうとした——その瞬間。


「来るな!」


 オズワルドが叫び、フィラを突き飛ばす。


「きゃっ——」


 体勢を崩すフィラ。


 その身体を——


 ヴァルドが即座に受け止めた。


 腕の中に収める。


 その一瞬。


 視線が交わる。


 オズワルドと、ヴァルド。


(——あとは頼む)


(——任せてください)


 言葉はない。


 だが、確かに伝わる。


 次の瞬間。


「ああああああああッ!!」


 オズワルドの絶叫が響いた。


 身体が軋む。


 骨が、肉が、魔力が——歪む。


 黒い何かが溢れ出す。


 輪郭が崩れる。


 人の形を、保てない。


 膨れ上がる。


 裂ける。


 変わる。


 広間が震える。


 柱が軋む。


 天井が揺れる。


 そして——


 現れたのは。


 巨大な、黒き龍。


 禍々しい鱗。


 すべてを呑み込むような圧倒的な存在。


 その巨体が広間を押し潰すように広がる。


 咆哮が轟いた。


 大気を震わせ、恐怖を叩きつけるような咆哮。


 会場は完全な混乱に陥る。


 貴族も皇族も悲鳴を上げ、我先にと逃げ惑う。


 だが——


 玉座の上。


 皇帝だけが、動かない。


 ただ、笑っていた。


 狂気に満ちた笑みを浮かべながら。


 その視線は——フィラへと向けられていた。

ついに始まってしまいました。


穏やかだった時間が一瞬で崩れる、この瞬間を書くのがとても楽しかったです。


ヴァルドとオズワルドの無言のやり取り、そして黒龍化まで一気に進めました。


ここからは完全に戦闘と覚悟のターンに入っていきます。


次話ではヴァルドの戦いとフィラの決断が描かれていくので、引き続き見守っていただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ