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「選別」

いつもお読みいただきありがとうございます。


舞踏会を終え、いよいよ大公領へ帰還する一行。

しかし、その裏では静かに“選別”が行われていました。


守るために切り捨てるもの。

そして、フィラが手を差し伸べた存在。


優しさと非情さが交差する回となっております。


それでは、第25話をお楽しみください。

昼のパーティーが終わると同時に、オズワルドは即座に動いた。


「出立の準備を整えろ」


その一声で、空気が切り替わる。


フィラが気づいた時には、すでに帰還の準備は整っていた。


皇帝も配下に命じてヴァルドの荷造りや付き人の選定を急がせる。



「……こんなに……」


思わず呟く。


ヴァルドの後ろには、十数人もの付き人。


(……これって……)


顔が青くなる。


(わたしのせいで……)


そんなフィラを、そのまま馬車へ乗せると――


隣に腰を下ろしたオズワルドが、にやりと笑った。


「気にするな」


「……でも……」


「あんな者ども、連れ帰る気はない」


「え……?」


思わず瞬きをするフィラ。



その意味を問う前に――


外が騒がしくなる。


「陛下がお見えです」


ラースが静かに告げた。


馬車の前。


ゆったりとした足取りで現れる皇帝。


「見送りに来てやったぞ、オズワルド」


にこやかな笑み。


だが、その目は笑っていない。


「……ありがたき幸せ」


しぶしぶ馬車を降りるとオズワルドもまた、完璧に礼を返す。


「第七王子のこと、頼んだぞ?」


「ええ。責任をもって“預かりましょう”」


わざと強調する。


皇帝の目が細くなる。


「それと……」


視線が、ヴァルドの後ろへ。


「その者たちも同行させる。世話係だ」


「……承知しております」


短く返す。


沈黙の圧。


だがオズワルドは一歩も引かない。


やがて皇帝は、ふっと笑った。


「よい旅を」


「はっ」



「――出発する」


号令。


まず。


オズワルドとフィラ、ヴァルドの乗る馬車が動く。


そのまま転移門へ。


眩い光に包まれ――消える。



次に。


ヴァルドの“付き人”たち。


「急げ」


「遅れるな」


慌ただしく、転移門へ入っていく。



最後に――


ラース、ラルフたち。


彼らが静かに転移門へ入った瞬間。


ラルフが小さく呟く。


「……座標、調整済みです」


ラースが薄く笑う。


「閣下もお人が悪い」



光が収まる。



――大公領側。


転移を終えたオズワルドたち。


フィラがきょろきょろと辺りを見回す。


「……あれ?」


「ついてきてた人たちは……?」


いない。


どこにも。


オズワルドは、肩をすくめる。


「さてな」


わずかに口元を歪める。


「どこに飛ばされたやら」



――その頃。


深い森の中。


「な、なんだここは!?」


「転移先が違うぞ!」


混乱する声。


次の瞬間――


唸り声がそこかしこから響く。


木々の奥から現れる、巨大な魔獣たち。


「っ……!」


「まさか……最初から……!」


牙が閃き、悲鳴が上がる。




「ええっ!?」


フィラが驚きの声を上げる。


ラースが苦笑する。


「少しだけ、転移先を“ずらした”だけです」


ラルフが補足する。


「危険なものを、そのまま領内に入れるわけにはいきませんので」


フィラはぽかんとした後――


「……すごい……」


そして、ほっと息を吐いた。


「……よかった……」


ヴァルドもまた、フィラにぴたりと寄り添い――


小さく安堵の息を漏らす。



――更に城に向かう馬車の中。


揺れる車内で。


オズワルドの視線が、ヴァルドへ向く。


「……一つ言っておく」


低い声。


空気が張り詰める。


ヴァルドがびくりと震える。


「俺に逆らうな」


短く。


だが重い。


「フィラや大公領に害をなすと判断した場合――」


置かれた一拍に、ヴァルドの喉が鳴る。


「即刻、切り捨てる」


冷徹な宣告。


ヴァルドは何も言わない。


だが。


小さく、真剣な眼差しでこくりと頷いた。


その隣で。


フィラがそっと手を握る。


「……大丈夫だよ。父様は優しいから」


優しい声。


その温もりに、ヴァルドの強張りがわずかにほどける。



やがて――


大公城へ到着する。


巨大な城。


圧倒的な威容。


ヴァルドは、足を止めた。


「……ここ……」


戸惑い。


どうしていいかわからない。


その時。


すっと。


手が差し出される。


「行こ?」


フィラの笑顔。


「ここが、今日からヴァルドのお家だよ」


優しく告げる。


ヴァルドは、その手を見る。


そして――


そっと、握った。


「うん」


小さな手が、繋がれる。


その様子を見ながら。


オズワルドは静かに目を細めた。


(……さて)


この皇子を引き取ったことが、吉と出るか凶と出るか。


それでも――


守るものは変わらない。



大公領で新たな物語が、静かに動き出す。

第25話をお読みいただきありがとうございました。


オズワルドのやり方は、徹底しています。

不要なものは容赦なく排除する――それが大公としての判断。


一方で、フィラは誰かを見捨てることができない。

その対比が、今回の軸になっています。


そしてヴァルド。

彼にとって初めて差し伸べられた手が、どんな意味を持つのか。


ここから大公領での新しい関係が始まります。

次回以降もぜひお付き合いいただけると嬉しいです。

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