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「たったひとりの娘」

いつも読んでくださりありがとうございます。


最近、読んでくださる方が増えてきてとても驚いています。

本当に嬉しく、励みになっています。


これからも、もっと楽しんでいただけるよう頑張っていきます。


さて、第15話です。

今回もお付き合いいただけたら嬉しいです。

父やライオたち大公軍が、人間の軍を迎え撃つため森へ出撃した翌日。



フィラは、落ち着かなかった。


ラルフの授業も、ローグの教えも――


まるで頭に入ってこない。




「フィラ姫、大丈夫ですよ」


ラースが穏やかに微笑む。


「大公軍は負けなしですから」



「特に閣下は、歴代でも最強と称される御方です」


ラルフも続ける。


「人間はしつこいですが……いつも十日ほどで追い返しております。皆、無事に戻ってきますよ」



「……はい……」


フィラは、小さく笑う。


けれど――


その笑みは、どこか力がなかった。



みんなもその姿を痛ましく見ていた。



「魔力は魔族の方が上じゃがな……」


ぽつりと、ローグが呟く。


「人間は魔道具に長けておる。今回も厄介なものを用意しておらねばよいが」



「ローグ様」


ラースがたしなめる。


「不安を煽る必要はございません」



「隠しても仕様があるまい」


ローグはどこ吹く風で肩をすくめた。



その言葉に。


フィラの胸は、ぎゅっと締め付けられる。




夜。



フィラは、ひとり窓辺に立っていた。


森の方を見つめる。


「……父様……」


小さく手を組み。


祈る。



「……どうか……みんなが無事でありますように……」



(……もし……)



(わたしが……もっと……)



聖女の力を、使いこなせていたら。


助けに行けるのに。



前世の家族。


冷たかった、あの場所。



けれど――


今は違う。



優しくて。


温かくて。


大好きな人たちがいる。



(……失いたくない……)



(……こわい……)




それから、数日後。



城が、にわかに騒がしくなった。



「フィラ様、お部屋から出ないでください」


ツェリにそう言われる。


「……はい……」



――けれど。


気づけば、足は廊下に出ていた。



(……父様……)


不安が、止まらない。



物陰から、声が聞こえる。



「……巨大な魔道兵器だと……?」


「大公軍が苦戦している」



その言葉に。


フィラの頭が、真っ白になる。



(……苦戦……?)



(父様が……苦しんでる……?)



(ライオも……みんなも……)



「……いや……」


ぽつりと、声が漏れる。


「……やだ……」


胸が、壊れそうになる。


「……父様……いなくならないで……」



その時。



「フィラ!」



ローグの声。


フィラの魔力の揺らぎに気づいたのだ。


「落ち着くのじゃ!力を暴走させるでない!」



けれど――



フィラには、何も届かない。


ただ。


傷ついた父の姿だけが、浮かぶ。



「……いや!!」


「父様!!」



その瞬間――



強烈な光が、溢れた。




次の瞬間。


フィラの姿は、消えていた。


ラースもツェリも、ラルフもローグも呆然とするしかなかった。




――森。



人間の軍と対峙する、大公軍。



「……厄介だな」


巨大な魔道兵器。


砲撃のように魔力を放つそれに、軍は足止めされていた。


「どう攻略するか…」


軍議の最中――




空が、光る。




「……!?」




強烈な光が、降り注いだ。





そこに現れたのは――



「……フィラ……?」




オズワルドの瞳が見開かれる。


「フィラ!!」




駆け寄ろうとする。


だが__



フィラは。


何も見ていなかった。


何も聞こえていなかった。



ただ――


人間の軍を、睨みつける。



「……消えろ……」


「……わたしの家族……傷つけるな……」



「……消えろ!!」



瞬間。



暴風が吹き荒れる。



魔道兵器が――粉々に砕ける。



人間たちが、吹き飛ばされる。





「……なんだ……これは……」


呆然とする大公軍。


人間達が発生した竜巻に、次々と飲み込まれていく。



フィラは、止まらない。


苦しそうに、顔を歪めながらも。


暴走した力を、止められない。



「……フィラ!!」



オズワルドが、踏み込む。


フィラを取り囲む衝撃に、傷を負いながらも。


光を押し切るように。



そして――


抱きしめた。



「……もういい」


「……落ち着け、フィラ」


「……もういいんだ……」



その優しい声。


その温もり。


それらがフィラの耳に…心に届く。



フィラの視界が、揺れる。


振り返れば大好きな父の顔。



「……と……さま……?」



オズワルドが、強く頷く。



その瞬間。


フィラの瞳から、涙が溢れた。


「父様!!」


勢いよく抱きつく。



「死なないで……!」


「いなくならないで……!」


「フィラを置いていかないで……!」


「ひとりぼっちは……いや……!」


「頑張るから……!」


「フィラ……役に立つから……!」



泣きじゃくるフィラを。


オズワルドは、強く抱きしめた。



「……役になんて立たなくていい」


「……頑張らなくたっていい」


「……ずっと一緒にいる」


「……お前を、ひとりになんてさせない」



そして。



「……お前は、俺の大切な――」



「たったひとりの娘だ」



その言葉にフィラは、ただ――


その胸に、しがみついて泣き続けた。


父の腕の強さと温もりを感じながら__

第15話をお読みいただきありがとうございます。


今回はフィラの不安や恐怖、そして抑えきれなかった想いが一気に溢れる回となりました。

やっと手に入れた大切なものを失いたくないという気持ちが、彼女の力を大きく揺り動かしてしまいました。


それでも最後にフィラを止めたのは、オズワルドの強く深い想いでした。

この親子の関係も、ここからさらに深まっていくと思います。


引き続き見守っていただけたら嬉しいです。

次回もよろしくお願いいたします。

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