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「父の約束」

いつも読んでくださりありがとうございます。


前回は少し激しい展開となりましたが、今回はその後のお話になります。

フィラとオズワルド、それぞれの想いを少しでも感じていただけたら嬉しいです。


さて、第16話です。

今回もお付き合いいただけたら幸いです。

フィラの放った力は――


すべてを吹き飛ばした。


◆


暴走して生まれた竜巻は、人間の魔道兵器を粉々に砕き。


◆


森に侵入していた人間の軍を、余すことなく押し流した。


◆


◆


戦いは、終わった。


◆


◆


大公軍は、勝利した。


◆


◆


だが――


◆


フィラは、そのまま気を失っていた。


◆


◆


「……フィラ」


◆


◆


オズワルドは、小さな身体を抱き上げる。


◆


泣き疲れ、力なく眠るその姿に。


◆


胸の奥が、強く締め付けられた。


◆


◆


(……俺が、守ると決めたのに……)


◆


◆


腕の中のぬくもりが、ひどく頼りなく感じる。


◆


◆


(……こんな小さな体に……何を背負わせている……)


◆


◆


そのまま軍を率い、城へと帰還した。


◆


◆


◆


それから――


◆


フィラは、目を覚まさなかった。


◆


◆


一日。


二日。


三日――


◆


◆


どれだけ呼びかけても、応えはない。


◆


◆


オズワルドは、戦いの疲れを癒すこともせず。


◆


ただ、ずっとそばにいた。


◆


◆


「……閣下、少しはお休みを」


◆


ラースが静かに言う。


◆


◆


「……必要ない」


◆


◆


短く返す。


◆


◆


視線は、一度もフィラから離れなかった。


◆


◆


(……失うわけにはいかない)


◆


◆


たったひとりの娘。


◆


◆


ようやく――


心から愛することを許された存在。


◆


◆


それを。


◆


◆


失うなど、考えられなかった。


◆


◆


◆


そして――


十日ほどが過ぎた頃。


◆


◆


「……ん……」


◆


◆


かすかな声。


◆


◆


「……フィラ……!」


◆


◆


ゆっくりと、瞼が開く。


◆


◆


最初に映ったのは――


◆


◆


「……とうさま……?」


◆


◆


オズワルドの顔だった。


◆


◆


その瞬間。


◆


◆


涙が、溢れた。


◆


◆


「……ごめんなさい……」


◆


◆


「……めいわく……かけて……」


◆


◆


震える声。


◆


◆


オズワルドは、何も言わずに頭を撫でる。


◆


◆


(……違う……)


◆


◆


そんな言葉を、この子に言わせてはいけない。


◆


◆


「……子供が親に迷惑をかけるのは、当たり前だ」


◆


◆


静かに、だがはっきりと告げる。


◆


◆


「……お前がやったことを、迷惑だと思ったことは一度もない」


◆


◆


そっと抱き上げる。


◆


◆


「……謝るとしたら」


◆


◆


「……俺たちに心配をかけたことだけでいい」


◆


◆


◆


膝の上に乗せ。


◆


涙を拭う。


◆


◆


「……だが」


◆


◆


「……お前を不安にさせたのは、俺だ」


◆


◆


「……すまなかった」


◆


◆


頭を下げる。


◆


◆


フィラは慌てて首を振る。


◆


◆


「……ちがいます……!」


◆


◆


「……フィラが……いけないの……」


◆


◆


「……役に立たなきゃ……ここにいられないって……」


◆


◆


「……すてられるって……こわくて……」


◆


◆


ぎゅっと、しがみつく。


◆


◆


「……利用していいから……ここにおいて……」


◆


◆


その言葉に。


◆


◆


オズワルドの中で、何かが切れた。


◆


◆


(……誰が、そんなことを教えた)


◆


◆


怒りと。


◆


◆


それ以上の――


◆


◆


悔しさ。


◆


◆


「……利用などしない」


◆


◆


強く、言い切る。


◆


◆


「……たとえ聖女でなくても」


◆


◆


「……何の力がなくても」


◆


◆


◆


「……お前は、俺の娘だ」


◆


◆


「……俺の、愛しい娘だ」


◆


◆


◆


その言葉に。


◆


フィラの瞳が揺れる。


◆


◆


◆


フィラは――


オズワルドの胸に顔を埋めた。


◆


◆


(……ほんとうに……?)


◆


◆


前世。


◆


美桜として生きた日々。


◆


◆


価値がある時だけ、与えられた居場所。


◆


◆


(……でも……)


◆


◆


この腕は、温かい。


◆


◆


(……しんじたい……)


◆


◆


◆


「……心配かけて……ごめんなさい……」


◆


◆


ぽつりと呟く。


◆


◆


「ああ……」


◆


◆


「……もう二度と、あんな無茶はするな」


◆


◆


「……お前に何かあったら……その方が俺は辛い」


◆


◆


その言葉に、顔を上げる。


◆


◆


「……フィラも……」


◆


◆


「……とうさまが、けがするの……いや……」


◆


◆


「……あんまり……たたかってほしくない……」


◆


◆


◆


オズワルドは、静かに頷く。


◆


◆


「……わかった」


◆


◆


「……だが、俺は民を守るため戦わねばならん」


◆


◆


「……その代わり」


◆


◆


優しく微笑む。


◆


◆


「……必ず勝って、お前の元に帰ると約束する」


◆


◆


◆


フィラは、こくんと頷いた。


◆


◆


◆


その時――


◆


ノックの音。


◆


◆


ツェリとラースが入ってくる。


◆


◆


「フィラ様……!」


◆


◆


涙を流すツェリ。


◆


◆


「……ご無事で何よりです」


◆


◆


ラースも静かに頭を下げる。


◆


◆


フィラは一瞬口を開き――


◆


「めいわ…」


と言いかけたところで、軽くオズワルドが背中を叩かれ、ハッとする。


言葉が違う。


◆


「……心配かけて……ごめんなさい」


◆


◆


そう言い直し、頭を下げた。


◆


◆


その姿を見て。


◆


◆


オズワルドは、静かに目を細めた。


◆


◆


(……もう二度と)


◆


◆


(……この子に、あんな顔はさせん)


◆


◆


その決意だけが、強く胸に刻まれていた。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


フィラの「怖い」と「信じたい」がぶつかる回でした。

書いていてちょっと苦しかったですが、その分大事な場面になりました。


もし少しでも何か感じてもらえていたら嬉しいです。


また次回も読んでいただけたら励みになります。

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