第97話 王家の墓
三人は。
壁に刻まれた、
剣士たちの名を見つめていた。
静寂。
誰も言葉を発しない。
失われた者たちの名。
壁一面を埋め尽くす文字。
まるで。
時が止まったようだった。
やがて。
ミヅキが、
小さく息を吐く。
「行きましょうか……」
視線の先。
さらに奥へ続く通路が見えていた。
レグルスが頷く。
リオラも頷いた。
三人は、
再び歩き出す。
静かな通路。
足音だけが響く。
先ほどの廊下よりも長い。
進む。
ただ進む。
その時。
空気が変わった。
ひんやりとしている。
ミヅキが、
目を細める。
――この先にある……。
微かな魔力。
どこか張り詰めた空気。
三人は、
さらに奥へ進んだ。
やがて。
通路が終わる。
ミヅキの目が、
大きく見開かれた。
――これは……。
その先には。
再び広い部屋があった。
だが。
先ほどの部屋とは違う。
そこには。
石棺が並んでいた。
ひとつ。
ふたつ。
そして。
規則正しく並ぶ十数基の石棺。
静かだった。
まるで。
今も誰かが眠っているかのように。
部屋の奥。
祭壇のような台座がある。
その上には。
ひとつの魔光石。
淡く輝いていた。
ミヅキの呼吸が止まる。
月の王国の地下書斎。
そこにあった魔光石よりも。
さらに大きい。
圧倒的な存在感。
――ここは……。
――王家の墓……?
視線が揺れる。
――それに……。
――なんて大きな魔光石なの……。
リオラも、
周囲を見回した。
「なに、ここ……」
石棺を見る。
「お墓……?」
そして。
祭壇の魔光石を見る。
「魔光石……?」
わずかな沈黙。
「大きすぎない……?」
魔光石には。
淡い光が注いでいた。
ミヅキは、
その光を追う。
天井。
壁面。
そして。
遥か上へ続く光の道。
――太陽の光を、
取り込む仕掛けか……。
長い年月を経てもなお。
魔光石は、
静かに輝き続けていた。
ミヅキは、
視線を石棺へ向ける。
規則正しく並ぶ石棺。
その表面には、
美しい装飾が施されている。
蓋には。
文字が刻まれていた。
――名前……?
近づく。
指でなぞる。
――アウレリア……。
ミヅキの表情が変わる。
――やはり。
――王家の墓で間違いない。
さらに視線を動かす。
壁面にも。
無数の文字が刻まれていた。
ミヅキは、
ゆっくりと読み進める。
――こちらには……。
――名前と。
――年代か……。
わずかな沈黙。
――私の知識に間違いがなければ。
――太陽の王国の暦ね……。
壁に沿って歩く。
――千年と少し前……。
その頃の記録を追う。
刻まれた名。
王の名。
王妃の名。
王子の名。
そして。
ミヅキの足が止まった。
――二歳……?
小さく息を呑む。
他の名には。
生没年が刻まれている。
だが。
この名前だけは違った。
――行方不明……?
鼓動が速くなる。
――これは……。
――おそらく。
――レグルスのこと……。




