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勇者、懲役1000年。 千年後、俺は勇者ではなく悪魔になっていた。  作者: 直助
第五章 再生の灯火

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第96話 刻まれた剣士たちの名

 広大な空間を前に。


 リオラは、

 言葉を失っていた。


「何、これ……」


 ゆっくりと周囲を見回す。


「地下に、

 こんな場所が……」


 レグルスは、

 瓦礫の山から飛び降りた。


 着地する。


 小さく砂埃が舞った。


 一方。


 ミヅキは、

 慎重に足場を確かめながら降りていく。


 やがて。


 地面へ辿り着いた。


 そして。


 背後の瓦礫を見る。


 積み重なった石。


 崩れた壁。


 その先。


 遥か上に見える落下穴。


 ミヅキが、

 静かに呟く。


「この瓦礫……」


「元は、

 階段だったんでしょうか……」


 長い年月。


 崩れ落ちた石段。


 本来は。


 ここへ続く道があったのかもしれない。


 ミヅキは、

 さらに周囲へ目を向けた。


 壁面。


 柱。


 そこには。


 風化しながらも、

 装飾や壁画が残されている。


 ミヅキが目を細める。


「ここは……」


「地下神殿のようなもの、

 でしょうか……」


 リオラも、

 周囲を見回した。


 レグルスは、

 落下穴を見上げる。


 遥か上。


 小さく見える光。


 その向こうには、

 太陽の王国の遺跡がある。


 ――影は……。


 わずかな沈黙。


 ――ここには来ないようだな。


 リオラが、

 レグルスへ振り返った。


「レグルスは、

 千年前……」


「この場所に、

 来たことあるの?」


 レグルスは、

 静かに首を振る。


「いや……」


「こんな場所があることさえ……」


「知らなかった」


 リオラは、

 その言葉を聞いて前を向く。


「そっか」


 小さく頷く。


「とにかく――」


「もう少し、

 進んでみましょうか」


 そう言うと。


 ゆっくりと歩き出した。


 レグルスも続く。


 ミヅキも、

 その後ろを歩く。


 静かな地下空間。


 足音だけが響いていた。


 ミヅキは、

 歩きながら考える。


 ――レグルスが知らない。


 ――だとすれば……。


 壁画へ視線を向ける。


 風化した装飾。


 崩れた石柱。


 そして。


 誰にも知られず、

 地下へ隠されていた空間。


 ――王家の秘密の場所か……。



 地下神殿の中。


 三人は、

 ゆっくりと歩いていた。


 周囲には、

 崩れた柱や石壁が続いている。


 だが。


 その先に。


 ひとつの通路が見えた。


 広い空間とは対照的な。


 細く長い廊下。


 リオラが、

 その先を見る。


「向こうに、

 何かありそうね」


 レグルスも頷く。


 三人は、

 自然とその方向へ歩き出した。


 足音が響く。


 静かな廊下。


 やがて。


 三人は、

 その先へ辿り着いた。


 ひとつの部屋。


 壁に囲まれた空間だった。


 リオラが周囲を見回す。


「ここは……」


 ミヅキも、

 壁へ視線を向けた。


 その時。


 目が止まる。


「壁に……」


「文字が、

 書いてありますね……」


 ミヅキは、

 ゆっくりと近づいた。


 風化した文字。


 見慣れない形。


 ――古代文字か……?


 壁へ手を添える。


 ――読める……。


 瞳が揺れる。


 ――やはり。


 ――大賢者の魔力で……。


 ミヅキは、

 静かに読み上げた。


「魔王に挑んだ……」


「勇敢なる剣士たち……」


 リオラが、

 思わず振り返る。


「読めるの!?」


 ミヅキが頷いた。


「ええ……」


 そして。


 再び壁を見る。


「この壁には――」


「エクリシウスと戦った」


「太陽の王国の剣士たちの名が、

 刻まれているようですね」


 静かな空間。


 三人は、

 改めて壁を見つめる。


 そこには。


 無数の名前が刻まれていた。


 壁一面を埋め尽くすように。


 隙間なく。


 まるで。


 失われた者たちを忘れないために。


 一人残らず、

 刻み付けられているかのようだった。


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