第95話 地下に広がる世界
リオラは、
なおも台座へ手をかざしていた。
力を込める。
だが。
何も起きない。
風が吹く。
神殿の区画。
影たちは、
なおも近づいていた。
ひとつ。
ふたつ。
そして。
次々と。
三人を囲むように、
迫ってくる。
レグルスが、
剣を構えた。
一閃。
魔力の斬撃が走る。
前方の影が吹き飛ぶ。
だが。
それだけだった。
消えた隙間を埋めるように。
新たな影が現れる。
終わらない。
レグルスは、
再び剣を振るう。
また一閃。
影が後退する。
だが。
さらに近づいてくる。
少しずつ。
確実に。
距離が縮まっていた。
リオラの表情も強張る。
台座へ魔力を流し続けながら。
唇を噛み締めた。
その時。
ミヅキが叫ぶ。
「レグルスも!」
「台座へ魔力を!!」
レグルスの動きが止まる。
ミヅキを見る。
そして。
すぐに決断した。
剣を握ったまま、
台座へ駆け寄る。
リオラの隣。
手のひらを台座へ当てた。
魔力を流し込む。
次の瞬間。
台座が光った。
眩い光。
三人の足元へ広がっていく。
「えっ……」
リオラが声を漏らす。
その瞬間。
轟音。
三人が立っていた床が崩れた。
石が砕ける。
足場が消える。
三人の身体が、
そのまま下へ落ちていった。
暗闇が広がる。
身体が浮く。
落ちている。
だが。
地面は見えない。
風だけが、
耳元を通り過ぎていく。
長い。
思った以上に長かった。
レグルスが、
声を張り上げる。
「ミヅキ!!」
その声で。
ミヅキは、
はっと目を見開いた。
杖を握る。
強く。
さらに強く。
落下は続く。
やがて。
暗闇の先に、
地面が見えた。
迫る。
瓦礫。
砕けた石。
次の瞬間。
ミヅキの杖が光る。
魔力が広がった。
三人を包み込む、
淡い障壁。
そして。
地面へぶつかる。
だが。
衝撃は大きくなかった。
三人の身体は、
ゆっくりと瓦礫の上へ倒れ込んだ。
静寂。
しばらく誰も動かなかった。
やがて。
リオラが、
ゆっくりと立ち上がる。
服の中へ手を入れた。
取り出したのは、
魔光石。
淡い光が灯る。
周囲を照らした。
瓦礫。
崩れた石柱。
砕けた床。
三人は、
瓦礫が積み重なった場所にいた。
リオラが、
上を見上げる。
暗闇の中。
小さな光が見えた。
落ちてきた穴。
思っていたよりも、
遥かに高い。
リオラが呟く。
「影は……」
わずかな沈黙。
「追ってきてない……?」
静かな空間。
返ってくるのは、
自分たちの声だけだった。
リオラは、
再び前を向いた。
「少し進んでみましょうか……」
足場を確かめながら。
ゆっくりと、
瓦礫の山を降りていく。
すると。
空間全体が、
淡く輝いた。
リオラが驚く。
「なに!?」
壁。
天井。
崩れた柱。
そこに埋め込まれていた魔光石が。
一つ。
また一つと。
光を灯していく。
淡い光が広がる。
そして。
三人の視界が開けた。
周囲には。
想像を遥かに超える、
広大な空間が広がっていた。




