第93話 終わらぬ影、一筋の光
砂漠と遺跡の境界。
無数の影が、
ゆっくりと近づいてくる。
剣を携えた影。
静かな足音。
だが。
その数は、
あまりにも多かった。
レグルスは、
魔力を込めた剣を構える。
「リオラ」
「ミヅキ」
「前に出るなよ」
二人が頷く。
その瞬間。
レグルスが剣を振り払った。
一閃。
魔力の斬撃が走る。
砂を巻き上げながら、
影の群れへ突き刺さった。
さらに。
返す刀で、
もう一閃。
二つの斬撃が、
影の群れを飲み込む。
轟音。
土煙が舞い上がった。
レグルスは、
その先を見据える。
――消し飛ばした。
確かな手応え。
だが。
土煙の向こう。
なおも立つ影があった。
一体。
二体。
そして。
その後ろには、
さらに続く影。
静かに歩み寄ってくる。
レグルスが、
奥歯を噛み締めた。
――影の魔力は。
――前と変わらない。
風が吹く。
――やはり。
――弱くなっている。
――俺の魔力が。
レグルスは、
さらに魔力を込めた。
地面を蹴る。
一気に距離を詰めた。
一閃。
斬撃が走る。
前列の影が、
まとめて吹き飛んだ。
砂が舞う。
だが。
その向こう。
なおも続く影。
どこまでも。
どこまでも。
黒い群れが続いていた。
レグルスは、
額の汗を拭う。
――この数……。
わずかな息遣い。
――どうすれば……。
影は、
なおも近づいてくる。
だが。
立ち止まるわけにはいかない。
レグルスは、
何度も剣を振るった。
一閃。
また一閃。
魔力の斬撃が、
影の群れを薙ぎ払う。
影は消える。
砂が舞う。
だが。
状況は変わらなかった。
消し飛ばした先から。
新たな影が現れる。
終わりが見えない。
黒い群れは、
なおも押し寄せてくる。
背後では。
リオラとミヅキが、
その光景を見つめていた。
リオラが、
戸惑いを隠せないまま口を開く。
「どうしたらいいのよ」
「埒があかない」
影の群れ。
飛び交う斬撃。
リオラの表情が曇る。
「それに……」
「このままじゃ、
レグルスがもたないよ!」
ミヅキも、
前方を見つめる。
影。
剣。
エクリシウスの魔力。
そして。
ゆっくりと口を開いた。
「エクリシウスが……」
「ここに、
魔力を刻んでいます……」
「それをどうにかするしか……」
わずかな沈黙。
ミヅキが、
リオラを見る。
「リオラさん」
「ここへ来た時に――」
「何かありそうな場所は、
ありませんでしたか……?」
リオラが考える。
視線が揺れる。
やがて。
「たしか……」
ゆっくりと思い出す。
「レグルスと、
ここへ来た時に」
「台座へ、
王家のペンダントを置いたの」
「そしたら――」
「光の柱ができて……」
ミヅキの瞳が動く。
リオラが続けた。
「何かあるとすると、
そこなんだけど」
「でも――」
「ペンダントがないの……」
静かな沈黙。
ミヅキは、
目を閉じる。
――鍵は、
そこにあるはず……。
――もう。
――そこしかない。
風が吹く。
――一か八か……。
その時。
離れた場所。
影の群れと戦うレグルスが。
その会話を、
静かに聞いていた。




