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勇者、懲役1000年。 千年後、俺は勇者ではなく悪魔になっていた。  作者: 直助
第五章 再生の灯火

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第92話 影に覆われた王国

 砂の大地が、

 どこまでも続いていた。


 乾いた風。


 焼けた岩肌。



 ドラゴンは、

 太陽の王国を目指して飛び続ける。


 眼下の景色は、

 少しずつ変わっていた。


 緑は消え。


 砂と岩が、

 大地を覆っている。


 高い空。


 強い陽射し。


 やがて。


 遠くの地平線に、

 大きな遺跡が見えてきた。


 かつて、

 太陽の王国があった場所だった。



 リオラが、

 前方を指差す。


「もう少しね」



 その時だった。


 レグルスの表情が変わる。


 ミヅキも、

 同時に顔を上げた。


 空気が違う。


 重い。


 淀んだ魔力。


 次の瞬間。


 ドラゴンが、

 大きく高度を下げた。


「えっ!?」


 リオラが声を上げる。


「どうしたの!?」


 巨体が揺れる。


 三人は、

 慌てて身体を支えた。


 ドラゴンは、

 さらに高度を下げていく。


 ミヅキが、

 太陽の王国を見つめる。


 その瞳が揺れた。


「太陽の王国が……」


 小さな声。


「魔力で覆われています」


 わずかな沈黙。


 そして。


「……エクリシウスの」


 風が吹く。


 ドラゴンは、

 なおも降下を続ける。


 そして――。


 地上へ。


 半ば墜落するように、

 不時着した。


 三人は、

 どうにか振り落とされずにいた。


 ドラゴンの背へ、

 しがみついている。


 荒い呼吸。


 砂埃。



 リオラが、

 真っ先に声を上げた。


「みんな大丈夫!?」


 レグルスが頷く。


 ミヅキも、

 小さく頷いた。


 大きな怪我はない。


 だが。


 空気は重かった。


 目の前には。


 太陽の王国の遺跡。


 崩れた城壁。


 風化した建物。


 入り口は、

 すぐそこまで迫っている。


 リオラが、

 先に地面へ飛び降りた。


 レグルスも続く。


 周囲を見渡しながら、

 静かに口を開く。


「ここから先は危険だ」


「慎重に行こう」


 背後では。


 ミヅキが、

 恐る恐るドラゴンから降りていた。


 地面へ足を着ける。


 そして。


 遺跡の方へ視線を向けた。


「北の遺構で感じた魔力よりも――」


 小さな沈黙。


「強いものを感じます」


 風が吹く。


 その時。


 リオラが、

 ドラゴンの様子に気づいた。


 ドラゴンは、

 遺跡を見つめている。


 翼は畳まれたまま。


 一歩も前へ進もうとしない。


 警戒していた。


 いや。


 怯えているようにも見えた。


 リオラが、

 優しく首元を撫でる。


「ドラゴンは、

 ここで待ってて」


 ドラゴンは、

 小さく頭を下げた。


 三人は、

 互いに顔を見合わせる。


 そして。


 太陽の王国の遺跡へ向かって――


 静かに歩き始めた。



 レグルスが、

 先頭を歩く。


 リオラとミヅキが、

 その後へ続いた。


 砂漠と遺跡の境界。


 レグルスが、

 一歩を踏み出す。


 その瞬間。


 空気が変わった。


 重い。


 淀んだ魔力。


 肌にまとわりつくような感覚。


 見えない境界を、

 越えたようだった。


 レグルスの表情が変わる。


 ――この感覚。


 ――前にもあった。


 次の瞬間。


 地面が揺れた。


 砂が舞う。


 影が浮かび上がる。


 ひとつ。


 ふたつ。


 そして。

 

 止まらない。


 影は、

 次々と姿を現した。


 やがて。


 数えることもできないほどの影が、

 遺跡を埋め尽くす。


 その手には。


 それぞれ剣が握られていた。


 静かな殺気。


 レグルスが、

 目を細める。


 ――前と同じか。


 ――エクリシウスが呼び起こした。


 ――アウレリアの剣士たち。


 風が吹く。


 無数の影。


 無数の剣。


 レグルスは、

 静かに剣を抜いた。


 刃へ魔力が宿る。


 そして。


 正面の影を見据えた。


 剣を構える。


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