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勇者、懲役1000年。 千年後、俺は勇者ではなく悪魔になっていた。  作者: 直助
第五章 再生の灯火

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第90話 消えない不安

 影が蠢く。


 黒が揺れる。


 底の見えない闇。


 その中心で。


 エクリシウスが、

 静かに目を開く。


 微かな笑い声。


「動いているようだが……」


 影が揺れる。


「もう遅い」


「レグルスの中にあった、

 私の魔力は――」


「ほとんど、

 取り返したぞ」


 黒が渦巻く。


 闇が、

 さらに深くなる。


「この世界の人間も――」


「もう、

 わずかだ……」


 静かな声。


 だが。


 その言葉だけが、

 異様な重さを持っていた。


「全て――」


「呑み込む……」





 北の遺構。


 陽は、

 まだ高かった。


 風が吹く。


 崩れた柱。


 静まり返った遺跡。


 三人は、

 魔光石のあった場所から離れていた。


 その時。


 レグルスが、

 静かに口を開く。


「今日は、

 ここで休もう」


「明日の朝、

 出発する」


 リオラとミヅキが、

 レグルスを見る。


「今からだと――」


「太陽の王国へ着く頃には、

 暗くなる」


 レグルスが、

 周囲へ視線を向ける。


「ここが、

 一番安全だろう」


 風が吹く。


 リオラが、

 小さく頷いた。


「そうね」


「ここで、

 野宿しましょうか」


 ミヅキも、

 静かに頷く。


 反対する者は、

 いなかった。


 高い空。


 静かな遺跡。



 陽は、

 ゆっくりと傾いていく。


 陽が落ちる前に。


 三人は、

 焚き火の準備を始めていた。


 枯れ枝。


 朽ちた木。


 集められたそれらへ、

 火が灯る。


 小さな炎。


 焚き火は、

 静かに燃え始めた。


 夜風が吹く。


 三人は、

 火を囲んで座る。


 ドラゴンは、

 少し離れた場所で横になっていた。


 リオラは、

 その尻尾へ背を預ける。


 レグルスとミヅキは、

 近くの石へ腰を下ろしていた。


 火が揺れる。



 やがて。


 リオラが、

 小さく口を開く。


「レグルスが、

 太陽の王家ってことは……」


「私のご先祖様って、

 ことよね?」


 少し考える。


「……変な感じ」


 火が揺れる。


 レグルスは、

 何も言わない。


 ミヅキも、

 静かに聞いていた。


 リオラが、

 さらに続ける。


「太陽の王国も――」


「ここみたいに、

 すんなり魔力を刻めるのかしら」


 ミヅキが、

 静かに答える。


「どうでしょうか……」


「ただ」


「太陽の王家の魔力を持つ者が、

 二人いますから」


「場所さえ分かれば――」


 そこで。


 ミヅキの表情が、

 わずかに曇る。


「それよりも……」


「レグルスさんの魔力が、

 弱まっていることが気がかりです」


 火が、

 小さく揺れた。


「生み出された影や――」


「エクリシウス自体を、

 倒すことができるのか……」


 沈黙。


 焚き火の音だけが響く。


 やがて。


 リオラが、

 その空気を破った。


「まあ――」


 小さく笑う。


「きっと、

 なんとかなるでしょ」


 その言葉に。


 ミヅキの表情が、

 少しだけ和らぐ。



 火が揺れる。


 高い空には、


 星が瞬いていた。


 夜は、

 静かに更けていった。


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