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勇者、懲役1000年。 千年後、俺は勇者ではなく悪魔になっていた。  作者: 直助
第五章 再生の灯火

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第89話 空から大地へ

 光は。


 なおも、

 北の遺構を指し続けていた。


 ミヅキは、

 壁に取り付けられた円形のものを見つめる。


 ――鏡……?


 陽の光を受けて、

 静かに輝いている。


 ――リオラさんの魔力に、

 反応した……?


 その時。


 レグルスが、

 静かに口を開いた。


「エクリシウスを追って、

 この遺跡へ来た時――」


「この地の魔力が、

 リオラへ流れていた」


「その影響かもしれないな」


 ミヅキが、

 小さく目を伏せる。


 ――やはり……。


 ――魔力を刻むためには。


 ――その地の魔力を持つ者が、

 必要になる。


 風が吹く。


 ――太陽の王国は。


 ――リオラさんと、

 レグルスさんがいる……。


 ――南の遺構には、

 その地の魔力を持つ者がいない……。



 その時。


「おーい!」


 リオラの声が響く。


 二人が顔を上げる。


 リオラは、

 すでに神殿の外へ出ていた。


「二人とも、

 真剣な顔してどうしたの?」


「光が指してるところに、

 行ってみましょ」


 明るい声。


 ミヅキの表情が、

 わずかに和らぐ。



 リオラが、

 階段を下り始める。


 レグルスとミヅキは、

 顔を見合わせた。


 そして。


 何も言わず、

 その後へ続いていく。



 リオラは、

 階段を下りながら口を開く。


「これだけ急だと、

 危ないわね」


 少し振り返る。


「二人とも、

 気をつけてね」


 レグルスは、

 何事もないように下りていく。


 足取りは変わらない。


 一方。


 ミヅキは、

 慎重に足を運んでいた。


 杖を支えにしながら。


 一段ずつ。


 ゆっくりと下りていく。


 その肩には、

 力が入っていた。


 風が吹く。


 やがて。


 三人は、

 階段を下りきった。


 中腹の開けた場所へ出る。


 眼下には、

 遺跡の入り口が見えていた。


 その近く。


 ドラゴンが、

 静かに座っている。


 だが。


 リオラの姿を見つけると。


 ゆっくりと立ち上がった。


 リオラも、

 大きく手を振る。


「ただいまー」


 ドラゴンが、

 小さく鼻を鳴らした。


 三人は、

 再び遺跡の中を進む。



 そして。


 ドラゴンの元へ辿り着いた。


 リオラが、

 その背を軽く叩く。


「下へは、

 ドラゴンに乗っていきましょ」


 レグルスとミヅキも頷く。


 先にリオラ。


 その後ろへミヅキ。


 最後にレグルスが乗った。


 ドラゴンが、

 大きく翼を広げる。


 次の瞬間。


 巨体が、

 ふわりと宙へ浮かんだ。


 風が吹き抜ける。


 眼下には、

 北の遺構。


 そして。


 山頂から伸びる光。


 ドラゴンは、

 その光を追うように――


 静かに降下していった。


 ドラゴンが、

 静かに地面へ降り立つ。


 リオラは、

 その背から飛び降りた。


 レグルスも続く。


 一方。


 ミヅキは、

 恐る恐る降りていた。


 最後までドラゴンへしがみつきながら。


 慎重に地面へ足を着ける。


 リオラは、

 すでに歩き始めていた。


 光が指す場所へ。


 崩れた柱に囲まれた区画。


 その中へ足を踏み入れる。


 円形に並べられた石。


 その中心へ。


 山頂から伸びる光が、

 真っ直ぐ差し込んでいた。


 リオラが、

 覗き込む。


「ここに、

 何かあるのね」


 ミヅキも近づく。


 中心へ手を置いた。


 杖を脇へ寄せる。


 静かに目を閉じる。


「この中心の石……」


「魔光石のようですね」


 わずかな沈黙。


 ――この感覚……。


 ミヅキの瞳が揺れる。


「おそらく――」


「大きな魔光石が、

 埋められています」


 リオラも、

 興味深そうに屈み込む。


「へー」


「すごいわね……」


 そう言いながら。


 中心の石へ触れた。


 その瞬間。


 光が揺れる。


 山頂から伸びていた光が。


 一気に魔光石へ吸い込まれていく。


 眩い閃光。


 周囲を白く染め上げた。


「うわっ!?」


 リオラが、

 思わず仰け反る。


「一体なに!?」


 光は、

 ゆっくりと収まっていく。


 静かな風。


 ミヅキが、

 その様子を見つめていた。


「これで――」


「本当に魔力が刻まれたようですね」


 そして。


 山頂の方角を見る。


「山頂と麓で――」


「魔力の繋がりが、

 必要だったようです」



 遺跡全体へ、

 魔力が広がっていく。


 風が吹く。


 そして。


 静寂が訪れた。


 ミヅキが、

 小さく息を吐く。


 ――これで、

 ――二つ目。


 三人は、

 静かに遺跡を見渡した。


 空は、

 どこまでも高かった。


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