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勇者、懲役1000年。 千年後、俺は勇者ではなく悪魔になっていた。  作者: 直助
第五章 再生の灯火

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第87話 紙一重の戦い

 天空の遺跡。


 レグルスと、

 甲冑を纏った影の戦いは続いていた。


 影が、

 二本の剣を振るう。


 鋭い斬撃が、

 レグルスへ迫る。


 レグルスは、

 横へ跳んだ。


 斬撃が、

 地面を抉る。


 その瞬間。


 レグルスが、

 地面を蹴った。


 一気に、

 間合いを詰める。


 その勢いのまま。


 剣を振り下ろした。


 刃が、

 甲冑を捉える。


 だが。


 弾かれた。


 硬い音が響く。


 レグルスの体勢が、

 わずかに崩れる。


 影の剣が走った。


 レグルスも、

 剣を合わせる。


 激しい衝撃。


 だが。


 勢いは止まらない。


 レグルスの身体が、

 吹き飛ばされる。


 そのまま。


 崩れかけた石壁へ、

 叩きつけられた。


 砕けた石が舞う。



 その時。


「レグルス!」


 リオラの声が響く。


 上空。


 ドラゴンの背から。


 リオラとミヅキが、

 戦いを見下ろしていた。


 ミヅキの瞳が、

 静かに揺れる。


 ――レグルスの中にあった、

 エクリシウスの魔力……。


 ――奪い返されたことで。


 ――レグルスの魔力は、

 弱まっている。


 揺れる魔力。


 戦う二つの影。


 ――以前のレグルスなら……。


 ――ここまで、

 苦戦していないはず。


 わずかな沈黙。


 ミヅキの表情が、

 さらに険しくなる。


 ――それに……。


 ――この地へ足を踏み入れた時から。


 ――さらに、

 魔力を奪われている。



 風が吹く。


 天空の遺跡は、

 静まり返っていた。


 ――このままでは……。


 石壁へ叩きつけられたレグルスは、

 すぐに体勢を立て直した。


 だが。


 目の前には、

 すでに影が迫っている。


 甲冑を纏った影。


 巨体が、

 一直線に突進してくる。


 速い。


 レグルスの瞳が、

 わずかに細まる。


 ――間に合わない。


 レグルスは、

 剣を構えた。


 次の瞬間。


 激しい衝撃が走る。


 だが。


 その力が、

 わずかに鈍った。


 甲冑の動きが、

 一瞬だけ止まる。


 ――これは……。


 衝撃が、

 再びレグルスを襲う。


 レグルスの身体が、

 吹き飛ばされた。


 そのまま。


 崩れかけていた石壁へ、

 叩きつけられる。


 轟音。


 壁が崩れ落ちた。


 土煙が、

 大きく舞い上がる。



 上空。


 その様子を見ていた、

 リオラとミヅキの表情が強張る。


「レグルス!」


 リオラが叫ぶ。


「ドラゴン!」


「遺跡へ降りて!」


 ドラゴンが、

 急降下する。


 大きな風圧。


 舞い上がっていた土煙が、

 少しずつ吹き飛ばされていく。


 その先に見えたのは。


 甲冑を纏った影だった。


 だが――。


 動いていない。


 静止している。


 リオラが、

 警戒しながら降り立つ。


 一歩。


 また一歩。


 ゆっくりと近づいていく。


 その時。


 崩れた壁の残骸が、

 わずかに動いた。


 リオラの目が見開かれる。


「レグルス!?」


 瓦礫の中から。


 レグルスが、

 ゆっくりと立ち上がる。


 リオラが、

 安堵の息を漏らした。


 だが。


 その視線は、

 すぐに影へ向く。


 甲冑の隙間。


 そこへ。


 一本の剣が、

 深く突き刺さっていた。


 影は、

 そのまま静止している。


 レグルスが、

 静かに近づく。


 そして。


 剣の柄を握った。


 一息。


 剣を引き抜く。


 次の瞬間。


 甲冑を纏った影は、

 霧のように崩れていった。


 静かな風。


 その様子を見て。


 リオラが、

 大きく息を吐く。


「よかったー」


「死んだかと思ったわよ」


 レグルスは、

 静かにリオラを見る。


 そして。


 視線を、

 ミヅキへ移した。


 ミヅキは、

 恐る恐るドラゴンから降りる。


 ゆっくりと。


 レグルスたちの方へ歩いてきた。


 レグルスが、

 静かに口を開く。


「ミヅキ……」


「お前の魔力か……?」


「少し、

 あいつの動きが止まった……」


 ミヅキが、

 小さく頷く。


「ええ」


「ただ――」


「それが、

 私の限界です……」


 静かな沈黙。


 レグルスが、

 小さく頷く。


「お前が、

 止めてくれなければ――」


「倒せなかっただろう」



 風が吹く。


 消えた影。


 静まり返った遺跡。


 レグルスは、

 小さく息を吐いた。


 以前ならーー。

 ここまで苦戦はしなかった。


 だが――。

 目的は、

 まだ果たしていない。


 三人は、

 遺跡の奥へ視線を向けた。


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