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勇者、懲役1000年。 千年後、俺は勇者ではなく悪魔になっていた。  作者: 直助
第五章 再生の灯火

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85/126

第85話 北へ向かう空

 少しずつ、

 陽が昇っていく。


 木々の間から、

 朝の日差しが差し込んでいた。


 揺れる葉。


 冷たい風。



 レグルスとリオラ、

 そしてミヅキの三人が――


 遺跡の外れ。


 森との境界へ歩いていく。


 リオラの荷物は、

 レグルスが持っていた。



 やがて。


 二頭の姿が見えてくる。


 ドラゴンと、

 バイソンだった。


 リオラが、

 大きく腕を振る。


「おーい!」


 二頭が、

 こちらへ顔を向ける。


 先にリオラが駆け寄った。


 そして。


 ドラゴンとバイソンの頭を、

 優しく撫でる。


「バイソンは、

 ここに残ってね」


「ドラゴンは――」


「これから、

 北の遺構へ向かうわよ」


 二頭は、

 静かに頭を上下させた。


 リオラが、

 振り返る。


「さあ――」


「行きましょうか」


 レグルスとミヅキも、

 静かに頷く。


 先に、

 リオラがドラゴンへ乗る。


 その後ろへ、

 ミヅキ。


 最後に、

 レグルスが跨った。


 朝の風が、

 静かに吹き抜ける。


 リオラが、

 前を見据える。


「まずは――」


「北の遺構を目指すわよ」


 その声を聞き。


 ドラゴンが、

 大きく翼を広げた。


 次の瞬間。


 三人を乗せた巨体が、

 空へ舞い上がった。


 風が、

 木々を大きく揺らしていた。


 強い風が、

 三人の間を吹き抜ける。


 眼下では、

 森が流れるように遠ざかっていった。


 リオラが、

 後ろへ声を飛ばす。


「ミヅキ!」


「しっかり、

 掴まってね!」


 ミヅキは、

 小さく息を呑む。


 慣れない空。


 揺れる巨体。


 その細い指が、

 思わずリオラの服を強く掴んでいた。


「は、はい……!」


 声も、

 少し強張っている。


 リオラが、

 小さく笑う。


「大丈夫、

 落ちないわよ」


 ドラゴンは、

 さらに高度を上げていく。


 朝日が、

 雲の隙間から差し込んでいた。


 リオラが、

 前方を指差す。


 ドラゴンは、

 その方向へ進んでいく。


「これだと、

 早く着きそうね」


「最初に、

 王国を追い出された時は――」


「歩いて行ったから、

 大変だったわよ」


 風が、

 再び吹き抜ける。


 ミヅキは、

 返事をする余裕もなかった。


 ただ。


 リオラへ掴まったまま、

 必死に、

 身体を支えていた。


 一方。


 最後尾のレグルスは、

 静かに前を見据えていた。


 その視線の先。


 北の空が、

 ゆっくりと広がっていく。





 メルクリウスが、

 木材を運んでいた。


 重い木の音。


 削る音。


 人々の声。



 その時。


 ふと。


 メルクリウスの視線が、

 空へ向く。



 森の向こうから。


 ドラゴンが、

 大きく飛び出してきた。



 一度、

 空中で翼を広げる。



 そして――。


 北の遺構を目指し、

 空へ飛び立っていく。



 その背を。


 メルクリウスは、

 静かに見つめていた。


「どうか――」


「どうか、

 ご無事で」


「そして……」


「エクリシウスを――」


「倒してきてください」



 ドラゴンの姿は、

 少しずつ空の向こうへ消えていく。


 メルクリウスは、

 しばらくその空を見つめていた。



 やがて。


 静かに視線を戻す。


 その手は、

 再び木材へ伸びていた。


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